チキンカツ定食を注文した時に聞かれたのです。
「チキンカツに掛けるのは何にしましょう?」と。
其処で出された選択肢が
・ポン酢
・油淋鶏ソース
・タルタルソース
だった訳です。
更に店員さんの話を聞き続けると、ベーシックにとんかつソースも付いて来ると言う事でした。
詰りここのチキンカツを食べる選択肢は4種類も用意されているのです。
此処できっと色々な処にアンテナを張り巡らしている様な人だったらマリーアントワネットの如く「じゃあ全種類試せば良いじゃない」となるのかも知れません。
ですが此方は単なる庶民。食事中に色んな事に頭を使いたくは無いのです。
只々、私はチキンカツでお腹を満たしたいだけなのです。
結局選んだのはタルタルソースでした。
理由は、ポン酢の酸味はソースと似通うかも知れませんし、油淋鶏ソースを選ば無かったのは辛い物を熱々のチキンカツに掛けたら汗だくになるかも知れないと言う今後の活動を考えての選択です。
運ばれて来たチキンカツに、私は黙々とソースとタルタルソースを付けて頬張りました。
チキンカツはそれ自体が常々斬新な美味しさに満ちています。
詰りシンプルなチキンカツと言うそれ自体も一つの味なのです。
そんなチキンカツさんも、タルタルソースを身に纏えばちょっと小粋な南蛮風に早変わりします。
ご飯が進む。兎に角進む。タルタルソース、正解でした。
満腹になり乍ら定食を平らげ、さぁお会計かなと思った時、悲劇は起きました。
カウンターの上に塩と!醤油!!
詰りこの店のチキンカツを食べる為の選択肢は7つ(何も付け無いプレーン味含む)もあったのです。
それが判っていれば其処には又別の作戦が展開されていたのです。
醤油があったのならば私は最初から「あ、ソース要らないです」と伝えて醤油一択の選択肢を選ぶ可能性すらあった訳です。
フライには醤油。それこそが至高です。
然し同時にこの考え方は自分の生き方を狭めている事にも繋がりはしないかと脳内の私は囁くのです。
フライには醤油と必ず決めている人間にはきっとカツオにマヨネーズを組み合わせた真似は出来ません。
自分が本当に選ぶ冪は、自分が頼ま無かった油淋鶏ソースにこそあったのかも知れません。
店を出た私は、満腹のお腹と、満たされない心を引き摺って外に出ました。
チキンカツに何を掛けるのか、その答えは、未だ見付かってはいません。