私も犬猫の腎不全患者を多く抱えていますが、獣医師でも意見が違う場合もあります。
自分は腎臓病療法食をそこまで強く勧めません。犬および猫において腎臓病食が生命予後に良い結果を与えたという結果は私の知る限りないからです。腎臓の状態の悪化自体は抑えられるという証拠はありますが、一方で全身状態の悪化(体重減少など)は加速するという結果もあるので、総合的にはどっちが良いとも言えないと考えています。
療法食を好んで食べてくれるならいいですけど、美味しくないというものを無理して食べて長く生きてもQOL(生活の質や楽しみ)がダダ下がりです。療法食ほどでなくても、なるべく低蛋白で美味しく食べれる食餌を与えたほうが幸せなのではないかと自分は思います。
参考例として、今治療している中にも、末期の慢性腎不全で療法食をまったく口にしない犬(15歳)がいます。初診時にはBUN>130、Cre>14ですでに食欲が落ち始めてから1ヶ月も経っていて危険な状態でした。最初は1週間ほど入院治療し、その後はとにかく手作りでもおやつでも食べるものを与えるようにしてもらって、週2回静脈点滴に通ってもらい、かれこれもう1年以上経ちます。点滴が数日遅れるとすぐに重度の尿毒症(BUN>100、Cre>10)を起こしてしまい危篤状態に陥ってしまいますが、点滴頻度を守っていれば良好な状態(BUN50,Cre2.5前後)を保っていけています。心臓病や他の病気も抱えているので、飲み薬も何種類か飲んでいます。
最近は食欲も安定して市販の缶詰、卵焼き、ささみ、ボーロ、豆腐なんかを食べているようです。正直健康な犬には与えて欲しくないものもありますが、今は何かしら口に入れることが重要と思っていますし、そうしていることで体重も良い具合に維持できていますし、もし療法食に固執していたらとっくに亡くなっていたと確実にいえますからね。