ワタシが小学生の頃。もう50年ぐらい前の話です。
ウチの斜め向かいに大学生が住んでいて、よほどヒマなのか、よく平日にクルマを道路に出して洗車してました。
そのクルマは小学生の目から見ても異様なほど低く珍しいクルマだったので、洗車をみかけたらいつも一通りクルマを観察してから家に入りました。
ある日の下校時、またその大学生がクルマを出して洗車していました。
いつもの通り、クルマの周りをウロウロしながら観察していたら、それまで話をしたことが無かった大学生が、こちらに振り返って『乗ってみる?』
早速助手席に乗り込み、カバンを膝の上に置いてキッチリ座ったら・・・シートが座椅子の様に低く(床と座面との高低差があまりなく)、小学生の座高では前がよく見えません。
走り出したら、想像していたのとは違い、エンジンをメ一杯回してもモタモタとした加速でした。
しかし、高回転まで引っ張るエンジンの騒音、排気ガスとオイルが焼ける匂い、路面の凹凸を拾うダイレクトな乗心地、足を前方に投げ出して向こうの壁まで届かない着座姿勢、横に並んだタクシーを見上げる様な視界の低さ・・・『なるほどこれがスポーツカーというヤツか』と、直感的に理解しました。
そのクルマはトヨタ・スポーツ800という、赤いソラマメの様な丸く小さなクルマでした。
その頃ウチではブルーバード510に乗っていて、当然ヨタハチなどでは比較にならないほど速く、父ちゃんは『すごいスポーツカー』と自慢してましたが・・・乗ってる子供からすると、タダのセダンです。
ヨタハチに乗って20~30分そこらを走った後は、『どれほど速くても、速いこと自体はスポーツカーとは関係ない』と確信しました。
以来、FF2BOXや小型ファミリーセダン、タクシーにも使われているクルマなどは、凝ったDOHCやターボや4WDで武装し、その結果どれほど速くなっても、スポーツカーとはどうしても思えません。
免許を取って40年以上経ち、その間、まぁいつも低いクルマばかり乗って来たわけではありませんが、半分ぐらいは『路面に手が届く』低さのクルマに乗って来ました。
低いは正義、です。