一応ピアニストを名乗っている者ですが、１回大失敗したくらいで気にしていたら、ピアノ弾きなんてやってられませんよ(マテコラ)。 もちろん、「全く同じ失敗」を繰り返さないための自己分析は必須ですが、極論するなら、「演奏」というのは失敗のリスクのある行為だからこそ人の心を動かせるんです。「失敗」を極度に恐れて、表現のために取るべきリスクを取ることを放棄した演奏ほど下らないものはありません（そんなものは「音楽」ではない！）。 なお私などは、泊りがけで受けに行ったコンクールの１次予選でやらかして（もちろん「数年かけての数打ちゃ当たる作戦」の一つだったとは言え人生を懸けて入賞を狙ってはいましたし準備にも数か月以上かけてます）、コンクールの残りの期間、予選落ちした日本人の集団で観光＆飲み歩いていたこともありますから(笑)。しかしたまたまレストランで会った審査員の一人からもらったアドバイスが今も演奏に活きていたりもするので、悪いことばかりではなかったですよ。 また、その時暗譜が飛んだ曲の当該箇所、弾く度に指に変な力が入って音色に微妙に影響が出る程度にはトラウマになってもいますが(汗)、お陰で警戒心のギアは無意識に上がるので、その周辺で集中力を切らせたことだけは件の事故以来「一度も」ありません（なおショパン「幻想曲」の終盤です）。ついでに他の曲でも、調子が良くない中で「悪いなりに演奏をまとめる」際の感覚に応用できてもいます。 ちなみにリハーサルと本番の感触が大きく異なることは日常茶飯事です。ピアノは気温や湿度の影響を簡単に受ける楽器ですし、満席と空席の音響特性の違いは多くのホール音響設計師を悩ませる永遠の課題ですし、そもそも奏者の心理状態が同じなわけがありませんし。私の経験則としては、むしろリハーサルの状態でピタッと感覚がはまりすぎているときの方が怖い。 質問文を読んで何となく感じたことなのですが、もしかするとステージ上での思考として「練習の成果を披露」することを最優先に考えていらっしゃったのでは？ もちろんそれも大切かもしれませんが、「良い音楽をする」「弾いた曲の良さを客に伝える」ことの方が、優先順位は遥かに高いはずですよね。そこが無意識に入れ替わってはいませんか？ 単純な練習不足というより、練習・本番含めて「今、この瞬間、目の前の楽器を使って、現時点での自分にできる一番良い音楽をしてみよう」という気概の不足（音楽や作品と向き合うに当たってのマインドセットの誤り）が日常的に根底にあって、結果として仕上がりのフレキシブルさの不足、目の前の一音に対して正しい方向で命を削る集中力の欠如につながってはいませんでしたか？「練習」と「ステージ」ほどの差ではなくとも、普段の練習の中でも朝弾くのと夜弾くので、楽器や奏者のコンディションが違うのに、それぞれの状況での「会心の演奏」が１ミリも変化していない、というのは決して「良い仕上がり」とは言えないはずですよ？きちんと「毎回リアルタイムで」音楽と向き合えていますか？ そこに次回へ向けての改善ポイントがあるような気がします（あくまで推論ですので大外ししていたらごめんなさい）。ステージの上に残してきてしまう「やりたいこと」を一つずつでも減らしていけるように、お互い気長に頑張りましょう！