あれは笙子が独り立ち出来るようにはっぱをかけたんです。強く言わないと笙子はやらないのが分かっていますから。 ①笙子の逃げ場としてのジュン ②逃げ場を断つことで独り立ちを促すジュン まず京児がジュンのフリをして文通を始めたのは何故なのか。 笙子の逃げ場としてジュンの存在を確立させるためですよね。 京児は笙子の味方ですが京児の愚痴や自分の環境の文句など全てを話せるわけではありません。 そうした不満や文句は自分が悪いからだと分かっていますから、リアルな笙子を知る京児にそれを話せば「それは笙子が悪いよ」となってしまうからです。そして他にそうした事を話す友達もいません。 だから京児はジュンのフリをして愚痴を聞いていたわけです。人間にはそうした毒抜きの場、逃げ場が必要です。 ですが京児が死んでしまえば偽ジュンという逃げ場は失われます。 それならいっそ強く突き放すことで独り立ちを期待したわけです。 またジュンの死がバレることはすなわち代筆がバレることです。 つまり好きな相手である京児にしょーもない手紙を書いていた事になります。 好きな相手の悪口を言っていたのが、実はその悪口を言っていた相手に広い心で受け止められていたと知る事です。 よっぽど馬鹿でなければ自分が許せないです。 真実を知って笙子だけを悪者にするか、嘘をついて京児とジュンを悪者にして且つ独り立ちを促すか。 どっちが優しい選択かは分かりますよね。