ちょっと厳しいと思いますね…。 タナゴは人工授精させた場合、温度を一定に保つインキュベーターに入れて管理しないと奇形の発生率が非常に高くなりますし、二枚貝の棲息深度を考えると不思議なことに、水深が深いとスライダーが発生しやすくなるなどの問題が出てきます。 浅めの容器で温度を一定に保つのは、わずか2～3週間の春産卵型のタナゴでも苦労するのに、半年近い期間を管理しないといけない秋産卵のタナゴでは、ほとんど人工育成の成功は期待できません。 ただ、今回の場合はやむを得ない事態ですから、上の問題点を少しでもクリアするため、次のような方法を試してみて下さい。 まず、プラケースに卵を入れます。30個も卵があるなら、できれば4L以上あった方が良いです。エルバージュかグリーンＦゴールド顆粒などで、薄めの薬浴をさせ、雑菌の繁殖を防ぎます。 そのプラケースを一回り以上大きな水を張った発泡スチロール箱に浮かべます（湯せん状態）。エアレーション等をしません。酸素は必要ですが、空気を送り込むことで温度を大きく変化させてしまうため、余裕のある水量で酸欠を防ぎます。薬浴させていても一つの水カビが全滅の原因になりますから、大きな容器にまとめるよりは、なるべく分散しておく方が安心できます。許されるなら、一つずつジャム瓶などで湯せん状態にしておく方が良いくらいですが、水換えの手間が増え過ぎるので、毎日メンテできる数に留めた方が無難です。 卵の入ったプラケースの容器の水は毎日1/2ほど交換します。薄めの薬浴は春先の浮上が近づくまで続けた方が無難です。 交換用の水は前日の内にペットボトルなどに汲んで同じ発泡スチロール箱に入れ、温度変化を与えないように交換してやる方が良いです。 気の長い話ですが、そのまま春まで温度変化を極力与えないように気をつけて管理します。徐々に下がっていく、または上がっていく温度の変化には耐えられますから、発泡スチロール箱は無駄なくらいに大きなものを用意し、浮かべた（本当にプカプカ浮かべておくと倒れやすいので足場の上に設置するかキスゴムで固定しておいた方が良いです）小さな容器の温度変化を防ぎましょう。 水換えの時以外は蓋も閉めておき、無用な光と温度変化から卵を守ります。水換えの際もなるべく光を避けて水を交換してやる方が良いです。 人工授精の場合も、明るいところで管理した卵や稚魚の死亡率は、不思議と高まりますので。 冬の間はとにかく無事に生かしておくことに専念して、水深を浅くしてスライダー現象を防ぐのは、無事に冬を越せてから心配しましょう。 秋産卵型のタナゴでは、上の方法でカネヒラを数回だけ浮出させるサイズまで育てるのに成功したことがありますが、ゼニタナゴで成功したことはありません。 ですから、これなら上手く行くとはいえませんが、放っておけば数十時間以内に全滅しますから、なるべく早く清潔で安定した水温の環境に移してやって下さい。 親と同じ水槽に産卵ケースで入れておくなどは、管理の仕方として論外です。二枚貝の中は暗くて、彼らが居心地のよさを求めて移動することで、非常に安定した水温が保たれた環境になっています。同じ環境を人工的に維持するのは非常に難しいのです。 日に2℃以上の温度変化を与えないこと、極力暗いところで管理すること、雑菌の侵入を徹底的に防ぐこと、この3点を守れれば、ひょっとしたら上手くいくかも知れません。 かなり難しいとは思いますが…。