東進も山川も歴.史.修.正.主.義ですね。ハルノートのどこが最後通牒でしょうか？ 冒頭に「暫定的、拘束力の無い、提案、草案」と書いてある。そんな最後通牒なんかありません。 満州のマの字も出てこない。少なくとも表面的には満州は「国」でした。日本軍の撤退に満州も含むのであればはっきりとそう書いたはずです。仏領インドシナは「進駐」だけだったのにわざわざ書いていますからね。 「等しい」は普通の日本語では「イコール」ですよ。 ちっとも「微妙」ではありません。言葉の遊びはやめましょう(笑) 当時ワシントンで日米和平交渉が進められていましたが、日本はハルノートの二ヶ月も前に米英蘭に戦争をしかける事を一方的に決めていました。そして11月5日、東條英機が総理大臣になって最初の御前会議で、12月1日零時までに日本の要求が通らなければ12月上旬に対米英戦争を開始、と最終的に決められました。 日本政府のいわゆる対米「乙案」にしても、外務省の妥協案に陸軍が横槍を入れ妥協から程遠いものになってしまった。「大本営陸軍部戦争指導班機密戦争日誌」という文献がありますが、すごい事が書いてある。「外交交渉が失敗する事を熱望する」など。そして日米交渉が頓挫すると｢めでたし、めでたし｣と書きました。陸軍は戦争がしたくて仕方がなかったのです。 日本政府がハルノートを受け取った時には海軍機動部隊は既にその前日に真珠湾に向けて出撃していました。また、マレー半島奇襲上陸を目指した陸軍の大部隊を乗せた輸送船団も南方に向けて航行中でした。つまり和平交渉中に、そしてハルノートを受け取る前に強大な攻撃部隊を出撃させていた。 アメリカの要求の中心は中国・仏領インドシナから軍隊・警察力を引き揚げる事です。これは当然ですね、日本が九ヶ国条約、パリ不戦条約を破って満州侵略に始まって中国侵略を拡大し、フランスがドイツに負けたどさくさに仏印武力進駐したのですから。但し「いつ」「どんな方法で」などは書いていない。 ハルノートはあの当時としてはむしろ穏健で日本の顔を立てたものでした。 「日米政府が音頭を取り関係各国に働きかけて不戦条約を結びましょう」 「日米政府がお互いに最恵国待遇を基本として通商を行い、貿易上の障害を取り除く為の協議を始めましょう」 とまで提案している。 蒋介石の国民政府を中国の唯一の政権とする、と。これは当然ですね。当時の中華民国の首長は蒋介石。国際連盟の一員でもありました。日本軍は国民政府を裏切って日本軍の犬になった汪兆銘を首班にして南京政府を祭り上げましたが、日本敗戦の翌日に消滅。元々中国国民の支持の無かった傀儡政府でした。 ハルノートは日独伊三国同盟を解消しろと言っていない。満州のマの字も書いていない。日本軍の中国撤退も無条件とは書いていない。撤退の条件として日本は満州保持の可能性も含めて相当の権益は確保出来たと思いますが、日本は質問も交渉もしないでいきなり戦争を始めた。というか、日本はハルノートを受け取る前に攻撃部隊を出撃させていた。 日本の国策はアジア征服で、その邪魔になる米英を叩いておこう、と始めたのが太平洋戦争でした。当時の政府の資料に明確に書かれています。以下を御参考に。 https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11116323941?__ysp=44Ki44K444Ki6Kej5pS%2BIOWvneiogOOBr%2BWvneOBpuiogOOBiA%3D%3D 対日石油禁輸でタイミングが早まったとは言えますが、それ迄は石油を始め重要戦略物資も欲しいだけ獲得出来ていた。日本の中国侵略がピークに達しつつあった1940年度ですら、日本の石油需要量の86％をアメリカが供給。このどこがアメリカに経済圧迫でしょうか？ そしてその対日石油禁輸も日本の侵略拡大に対する警告で、日本が侵略政策を改めていたら経済制裁は解除だれたのですが、日本は戦争を選びました。それが石油禁輸やハルノートなどのかなり前からの日本の国策だったのです。 ハルノートを受け入れていたら日本はアメリカの奴隷になっていたと言う意見がありますが、こちらから仕掛けた戦争に完敗して降伏したあとですらアメリカの奴隷、植民地にならなかったじゃないですか。 たった6年のアメリカによる寛容な占領ののち、植民地化されるどころか主権回復し民主主義、平和主義を基礎に、アメリカの産業すら圧倒する経済大国に成長しました。アメリカの奴隷から程遠いですね。 日本としてはハルノートを受け入れ、中国、仏印にいた百万の大軍隊を日本に戻し、海軍は引き続き世界第三位（あるいは第二位）の精強な大艦隊、そしてアメリカとは最恵国待遇の通商関係を結ぶ。日本経済に深刻な悪影響を与えていた日中戦争が終わって日本の景気は活性化し、更に大国になる、、、そんな日本が外国の植民地になるわけがありません。 日本がドイツと組んで米英を中心とする自由主義世界に対抗したのはドイツの勝利が大前提になっていました。しかし昭和16年11月末の時点ではドイツの敗勢はそろそろ明らかだった。 その様な世界情勢の中で軍事大国・日本が中立を保っておれば国際社会における発言力、影響力は相当なものになっていたでしょうね。国際連盟に常任理事国として復帰、米英ソなどと対等に付き合っていく、と。しかし経済や国際情勢が理解出来ず、侵略主義で暴走した東條に付き合わされた日本は、取ろうとしたものを取れなかったばかりか、元々持っていたものも失って江戸時代と同じ小さな島国に戻ってしまいました。