デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

Z世代はアトピー性皮膚炎の重症度をより重く認識 Z世代の患者はミレニアル世代の患者と比べてアトピー性皮膚炎をより深刻に捉える

 Z世代の患者はミレニアル世代の患者と比較して、アトピー性皮膚炎の主観的な重症度をより重く捉えているという分析結果が、「International Journal of Dermatology」に7月25日掲載された。

 グラナダ大学(スペイン)のClara Ureña-Paniego氏らは、Z世代(1993~2001年生まれ)とミレニアル世代(1978~1992年生まれ)の患者間で、アトピー性皮膚炎の臨床的な重症度と主観的な影響を比較した。解析には、中等度~重度のアトピー性皮膚炎患者73人が含まれた。

 解析の結果、Z世代の患者はミレニアル世代の患者と比較して、アトピー性皮膚炎の重症度が低かった(湿疹面積重症度指数〔EASI〕9.75対16.63)。しかし、病気の重症度に対する認識に関しては、両世代で類似していた(アトピー性皮膚炎重症度評価法〔SCORAD〕43.54対32.98、患者志向湿疹評価尺度〔POEM〕13.21対15.48)。

 著者らは、「Z世代はミレニアル世代よりも主観的な重症度を重く認識している。この世代間の違いを理解することは、より効果的な治療戦略の作成に役立ち、各世代特有のニーズと期待に応じた治療方針を提供するために重要である。この方針には、治療のリスクと期待についての患者教育の強化、治療調整の適時実施のための定期的な追跡診察、ストレス管理や保湿剤の使用などの非薬理学的療法の導入、そしてメンタルヘルス専門家の治療チームへの参加が含まれる」と述べている。

免疫CP阻害薬で乾癬リスク2倍以上 台湾の全国コホート研究、13万5,000例超を解析

 免疫チェックポイント(CP)阻害薬はがん治療に画期的な効果をもたらした一方で、自己免疫疾患を含む免疫関連有害事象(irAE)のリスクが懸念される。台湾・National Defense Medical CenterのSheng-Yin To氏らは、がん患者における免疫CP阻害薬使用と乾癬リスクとの関連を調査する全国コホート研究を実施。13万5,000例超を解析対象とした同研究において、免疫CP阻害薬使用群の乾癬発症リスクは非使用群の2倍以上に上ったとJAMA Dermatol2024年11月6日オンライン版)に報告した(関連記事「がん治療に伴う皮膚障害を非侵襲的に早期診断」「免疫CP阻害薬による消化器障害、どう対応?」)。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

美容医療とシワ改善剤併用、皮膚障害認められず 第88回日本皮膚科学会東京支部学術大会で発表

 ポーラ・オルビスホールディングス(HD)で研究開発を担うポーラ化成工業は、美容医療施術の一つである高密度焦点式超音波(ハイフ)とシワを改善する医薬部外品の有効成分「ニールワン」配合製剤を併用した試験結果を解析し、ハイフ施術単独と同等の安全性を確認した。都内の美容皮膚科クリニックとの共同研究により突き止めた。詳細はあす16日から都内で開催される第88回日本皮膚科学会東京支部学術大会で発表する。

 美容医療の普及にともない、施術後のホームケアで医薬部外品が使われることが十分に想定される。一方、軽微な炎症状態にある施術後の皮膚に対する医薬部外品の併用について安全性を正確に評価した報告はほとんどない。

 23人の被験者を対象に、ハイフ施術後にホームケアにてニールワン配合製剤を3カ月間使用する試験を行った。顔の半分にニールワンが配合されていないプラセボ製剤、反対側の顔にはニールワン配合製剤を塗布した。

 今回の結果により、冬の乾いた空気による乾燥やハイフ施術による赤味などの皮膚の変化は観察されたが、顔の両側でほぼ等しく発生しており、ニールワン配合製剤の併用に起因する皮膚障害は認められなかったという。

トラネキサム酸が角層水分量増加 第一三共ヘルス、40~60代の日本人女性を対象に12週間の臨床試験を実施 化学工業日報2024年11月15日 (金)配信

 第一三共ヘルスケア(東京都中央区)は、一般用医薬品(OTC)や薬用化粧品の多くに配合されるトラネキサム酸が皮膚の角層水分量を増加させることを突き止めたと発表した。より高い保湿効果のある製品開発に成果を生かし、トラネキサム酸の作用機序についても研究を深めていく。

