元日本史・世界史の予備校講師です。
銅というか、正確には青銅製の鏡や武器、銅鐸が見つかるのは支配者や支配者階層の墳墓や古墳からです。
これは、支配者の権力を示すものではなく、支配者が神がかり的・呪術的なものとして青銅製品を利用したことが伺えるものです。
魏志倭人伝にある卑弥呼の記述を覚えていますでしょうか。
卑弥呼はめったに大衆の前には姿を見せず、鬼道つまり呪術やまじない、占いをする神秘の巫女的な女性であるとされています。
実際の政治は弟がやっていて、卑弥呼はその神秘的な力で神に仕える巫女として皆に恐れられ、30あまりの国を従えています。
原始時代ですから、祟りや神様に関してはたいていの人が恐れて、平伏するのです。
特に銅鏡は魔術・呪術的なものとして捉えられていて、ただの鏡ではありません。
銅鏡の裏には神話に出てくるいろいろな絵や文字が刻み込まれています。
本来、鏡は表だけ見ればよいものですが、裏面に非常に凝った彫刻を施しているのにはワケがあるのです。
『魔境』などと呼ぶひともいますが、弥生や古墳時代前期の銅鏡はある角度で太陽光を反射させて壁などに投影させると裏面の彫刻が浮かび上がるものがあります。
これを巫女のような呪術者が大衆の前でやれば、
「魔術だ。神の使いの方だ! 恐れ多いことよ!」
となって、平伏します。
また、弥生時代や古墳時代は金属そのものがとても珍しい時代でもあります。
弥生時代や古墳時代前期の副葬品に銅鏡が多いのは、神さまとコンタクトできる呪術的な人間が支配者と見做されていたことをうかがわせるものです。
ちなみに、巨大古墳がつくられた古墳時代中期になると、銅鏡や勾玉のような呪術的副葬品がなくなり、農具や武器とりわけ馬具(鞍とかあぶみ、轡)が副葬品になっていきます。
支配者が神がかり的な存在から権力を持つ存在に変化した現れです。