s過程とr過程とあって、前者ですとビスマスまではできているんです。
が、恒星のエネルギー源として重要なr過程で鉄までしかできないのは、これがエネルギー的に最低の原子核だからです。鉄は、核分裂するときにも核融合する時にもエネルギーを吸い取ることになります。言ってみれば核融合反応における「完全な灰」です。
したがって、ケイ素から鉄への核融合が始まってもそれ以上別の原子核を生み出すことはできません。
「なぜ鉄が最低エネルギーなの」と言われると「この宇宙ではそうなってるから」としか言えません。
ほとんどの粒子には引っ張り合う力と反発する力が常に働いています。この力の大きさは宇宙ができた瞬間に決まっており、この宇宙ではちょうど鉄原子あたりの構成が、引っ張り合いと反発とが釣り合った状態で一番安定となります。恒星内部でもその状態は変わりませんので鉄が最終産物となります。
(・・・しかし、鉄が堪えきれないほどの猛烈な熱と圧力がかかってくると、今度は鉄原子核は鉄でいるよりも中性子の塊に変わった方が安定になるのでそのように変化。そこで恒星は吹っ飛んでしまいます。)