少々勘違いをなさっていらっしゃいますが、弟子の数が勢力に関わる訳ではありません。 座頭=興行責任者かどうかということで変わるのです。 先の方が、役者の『格』ということを仰っていますが、役者の名跡の歴史と格は別ものです。 成田屋と音羽屋が別扱いなのは、九世市川團十郎と五代目尾上菊五郎が近代歌舞伎の礎を築いたという功績からだけのことです。 例えば、家系図から言えば、音羽屋の本家は坂東彦三郎家で、尾上家は分家です。ですから昔は『旦那』と言えば坂東彦三郎を指し、菊五郎は『親方』と呼ばれたそうです。勿論、親方より旦那の方が敬った呼び方です。 ですが現在は、菊五郎が座頭ですから、彦三郎には座組や配役の権限がありません。 つまり、どんなに歴史があろうと、また弟子が居ようと、座頭でなければ勢力もへったくれもないのです。 座頭であって、さらに興行回数が多い人ほど、他の一門も座組に入り、一大勢力になりえる訳です。 現在、成田屋の宗家は海老蔵ですが、歌舞伎座で座頭となれるのは花形中心の興行のみですし、回数も多くありません。 中村屋の惣領である勘九郎も、海老蔵と余り変わりませんが、興行回数で言えば海老蔵に軍配が上がるでしょうか。 ただ、十一世、十二世の團十郎は他の座組への客演となることが多く、自身が一座を組むことは殆どありませんでした。(特別な興行を除いて) それに対して、勘三郎は中村座やコクーンなどで座頭を勤め、福助、橋之助、扇雀、彌十郎と言った役者を抱えていましたから、当代の勘九郎は大変に助かっているでしょうね。 海老蔵が、破門となっていた薪車を引き取り、九團次を襲名させたのも、自身の一座を作りたいという意志の表れではないでしょうか。