【１】硬銅線に比べて値段が安い 当たり前ですが、伸線作業が特に困難でない限り、線材の価格は材料費で決まります。 鋼でも硬銅でもアルミでも使う材料の量は貴金属ではないので差はあっても極端な差は出ません。 価格変動はありますが、常識的に鉄＜アルミ＜銅のとおり、トン当り銅は120万円、アルミは30万円くらいでその1/4程度、比重を考えると電気抵抗が少々大きくてもアルミに軍配が上がります。 銅は戦略物資といわれるくらいでその時々の状況で価格が変動します。 更に投機筋の思惑で大幅に値上がりの可能性が高いです。 【２】引っ張り強さが大きい 常識的に鉄＜アルミ＜銅ですので、耐食性はおいとけば銅を使いたくはありません。 特に太い高圧送電線では尚更で、この場合は鉄塔間のスパンが大きく、高強度で軽量な導線が求められます。 ということで、鋼の強度とアルミの導電性のいいとこ取りした鋼心アルミより線（ACSR：Aluminum Conductors Steel Reinforced）が作られたわけです。 かっこ良く言えばハイブリッド電線ですな・・・。 鋼心アルミより線 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8B%BC%E5%BF%83%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%82%88%E3%82%8A%E7%B7%9A この場合電気抵抗率（単位はΩ・ｍ）が、銅は1.68 ×10^－8、アルミは2.65×10^－8ですので、1.64倍電気を通しにくく、電圧降下を同じにするには1.64倍大きい断面積が必要となります。 しかし価格差がそれ以上ですので、アルミ線にするわけです。 実際は加工や強度改善の合金化などで、これより抵抗は大きくなります。 この場合電気抵抗率は銅＜アルミ＜鉄なのでアルミを導体として使い、補強の鋼線は1.00 ×10^－7とアルミの4倍くらい電気を通しにくいので、設計上は鋼線には電気的には流れないものとして考えます。 しかしアルミは強度が小さく硬銅線の40kgf/ｍｍ2に対し、ジュラルミンでも無い限り導線そのものに強度を負担させるわけにはいかず、助っ人として鋼線を入れてそれに強度を負担させます。 この場合鉄筋などの軟鋼と違い100kgf/ｍｍ2程度の強度がありますので楽勝です。 何せ吊り橋で使うくらいですから、鉄塔間の300や400ｍくらいはなんてことありません。 何かぶら下げるわけではありませんから・・・。 【３】外径が大きい 導線として同じ抵抗の場合1.64倍の断面積がいるので太くなるうえ、中心部分に強度部材の鋼線を入れますので更に太くなります。 【４】風圧荷重が大きい 外形が大きい分風圧を受ける面積が大きいため必然の結果です。 風圧は1/2×空気密度×風速の二乗×空気抵抗定数×風圧を受ける面積なので、他の条件を同一とすると風圧を受ける面積に比例します。 したがって導線の直径に比例することになり、断面積の平方根に比例します。 【５】コロナ放電が発生しにくい 定性的には断面積が大きくなるので、導線の曲率半径が大きくなり平面に近くなります。 避雷針でも分かるとおり尖ったものの方が電位傾度が大きくなるので、尖った先の電界が大きくなり放電しやすくなります。 すなわち細い導線ほど放電しやすくなり、太めのＡＣＳＲはコロナ放電による悪影響は少なくなります。 Wikiよりこっちの方が分かりやすかろう・・・。 コロナ放電とはどんな放電？その原理や対策について – 建職バンクコラム (kenshoku-bank.com) https://kenshoku-bank.com/column/2336/#i