パートさんと現場で働いたら「年収の壁」より厄介な「圧力」の存在に気づいた。 - Everything you've ever Dreamed

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パートさんと現場で働いたら「年収の壁」より厄介な「圧力」の存在に気づいた。

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僕は食品会社(中小企業)の営業部長、相変わらず現場の人手不足は深刻で、僕もシフトの穴を埋めるためにパートさんと混じって惣菜工場で働いている。今月末までは週2日、年末になると週5日は惣菜工場で稲荷ずしをつくることになりそうだ。営業部長なのに…。なぜこんなことになったのか。理由は二つ。ひとつは、人手不足状況下で人材確保のためにパートスタッフの時給を上げたこともあって、早期に「年収の壁」に達するパートスタッフが増えたからだ。彼らが出勤日数と勤務時間を抑制しはじめたため、シフトが埋まらなくなったからだ。(パートさんの代わりに現場で働いたら「壁」の存在に気付いた。 - Everything you've ever Dreamed)

もうひとつは、年末の壁が近づいてきたから。これまでは背に腹は変えられず、パートさん達に頼み込んで無理に出勤してもらっていたが、年末に向けて、勤務日数と時間を抑制するシフトの調整をするパートさんが増えてきたからだ。「助けてあげたいけど来月はもう無理です営業部長」と言われてしまった。これが年収の壁に続く年末の壁である。(パートさんと現場で働いたら「年収の壁」よりヤバい「第二の壁」の存在に気づいた。 - Everything you've ever Dreamed)後で触れるけどこれらの根底には主婦パートの多くが持つ「それほど働きたくない」という意識がある。とりあえずシフトを社員で埋めるという応急処置で乗り切るしかない。年末まで頑張ろう、そうすれば何とかなるという気持ちで僕も頑張ってきたけれども、その気持ちをくじく第三の壁の存在に気がついてしまった。

第三の壁は壁というよりは圧力である。「人がいない」「シフトが埋まらない」という会社サイドの足元を見たパートスタッフからの圧力だ。パートスタッフには二種類いる。年収の壁を無視して思いっきり働いて稼ぐタイプと、年収の壁を前に働くのをセーブするタイプ。僕が実際に現場に入ってパートさん達と一緒に働き、話してみてわかったのは後者のタイプの方が圧倒的に多いということだ。世間一般や政治家の人たちの中には「年収の壁のせいで働きたくても働けない」みたいな認識を持っている人がいるけれども、実際の主婦パートさんは「これ以上働きたくない」「家計の足しになればいい」と考えている人がほとんどだった。そのため年収の壁をガンガンぶっ壊して働いてくれるパートさんは頼もしい戦力になる。シフトを埋めてくれる存在がこれほど大きいとは…感謝しかない。

しかし、ここに落ち度があった。ガンガン働く系のパートさんは、できるだけ稼ぐことが第一である。そして、会社が人不足でシフトが埋まらない現状を熟知している。現状のパートスタッフの離脱が会社にとって痛恨の極みになることも知っている。会社サイドの弱みを握ったガンガン働く系の人たちが、足元を見て、より多くの時給を支払ってもらえないとこれ以上ここでは働けないと言ってきているのだ。会社サイドの人間として僕も貢献してくれる人にはお金で報いたいと考えているが、限界がある。僕がヘルプで入っている食品工場は惣菜やいなり寿司といった安価な商品を生産しているため製造原価(かけられる労務費)には限界がある。「商品価格に転嫁すればいい」という人は浅はかだ。いなり寿司を1つ500円で買う人はいない。商品にはその商品に求められる価格がある。いなり寿司を500円では売れないのだ。またガンガン働く系のパートさんの時給を上げたらパート全員の時給のアップも不可避。「あの人の時給が上がるなら私も」「不公平だ」といわれて応じなければ現場が破綻してしまう。

パート同士だからこういう事態が起こりうる。だが、社員となれば別である。というわけでガンガン働く系のパートさんには「社員にならないか」と打診している。試算すると時給を上げて週五日八時間労働すると一部若手の社員よりも稼げてしまうのだ。それなら正社員にしたほうがよいという考えである。安定した収入になる。しかし、うまくいかなかった。ガンガン働く系のパートさん達は誰もその提案に応じなかった。理由はシンプル。「パートだけど社会保険や年金に入っているから不安はない。社員になって多くの責任や義務を負いたくない」こうして若手社員よりも稼いでしまうが責任と義務は負いたくないうえ会社に対しては強気に出てくるモンスターパートスタッフの誕生を僕は目の当たりにしている。

「収入の壁」を理由に稼がないように調整するパートスタッフ。出勤日と時間を調整せざるをえなくなる年末の接近。会社の弱みを握って昇給を求めてくるガンガン稼ぎたい系のパートスタッフ。これら3つの壁によって中小企業の現場は死に体である。最低でも年収の壁の額を地域ごとに設定してほしい。そもそも最低賃金や地域ごとの求人ベースの金額が違うのに、年収の壁だけが全国1つが狂っている。つか地域だけでなく働き方によって年収の壁を設定するしかないのではないかな。

最悪なのは中小企業は体力がないため、パート人件費の上昇を補填するために、正社員の昇給を抑えなければならなくなっていることだ。若手の正社員と変わらぬ給与をもらっておきながら、責任と義務を負わないモンスターパートスタッフ。僕ら社員が彼らに頭が上がらない構図はどう考えてもおかしい。穴だらけのシフトを埋めるパズルを解きながら、「お願いだからシフトに入って」「やめないで」と懇願しながら、そんなことを思う毎日である。

くわえて現場から戻るときまって会社上層部から「遊びに行っている」「人件費が無駄だ」と言われてムカついている。近いうちに会社上層部中最弱の男を現場に連れて行き、「口を動かす前に手を動かしてくたさい。稲荷寿司がぬるくなってしまいますよ」「回転釜も使えないで食品会社を仕切っているのですか」と叱責して人手不足の地獄を見せて日々のストレス解消したいと考えている。(所要時間30分)