＞どういったものなんでしょうか？ 胡服や胡語の「胡」がポイントです。 五胡の胡も同じ意味の文字です。 「胡」は漠然とした中国の北方にすむ異民族のことだと思ってください。 胡は、日本語では「えびす」と訓読みします。 えびすは「夷」とも書きますが、異民族（野蛮人）を意味する言葉です。 https://kotobank.jp/word/%E8%83%A1-61196 胡人というと、外国人（野蛮人）を意味します。 https://kotobank.jp/word/%E8%83%A1%E4%BA%BA-64843 ちなみに、唐代になると、胡人は主にソグド人のことを指すようになりました。 胡服と胡語に戻ります。 胡服とは、異民族の服装のことです。 農耕民と遊牧民は、ファッションが根本的に異なりました。 農耕民の服装は、我々のイメージでは着物だと思ってください。 上下がつながったワンピース状の服装が着物などに代表される 農耕系の服装になります。 古代中国での、漢人の正装は着物のような服装でした。 ところが、遊牧民の服装は、乗馬（騎馬）がしやすいように 工夫されていました。 上着とズボンが分離した、ツーピース状の服装をイメージしてください。 特に、ズボン、ベルト、ブーツといった服装は遊牧民特有の服装でした。 現代の我々の衣服は、意外と胡服の伝統を受け継いでいます。 少し脱線すると、洋服はもちろんヨーロッパから伝わってきたわけですが、 ヨーロッパの服飾史の場合、古代ローマではトガ（トーガ）と呼ばれる ワンピース状の衣服が主でした。 https://kotobank.jp/word/%E3%83%88%E3%82%AC-104525 ところが、中世以降ゲルマン人たちの服装がメインになっていきました。 これが、上着とズボンに分離したツーピース系の服装でした。 ゲルマン人は遊牧民ではありませんが、騎馬民族でしたので 服装は遊牧民的なものだったわけです。 胡服を禁止したということは、それまでの鮮卑人が伝統的に着ていた 服装をやめて、漢人の服装のみを着るように強制したということです。 現代の日本でいえば、洋服を禁止して、和服を着るように強制するような 命令になります。 北魏にとっての胡語は、もちろん鮮卑語のことです。 孝文帝の時代までは、北魏の支配者層である鮮卑人は 母語である鮮卑語と中国の漢人が使う漢語の両方を 使っていたはずです。 そのうち、自分たちの民族の言語であった鮮卑語を禁止した ということが胡語の禁止ということです。 ＞その他にまだいくつかある気がするんですが 例えば、胡人風の姓を漢人風に変えるということをしています。 皇帝自ら、拓跋という姓を元という姓に変えてしまいました。 漢字一文字というのは、いかにも漢人風の姓でした。 孝文帝の場合、本名はもともと拓跋宏といいましたが、 改姓して、元宏となったのでした。 それを臣下にも強制しました。 例えば、鮮卑の禿髪氏は、源という姓に変えさせられました。 この一族の子孫には、唐代に宰相となった源乾曜という人物 なんかがいます。 遣唐使を行って中国文化を積極的に輸入した日本で、 源氏や平氏といった、一文字の姓が登場するのも ある意味では孝文帝の漢化政策の影響と言えるかもしれません。 例えば、阿倍仲麻呂は、遣唐使で中国に渡り、唐の玄宗に 仕えたのですが、そのとき朝衡という中国名を使用しました。 おそらく、本名ではいかにも異民族という感じだったので 漢人っぽい名前に変えたのでしょう。 孝文帝が改姓を行わせたのも、異民族的な名前が恥ずかしかった からでしょう。 孝文帝は漢文化を吸収して育った人物でしたので、 異民族的な伝統を、恥ずかしい（ダサイ）と感じていたのだと 思われます。