そうですね。概ねその見分け方で構わないです。
それでは、なぜそのように言えるのかを考えてみます。
一 「なむ」の識別
一般的に「なむ」の識別は以下の四つを見分けることだとされます。
・係助詞「なむ」
・終助詞「なむ」
・確述の「なむ」(強意「な」+推量「む」)
・ナ変動詞の未然形+推量「む」
このうち「ナ変動詞の未然形+む」は、ナ変動詞がなければなりません。
お尋ねのように、形容詞の連用形の後ろに来ることはありませんので、今回は除外します。
すると、可能性として、係助詞・終助詞・確述の三つのパターンがあることになります。
以下では、順番に実際の用例を確認していきます。
二 願望の終助詞「なむ」
願望の終助詞「なむ」は直前が「未然形」になります。
当然、形容詞の連用形である「~く」の形には続きません。
A 袖の浦浪の吹かへす秋風に雲の上まで涼しからなむ(新古今1497)
これは「涼しくなってほしい」という願望を表す終助詞です。
直前は、形容詞「涼し」の補助活用の未然形「涼しから」が用いられていますね。
ただ形容詞に願望の終助詞を続けるのは、少し珍しい形です。
そんなに用例は多くないと思われます。
三 確述用法「なむ」
確述用法の「な」「む」は連用形接続です。
しかし、原則として補助活用の連用形に接続します。
B 明日御物忌なるに籠るベければ、丑になりなばあしかりなむ(枕草子131)
C この頼もし人は、行く先短かりなむ(源氏・帚木)
どちらも確述「なむ」の例です。
直前が「あしかり」「短かり」と補助活用の連用形になっていることが分かります。
四 係助詞「なむ」
係助詞「なむ」は形容詞の本活用の連用形に接続します。
D 今日はいと便なくなむはべるべき。(源氏・若紫)
E 赤人は人麿が下に立たむことかたくなむありける。(古今・仮名序)
どちらも係助詞「なむ」ですが、直前は本活用の連用形です。
本活用の連用形「便なく」「かたく」に続いていることが分かりますね。
五 まとめ
以上の特徴を整理すると、次のようになります。
形容詞に続く「なむ」の識別について
・本活用の連用形「~く」に接続する場合:係助詞
・補助活用の連用形「~かり」に接続する場合:確述
・補助活用の未然形「~から」に接続する場合:終助詞
このようになります。非常にシンプルに判断ができますね。
ご参考になれば幸いです。
【補足一】
冒頭で「概ねその見分け方で構わない」と述べたのは、いくつか例外的な用例が存在するからです。
高校で学ぶ文法はあくまで中古和文(平安時代の代表的な作品)を中心としたものでしかありません。
時代が後になればなるほど、そこから逸脱した形が生じてきます。
当然、その中には上述の規則通りでないものも出てくると考えられます。
ただ、あまり多くないうえ、高校古典文法の範囲を超えるため、当面は上述したように考えていただけると良いと思います。