 トラネキサム酸の新たな作用を調べるため、40~60代の日本人女性を対象に12週間の臨床試験を実施。トラネキサム酸配合製剤とトラネキサム酸を水に置き換えたプラセボ製剤を被験者の顔の左右にそれぞれ塗布した。

 塗布開始から4週後、8週後、12週後の角層水分量の変化を比較した結果、いずれの期間においても、トラネキサム酸配合製剤の使用部位のほうがプラセボ製剤に比べて角層水分量値の有意な増加が認められた。

中等症/重症の尋常性乾癬にvunakizumabが有効

 中等症ないし重症尋常性乾癬患者690例を対象に、新規抗IL-17A抗体であるvunakizumabの有効性および安全性を第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験で検討。プラセボ群の患者では、12週時点でvunakizumab 240mgの投与に変更した。主要評価項目は、12週時点における乾癬の面積と重症度指数(PASI)のベースラインから90%以上の改善(PASI 90)および医師による静的総合評価スコア0/1(sPGA 0/1)の複合とした。

 その結果、12週時点で、vunakizumab群の方がPASI 90(76.8% vs. 0.9%)およびsPGA 0/1(71.8% vs. 0.4%)反応率が高く、PASI 75(93.6% vs 4.0%)、PASI 100(36.6% vs 0.0%)およびsPGA 0(38.2% vs 0.0%)反応率も高かった(プラセボとの両側検定、全てのP<0.0001)。vunakizumab群では、52週まで有効性が持続した。vunakizumabを投与した患者の0.9%に、治療関連の可能性がある重篤な有害事象が認められた。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

重症薬疹のTEN、空間プロテオミクス解析でJAK阻害剤が有効と判明 新潟大ほか、研究成果は、「Nature」に掲載

致死率の高い薬疹中毒性表皮壊死症」、治療薬開発とメカニズム解明が課題

 新潟大学は10月29日、重篤な薬疹である中毒性表皮壊死症(以下、TEN)の予後を改善させる新規治療法を開発したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野の長谷川瑛人助教、阿部理一郎教授、ドイツのマックス・プランク生化学研究所(MPIB)のMatthias Mann教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature」に掲載されている。

 TENはさまざまな薬剤が原因で発症し、全身の皮膚や粘膜が壊死してしまう致死的疾患で、国が定める指定難病である。日本の診療ガイドラインにおいては副腎皮質ステロイドの全身投与が第一選択で、難治な症例には免疫グロブリン大量静注療法や、血漿交換療法などを行うが、約30%の患者が致死的な経過となる。TENのメカニズムは完全には解明されておらず、その解明とともに、より有効な新しい治療法の開発が必要とされてきた。

TEN患者の皮膚細胞にJAK/STAT経路の著明な亢進を発見

 研究グループは、最新の研究技術である空間プロテオミクスを用いてTENの発症メカニズムの解明に取り組み、それをもとに新しい治療薬の開発につなげることを試みた。

 まず、空間プロテオミクスを用いて、TEN患者の皮膚組織を解析した。今回特に、Matthias Mann教授らが開発したディープ・ビジュアル・プロテオミクスと呼ばれる、高性能な顕微鏡、AIによる解析、超高性能な質量分析の技術を融合し1個1個の細胞に含まれるタンパク質を正確に定量する最先端の技術を使用した。TEN患者の皮膚の細胞のタンパク質を詳細に解析した結果、炎症を起こすJAK/STAT経路が著明に亢進していることがわかった。

モデルマウスに対するJAK阻害剤投与でTEN様症状を抑制

 アトピー性皮膚炎関節リウマチなどの疾患において、このJAK/STAT経路を阻害する治療薬であるJAK阻害剤がすでに開発されている。今回の研究ではモデルマウスを用いてJAK阻害剤の有効性を検証したうえで、実際のTEN患者にJAK阻害剤を使用し、その有効性を実証した。TENの病態を模したモデルマウスに対しJAK阻害剤を投与したところ、TEN様の症状を抑制することができた。

