日本語の「〜の」は、フランス語でいう「de」に近い働きをするケースが多いですが、実際にはさまざまな使い方があります。以下のように複数の役割があるため、「の=de」と単純には言い切れない部分もあることを、フランス語話者に説明してあげるとよいでしょう。
1. 所有・所属を表す「の」(もっとも基本的な用法)
例
• ピエールの車 → la voiture de Pierre
• 日本の首都 → la capitale du Japon
日本語の「AのB」は、フランス語にすると「B de A」の形がもっとも近いです。英語の “A’s B” に相当しますね。フランス語でも「de + 所有者(所属元)」の形をとることが多いので、ここは比較的説明しやすい部分です。
2. 名詞化(名詞に変える)役割の「の」
例
• 食べるのが好き → J’aime manger.(直訳は「食べることが好き」)
• 散歩するのが日課です → Faire une promenade fait partie de ma routine quotidienne.
上の例では、「食べる」「散歩する」など動詞や文全体をまとめて名詞のように扱うときに「〜の」を使います。フランス語に直訳するときは「〜すること」「〜するの」などを、「infinitif(不定詞)形」や「名詞+動詞」などで表現します。日本語の「の」は文をまとめて「一つの名詞」にしているイメージです。
3. 連体修飾の「の」(関係詞のような機能)
例
• 私が撮った写真 → la photo que j’ai prise
• 友だちがくれたお菓子 → les gâteaux que mon ami m’a offerts
「Aが〜したB」「Aが〜しているB」などの形を日本語では「Aが〜した B」と書きますが、このとき隙間に隠れている「の」のイメージをフランス語の関係代名詞「que/qui」あたりで訳すことが多いです(実際には文法上省略されているケースもあるので、「日本語の“の”=que/qui」とは言い切れませんが、関係詞相当の役割を持つことがあります)。
4. 説明の「〜のです/〜んです」(理由や状況説明)
例
• これが欲しかったのです → C’est cela que je voulais.
• 寒いんです → Il fait froid (c’est qu’il fait froid).
会話でよく使われる「〜のです/〜んです」は、理由・状況を説明するときの表現です。フランス語訳にするときは、「C’est que… / En fait…」などのニュアンスを足すこともあります。文章によってはストレートに訳さず、文全体の意味から訳すのが自然です。
まとめ
1. 所有・所属の「の」 → フランス語の “de” に相当。
2. 名詞化の「の」 → フランス語で不定詞(infinitif)や「le fait de + 動詞」などで表す。
3. 連体修飾の「の」 → 関係代名詞 “que/qui” などを使った文にする。
4. 理由・状況説明の「のです/んです」 → 直接は “c’est que…” などで補足。文脈によっては自然なフランス語に言い換える。
「の」は日本語の文法上とても便利な言葉で、所有から説明表現、名詞化まで多彩な使い方があります。フランス語で 1:1 で対応する単語は「de」が代表的ですが、それだけではカバーしきれないので、文脈ごとに「de」「que/qui」「不定詞」「c’est que…」などを使い分ける、という点を伝えると理解しやすいでしょう。