結論から申し上げると、その問題については未だ答えが出ていません。グレーゾーンです。 その昔、合唱曲の改変に関して「大地讃頌事件」というものがありました。 とあるジャズバンドが「大地讃頌」をカバーして、JASRACに利用許諾を取ったうえでアルバムに収録しました。ジャズバンドによるカバーなのでジャズアレンジが加えられたのですが、「大地讃頌」の作曲者が著作権法上の編曲権と同一性保持権を理由にジャズバンドを訴えました。訴えられたジャズバンドはカバー曲を別の曲に差し替え、訴えは取り下げられました。 これが「大地讃頌事件」の概要です。判決にまでは至っていません。 卒業式での演奏(練習も含む)について検討してみます。 卒業式での演奏は、著作権法35条1項によって正当化されます(編曲権は問題にならない)。また、20条2項4号によれば、「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」であれば、同一性保持権は及びません。 あなたのやったことも、「大地讃頌事件」も、法律的には、「楽曲の即興アレンジ」が「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」にあたるかどうか、が問題になるわけです。 私が考えるに、ジャズやHIPHOPではアレンジはおろか、サンプリングでさえ日常茶飯事です。それが音楽文化の一部です。一方、現代においてクラシックはアレンジを嫌いますよね。ただ、偉大なクラシック作曲家であるバッハやベートーヴェンはアドリブの名手だったとされます。音楽の発展に即興演奏は付き物のはずです。 難しいですね。法律的にも、音楽的にも曖昧な部分が残る訳です。となると、波風を立てないためにアレンジするべきではない、あなたの先生はこのように考えたのではないでしょうか。