TEN患者7人、JAK阻害剤投与で速やかに治癒し大きな副作用もなし

 この結果に基づき、7人のTEN患者にJAK阻害剤を投与したところ7人全員が速やかに治癒し大きな副作用もみられなかった。今回の研究の結果から、TENに対してJAK阻害剤が非常に有効な治療法である可能性が示された。

大規模な臨床試験でTENに対するJAK阻害剤の有効性と安全性を検証予定

 今回の研究で、TENに対してJAK阻害剤が有効な治療法である可能性が示された。「今後は、より大規模な臨床試験を行い、TENに対するJAK阻害剤の有効性と安全性を検証し、実用化を目指す」と、研究グループは述べている。

水疱性類天疱瘡とアトピー性皮膚炎に遺伝的関連 国際バイオバンクデータを解析

 水疱性類天疱瘡(BP)は、高齢者に多く見られる自己免疫性の皮膚疾患で、痒みを伴う発疹や水疱が発生する。難治性のケースも見られ、重症化すると死に至ることもある。近年、BPとアトピー性皮膚炎(AD)の関連性が強く示唆されていることから、中国・Chongqing Clinical Research Center for DermatologyのQing Wang氏らは、フィンランド遺伝子研究プログラムFinnGen研究データベースと英国のUKBiobankのデータを用いて解析を行い、両疾患に遺伝的関連を認めたことをMol Genet Genomic Med(2024;12: e70022)に報告した(関連記事「自己免疫疾患とアレルギーに共通の特徴」)。

遺伝的関連性を4つの手法(LDSC、CPASSOC、TWAS、双方向MR)で解析

 BPとADには2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)優位な免疫応答を示し、血清IgE濃度が高いという共通点がある。また、BPでは細胞接着分子関連蛋白のBP180に関連する抗BP180抗体が陽性を示すが、実験的に作製したBP180機能不全マウスはADに似た皮膚炎を発症することが報告されている(Proc Natl Acad Sci USA 2018; 115: 6434-6439)。しかし、両疾患の併存関係についての研究は進んでいない。

 そこでWang氏らは4つの手法を用いて、BPとADの遺伝的関連性の解析を行った。4つの手法とは、①連鎖不平衡スコア回帰(LDSC):ゲノムワイド関連研究(GWAS)のサマリーデータを用いて遺伝的相関(rg)を推定、②交差表現型関連解析(CPASSOC):BPとADに共通する疾患関連一塩基多型(SNP)を同定、③トランスクリプトームワイド関連解析(TWAS):両疾患に共通する関連遺伝子を特定、④双方向メンデルランダム化(MR)解析:両疾患の因果関係を検証−する方法である。

遺伝的な正相関、4つの共通SNPと59の共通遺伝子、BPがADリスクを高める

 ①LDSC解析ではFinnGenから取得したBP患者507例と対照37万5,767例のデータおよび、UKBiobankからのAD患者2万2,474例と対照77万4,187例のデータを用いて両疾患の遺伝的相関を検討した。その結果、2つの疾患には正の相関が認められた(rg = 0.5476、P = 0.0495)。

 次に②CPASSOCによる解析で、BPとADで共通する4つの多面的SNP(rs7746553、rs943451、rs968155、rs28383305)を同定した。いずれのSNPもBPやADとの関連が報告されたのは今回の研究が初めてである。

 CPASSOCが遺伝子発現を考慮しない解析法であるのに対し、③TWASは遺伝子発現量を予測することで疾患に関与する遺伝子を同定する方法である。TWAS解析の結果、BPとADに共通する59の遺伝子が同定された。さらにこれらの遺伝子の多くは、単純ヘルペスウイルス1感染とユビキチンを介した蛋白質質分解に関与することが分かった。前者はADに併発しやすく皮膚症状を重症化させることが知られており、後者は免疫応答や炎症反応に関与することから皮膚疾患での役割が注目されている。

 最後の④双方向MR解析では曝露因子としてのBPがADのリスクを高めることが示された(OR 1.04 95%CI1.018〜1.068)。しかし意外にも、曝露因子としてのADにBP発症との関連は認められなかった。

 以上の結果から、Wang氏らは「BPとADには強い遺伝的関連があり、共通の遺伝的基盤が存在することが示された。今回の知見、特に共通するSNPの発見は両疾患において新たな治療法の開発に寄与する可能性がある」としている。