難しいテーマですね。
動物を相手にする仕事は休みがありません。特に酪農では飼育や乾草作りに加えて朝晩の搾乳を欠かせません。搾乳を2度やるなら12時間置きにしたいので、朝のスタートも早ければ夜の仕事終わりも遅い。
これは仕事柄仕方のないことですが、「ウシの奴隷」でも「刑務所の方がマシ」でもありません。そういう覚悟の必要な仕事、ということです。また何気なく消費されている牛乳・乳製品は、それだけ厳しい労働環境を受け入れて暮らしている人々によって安定的に供給されている、ということです。
もしこの状況を総合的に解決したければ、酪農家はもっと従業員を増やし2交代制や週休二日制を導入すれば良いですし、給与も賞与も上げれば求職者も増えましょう。
ですがそのためには、それだけ支出が増えるのに耐えられる体力が必要で、その体力とはつまり「利益」です。
酪農家がもっと利益を増やせる市場構造にしたら、従業員の待遇も改善する余裕が生まれます。
ではこれら従業員の待遇改善のため世の中の牛乳や乳製品が値上がりしても、皆さん素直に受け入れられるでしょうか。牛乳が値上がりすれば、スーパーで買い求める時だけではなく、それを原料に用いるパン類・惣菜類・洋菓子類・氷菓類その他諸々、皆値上がりする可能性を秘めます。
または酪農界での雇用条件改善のために国からの補助金が各酪農家に上乗せされる事になったとして、納税者である国民は納得するでしょうか。
利益を従業員の努力や労働に正しく還元しないのは論外としても、労働条件の厳しい求人が並んでいるとしたら酪農界はきっとそれだけ余裕のない分野なのでしょう。良い給料やたくさんの休暇を提案したらより求人が楽なことくらい、酪農経営者にも分かっているはずです。
酪農の世界での雇用条件が劣悪でも、そこだけ見て嫌悪を覚えても解決しません。国の指導のもと経営者と消費者の双方が変わっていかなければいけないのではないか、と思います。