アテーサE-TSは、サーキットを速く走るため、それも特にコーナリング性能向上のための四駆システムです。以下、少々長くなってしまいますが、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。
◆FRの利点
よく、クルマの走りの楽しさでは、FRが一番よいとする人が多いです。いくつか理由があります。
<前後重量バランス>
乗用車型のFRは、重たいエンジンをできる限り後方に積むことで、前後重量配分が概ね前:後=55:45〜50:50となっており前後重量バランスがよいです。コーナリングにおいて、前輪または後輪に荷重が極端に偏らず、素直なハンドリングを実現しやすい素性を持ちます。
<コントロールの自由度が高い>
一方で、他のFFもMRもRRも駆動輪の上に重たいエンジンがあり駆動輪を押さえつけていますが、FRは駆動輪の上にエンジンがありません。それゆえFRの後輪はグリップが弱くドリフト走行しやすいのですね。コーナーではアクセル操作で頭の向きを変えられます。アクセルが第二のステアリングとして使えるので、コントロールの幅が広いです。これが腕利きのドライバーを魅了するのですね。
◆FRの欠点
重量バランス良く、コントロール性のよいFRですが、速く走るには不都合があります。コーナリング中は、例えば、タイヤのグリップが10あるとすると、横方向に8使ってしまうと加速には2しか使えません。それゆえアクセル踏むとドリフトしやすいのですが、後輪が空転すると前に進まず速く走れないのです。
◆アテーサE-TS
そこでアテーサE-TSの登場ということです。コーナーの後半の立ち上がりで加速に入る時に、アテーサE-TSは前輪のトルクが立ち上がりグイグイと前に引っ張ってくれます。また、発進時もFRはハイパワーだと後輪が空転して前に進みません。ここも4WDが必要なところで前輪にトルク配分を高めグイグイと加速します。
つまり、基本は走りやすいFRで走行し、FRの欠点であるコーナー出口と発進時を中心に4WDの力を借りるということですね。まさにFRと4WDのいいところ取りというわけです。勿論、雪道等の滑りやすい道もしっかり四駆になります。
◆他メーカーへの影響
アテーサE-TSは、このようなコンセプトの4WDですので、あえて常時四輪駆動のフルタイム4WDにはしていません。1989年にR32スカイラインGT-Rに搭載されて、レースでも衝撃的なデビューを果たしました。
FRに拘りのあるBMWやジャガーをはじめ、海外のメーカーもアテーサE-TSを真似た四駆システムを採用するようになっています。
◆FFベースの4WDの場合
エンジン横置でFFベースの4WDの場合、上記とは少し異なり、走りのスポーツ性能よりも燃費とコストを優先するコンセプトが基本になります。前輪はエンジンに直結しており、後輪は前輪が滑った時などに補助的にサポートします。常時四駆でなくて済むので後輪の駆動パーツを簡素に済ませられます。これにより軽量安価に4WD化でき燃費性能にも貢献します。後輪駆動ベースのアテーサE-TS等がスポーツ性能の追求から生まれたのに対して、FFベースの場合はコストと燃費から生まれています。
長くなり失礼いたしました。
何かご不明な点などありましたら追加でご質問いただけましたら幸いです。