津田三蔵には深い思想的背景が無く、半ば発作的な凶行だったことが伺われます。西南戦争の激戦地を転戦し、幾多の凄惨な経験をして活躍したことに誇りを持っていた津田は、同時に多くの戦友を失い、ある種の帰還兵特有の憂鬱を持っていたのかもしれません。 津田の初めの警備地である西南戦争記念碑にニコライは来ず、肩透かしを食らった上、待機していたロシア随員が記念碑に寄り掛かるなど、何ら敬意を払わなかったことに逆上したという説があります。他にも荒唐無稽なうわさを信じたという説もありますが、通常の生活を過ごしながら、時として殺気に満ちる一部帰還兵特有の凶行の一種だったのでしょうか。 ロシア皇太子を襲ったのも、またその危急を救ったのも日本人でした。ロシア皇太子ニコライへの致命傷となる刃を防いだのは、人力車の車夫たちでした。 果敢に飛び掛かり津田を倒し、津田が落としたサーベルを取り上げ切りつけ防いでいました。ロシア帝国は、この車夫たちに感謝し年金を送り続け、それは日露戦争の最中でも続いています。 ロシアは京都にわざわざ天皇が見舞いに来る対応やその謝罪を受け入れました。