ヘラクレイトスの思想と仏教の「空」や「無」の思想には確かに共通点があると考えられます。 ・ヘラクレイトスの「あるとともにあらぬ」という言葉は、万物は常に変化し続けており、永遠不変の実体は存在しないという考え方を表しています。これは仏教の「無常」の教えに通じるものがあります。 ・また、ヘラクレイトスは理性だけでは真理に到達できないと考えていたようで、この点でプロティノスの立場に近いと言えるかもしれません。プロティノスは理性を超えた直観的認識の重要性を説きました。 しかし、ヘラクレイトスと仏教思想の間には大きな違いもあります。ヘラクレイトスは「ロゴス(言葉、理性)」を万物の根源と考えていましたが、仏教は言語や概念を超えた領域を重視しています。 したがって、ヘラクレイトスは仏教の真理に接近した思想家だったと言えますが、完全に同じ境地に到達したとは言い難いでしょう。ただし、当時の西洋思想の中では、仏教思想に最も近い立場を取っていたと評価できるかもしれません。