まずは大前提として「誰が誰に敬意を払っているのか」をしっかりと把握するために、以下のポイントを意識してみてください。敬語の形だけを見ても混乱するので、まずは“文脈”と“人物関係”が重要です。
1. 尊敬語(主語を高める)
• 主語が身分の高い人(天皇・貴族・上官など)になっている場合が多い
• 文中の動作を「している」人を高めるので、まず「この動作の主体は誰か?」をチェックする
• 代表的な動詞・補助動詞例
• 「給ふ(四段活用)」「たまふ」「おはす」「おはします」「仰す」「のたまふ」「めす(召す)」「思す(おぼす)」など
見分けるコツ
• 「給ふ」は四段活用か下二段活用かで意味が変わる場合がありますが、まずは**“動作主を高めている”かどうか**で尊敬の「給ふ(四段)」とざっくり押さえてOK。
• 敬意の方向が「動作主 → 身分の低い人」にはならないことを押さえる(尊敬語は高い人を主語にする)。
2. 謙譲語(相手を高めるために自分(や身内)を低める)
• 話し手側の動作や、話し手が身分の高い人に何かを「してあげる・申し上げる」場合などに使われる
• 代表例
• 「奉る(たてまつる)」「参る」「参らす」「まうす(申す)」「聞こゆ」「侍り/候ふ(丁寧語でもある)」など
見分けるコツ
• 「差し上げる」「申し上げる」ニュアンスをもつ動詞が出てきたら、まず謙譲語と疑う。
• 動作の受け手が「偉い人・上の人」であるか確認する。
3. 丁寧語(聞き手・読み手への丁寧な表現)
• 古文では「侍り」「候ふ」は丁寧語として使われることが多い(話し手が「あります」「います」と自分の状態を丁寧に言うイメージ)。
• 現代の「です・ます」的な役割と考えるとシンプル。
4. 文脈を追うときの手順
1. 登場人物の上下関係をはっきりさせる
• 「この場面は誰が出てきて、誰がいちばん偉いか?」を頭に入れる。
2. 敬語の種類を見つける
• 尊敬語か、謙譲語か、丁寧語かをざっと判別(上記の代表動詞や表現を見つけたらチェック)。
3. 敬意の方向を考える
• 尊敬語→“主語”を高めている
• 謙譲語→“相手”を高めるために自分(や味方)をへりくだらせる
• 丁寧語→聞き手や読み手へ丁寧に述べる
5. 迷ったら最低限ココを見る!
• 誰が動作をしているのか?
• もし動作主が高貴な人(上位者)なら「尊敬語」の可能性大。
• 動作の受け手が偉い人なのか、自分(や身内)なのか?
• 受け手が上位者なら「謙譲語」の可能性大。
• 「侍り」「候ふ」に出会ったら、とりあえず「丁寧語」と仮定してみる(ただし文脈によっては謙譲語になる場合もある)。
例
帝(天皇)が仰せらる
• 「仰す」は尊敬語 ⇒ 主語の帝を高めている
• 「らる」も尊敬の助動詞の可能性がある(下2段の「らる」とは別物)
わたくし申し上ぐ
• 「申し上ぐ」は謙譲語 ⇒ 上位者へ向ける動作なので、自分がへりくだっている
「侍り」「候ふ」
• 基本は丁寧語 ⇒ 「あります」「おります」ぐらいに訳す
まとめ
1. 文脈を読んで“動作主”と“受け手”をはっきりさせる。
2. 出てきた敬語表現が、主語を高める(尊敬)なのか、自分を下げる(謙譲)なのか、それとも聞き手へ丁寧に述べている(丁寧)なのかを大まかに整理する。
3. 迷ったときは、まず“誰が偉いか”だけでも押さえて、その人が動作主→尊敬語かどうか、偉い人が受け手→謙譲語かどうかを考える。
あれこれ深く考えすぎるとパニックになるので、「主語は誰?」「いちばん偉いのは誰?」に立ち返って整理してみてください。直前期は割り切りも大事です。使い慣れた敬語表や典型例を確認して、最低限の区別がすぐできるように練習しておくと良いですよ。応援しています!
追記
結論から言うと、その捉え方で大丈夫です。古文の「きこゆ/きこえ」は謙譲の動詞で、「(上位者に)申し上げる」「手紙を差し上げる」などの意味を持ちます。ここでは
• **動作主(話し手)**=光源氏
• **動作の受け手(敬意の対象)**=女
という関係で使われています。したがって、「光源氏がその女性に対して“申し上げる”」という解釈になります。
どうして女が敬意の対象になるのか?
古典文学では、相手が実際に身分が上かどうかだけでなく、恋愛関係などで「相手をうやまう・敬意を払う」立場で語る場合にも謙譲語を用いることがあります。光源氏ほど高貴な身分であっても、恋のやりとりなどでは女性を“敬う(うやまう)”表現として謙譲語を使うことが珍しくありません。
要するに、
1. 「きこえ」は謙譲語(=自分がへりくだる・相手を高める動き)。
2. ここでは光源氏 → 女への“申し上げる”という方向で用いられている。
以上の点から、あなたの考え方で合っていますよ。自信を持って進めてくださいね。