曼荼羅は狭義には密教の両界曼荼羅（金剛界曼荼羅・胎蔵界曼荼羅）のことをいいます。こちらはほぼ正方形の画面に、大日如来を中心に無数の神仏が描かれ、密教の宇宙観を表現したものです。 これはもう図様が決まりきっていますので、あまり見分けるのに苦労はありません。 しかし広義には曼荼羅とは仏の世界観を描いた仏画全般のことを指します。 広義の曼荼羅には『当麻曼荼羅』や『智光曼荼羅』といった〈浄土曼荼羅〉、『春日曼荼羅』や『熊野曼荼羅』など神仏習合の世界を描いた〈宮曼荼羅〉などがあります。 さて、「来迎図」というのは、西のかなたの極楽浄土にいる阿弥陀如来が、死者を「迎えに来る」様子を描いた図像です。こちらも図様にはバリエーションが多くあって、図柄が決まりきっているわけではありません。 来迎図は阿弥陀が死者を迎えに来る絵ですから、かならず阿弥陀如来が中心に描かれています。 阿弥陀が単独の場合もあるし、家来をたくさん引き連れている場合もあります。また、阿弥陀が山の向こう側にのっそりと現れた『山越（やまごえ）阿弥陀図』や、雲にのって死者のもとに駆けつける『早来迎（はやらいごう）』といったものもあります。 しかしかならず中心が阿弥陀如来です。そして、「迎えに来る」さまを表すために、かならず雲が描かれています。 山越阿弥陀図 http://buddhism-orc.ryukoku.ac.jp/old/exhibits_images/20031020-20031219_001_002_001_001.jpg 早来迎 http://abokaya.up.seesaa.net/image/chionin_raigouzu.jpg 阿弥陀聖衆来迎図 http://www.e-t.ed.jp/edotori390333/syasin3syou/002015.jpg これに似た曼荼羅ということになると密教の両界曼荼羅ではなく、広義の曼荼羅の〈浄土曼荼羅〉や〈宮曼荼羅〉のほうでしょう。 浄土曼荼羅もやはり阿弥陀如来が中心に描かれています。また『春日曼荼羅』などは山の上に仏が浮かんでいたりして、ちょっと間違えやすいかも知れません。 浄土曼荼羅の例（当麻曼荼羅） http://www12.canvas.ne.jp/horai/tai-zentai.jpg 宮曼荼羅の例（春日曼荼羅） http://www.pauch.com/kss/images/g032_wakamiya_1.jpg 浄土曼荼羅は、阿弥陀を中心に極楽浄土の様子が描かれています。べつに死者を迎えに来るわけではないので、阿弥陀は雲には乗っておらず、蓮弁の上にどっかり座っています。 春日曼荼羅など宮曼荼羅は、仏が描かれていても、これが迎えに来るわけではありません。仏の下に必ず神社が描かれています。 このあたりをご参考に、いくつか図版を見比べているうちに、違いがわかるようになると思いますよ。