ご質問の順番を入れ替えて説明させていただきます。 Q3について この質問の趣旨は、おそらく「子供を捨てやすくなると税金の支出が増え、まじめな一般 納税者に負担が来るのでは」といった趣旨なのではないかと思います。 日本国憲法第25条の第1項、第2項で国民の生存権を規定しています。 親が税金を払っているかどうか、養育をしているか放棄しているかに関係なく、 ひとたび生まれた以上は、一人の人間としてその生存権は他者と同様に認め、 その生存権を確保するため国は努力する、と言っています。 赤ちゃんを親の所有物、または付属物といった従属的な立場で考えると、責任を放棄した 「親のため」に余分に、そうでない人間が払った税金をかけるのはおかしい、という考え方 も生じ得ます。また、「私の税金はまず私のために使うのが筋では？」という考え方を持つ 場合にも同様の考え方が生じえます。 しかし税は、あくまで共同体としての同じ国に生きる国民の義務として納められており、 個人年金のように個人に属するものではありません。 既に生まれた赤ちゃんを平等な日本国民として認めよう、という立場に立てば、 国が必要最低限の社会生活を営む環境を得られない人間に対し税金を使って 対応することは義務となります。親が何をしたにより、生まれてきた 子供にその罰を負わせようという考え方自体が間違っている、というのが日本国の 考え方です。 こうした立場から、昭和二十二年に児童福祉法が制定されました。「すべて児童 はひとしくその生活を保障され愛護されなければならない」という理念のもと、子供 の生存権を支えるさまざまな制度が用意されています。 1歳未満の子供については、同法第三十七条に規定される「乳児院」が その保護の役目を負っています。また1才から18才の子供については、同法 第四十一条に規定される「児童養護施設」がその保護の役目を負っています。 このほか、同法第三十八条の「母子生活支援施設」など、２の質問については、 日本国によりさまざまな仕組みがすでに用意されています。 ところで、実際の養護施設等では、経済的理由により児童の養育が困難な親が 養護施設に児童を入所させ、自分は働きながら時々児童と会う、といったケース も多く見られます。 ですから、少なくとも「カップル」の側に、一人の人間として赤ちゃんの命を見つめ 生まれてきた乳児・児童に無事に生きてほしい、という気持ちが少しでもあれば これを実現するためのさまざまな手段は既に用意されているのです。 しかし、こうした育児が困難ではあるものの多少なりとも「親」としての心を持ったカップル とはまったく異質の、自分にしか関心が無く、親になる用意が一切無いまま、単に セックスの結果だけとして子供を生んでしまうカップルが増えてきました。 子供を人間として見ず単なる邪魔な「もの」として処分しようと考えるカップルです。 こうした者たちにとっては、「子供」が世に出てきてしまった、という結果事態を 他人に知られたくない、隠してしまいたい、という気持ちが強いため、自分の身元を 明かさなければ乳児を引き渡せない乳児院などは、そもそも検討の対象に入って きません。そのまま死なせてしまって押入れに梱包してしまっておいたり、公衆便所 に放置・遺棄したりといったケースにつながってしまうことが増えているのです。 よって、 (1).多少なりとも赤ちゃんの命を考えるカップル (2).赤ちゃんの[命]の重みを考えず、「もの」として短期間の処分を考えるカップル　 について、(1)は児童福祉法の下で整備された既存の施設・システムでは対処可能だが、 (2)については不可能なのが現状です。赤ちゃんポストは(2)に対応するために設置された と考えています。赤ちゃんポストは「もの」として遺棄されそうな子供の未来を救う最後の 安全弁として、設置されたのではないでしょうか。 ですから >５、ポスト設置によって、子供を捨てる親が増えると思いますか？ は関連性が無いと思います。 セックスを自己の快楽の手段としか考えず、その中で何も考えずに子供を作って しまうカップルは「赤ちゃんポストの設置の有無」により、セックスに対する考え方を 変えるのでしょうか？ 最後に、Q4の質問についてです。 嫌な思いはします。当たり前でしょう。自分自身と向き合うだけでも苦痛に満ちた長い 時間をかけなければならないし、一生苦しんでも解決しないかもしれません。 ではどうするべきでしょうか？嫌な思い・つらい思いをするくらいなら、赤ちゃんは生きる べきではないのでしょうか？ そんなことは、当の本人が成長していく中で選択するべき問題ではないでしょうか。 同じ国に生きる私たちがすべきことは、彼らに選択の機会、生きる機会、社会に参加する中で 自分を考える機会を与えることだけだと思います。 赤ちゃんを自分と同等の一人の人間だということ、それだけは忘れずに皆さんで議論して いただければ幸いです。