104. 伊東成郎『新選組 2245日の軌跡』(新潮文庫)
再読したい度:☆★★★★
新選組が好きらしい妻の一冊。新選組に関しては史実に近い内容のゲームをやったことがある程度の理解度だったが、その断片的な知識を時系列に沿って繋げるのには役立つ一冊。人や事件に関する詳しい説明はない部分も多く、新選組に関する知識がほとんどない人が読んでもなんのこっちゃといった感じだと思う。内容の要約や解説をするほどの知識量もないので、以下、感想を箇条書きに記す。この本同様、ほとんど新選組を知らない人はなんのこっちゃだと思うが。
- 芹沢鴨はやっぱり横暴な奴。
- 伊東甲子太郎は序盤からいるイメージだったが、登場は意外にも中盤以降。
- 土方歳三は近藤勇が不在のときに、無茶な処刑をしすぎて怖い。
- 斎藤一は裏切るイメージだったが、そんなことはなくて、新選組のなかでも数少ない生き残りだった。むしろ生き残ってしまったから、新選組を全うしなかったイメージがついていた?
- みんな軽く切腹しすぎ/させすぎ。
- 近藤と土方が一度も共闘していない(同じ戦地に立っていない)のは意外だった。
- 主力は案外途中脱退しがち。
- 武術と銃火器の戦いという、戦闘形態の変遷の最中にあって、前者のエキスパートを集めた新選組が劣勢であったのには頷ける。
- 明治になったのが先で、戊辰戦争(旧幕府の反抗)はそのあとも続いていたことを再確認。
105. 斎藤博久『アレルギーはなぜ起こるか』(ブルーバックス)
再読したい度:☆☆★★★
息子が急にアレルギーを発症し、驚いて図書館で借りた。アレルギーが起こるおおまかな仕組みを理解するのには有用であった。こちらも全体の解説はしないが、印象的だった言い回しを以下に書き留めておくことにする。
「子どもの頃には、身体の中でオセロゲームが行われている」
子どもの身体には、まだ異物と接触したことのない細胞(ナイーヴT細胞)が存在している。それが細菌やウイルスに接触すると、細菌やウイルスの撃退に関与する細胞(1型ヘルパーT細胞)へと変化する。一方、アレルゲン(抗原のうちアレルギー反応を引き起こす抗体を作るもの)に接触したナイーヴT細胞は、(攻撃する必要はないのに)アレルゲンを攻撃する細胞(2型ヘルパーT細胞)へと変化する。すなわち、2型ヘルパーT細胞が増えてしまうと、本来体に害のない物質に過剰に反応するアレルギー体質となる。
1型・2型の両ヘルパーT細胞は、一方が増えるときにはもう一方の細胞にとって毒となる物質を分泌し、まさに陣取り合戦のように、ナイーヴT細胞を自分の陣営に引っ張り込む戦いを繰り広げる。ちなみに、ヘルパーというと、何かを助ける・手伝うような印象を受けるが、実際の働きとしては、細菌・ウイルス・アレルゲンへの攻撃を促す「司令官」的な役割を果たすようだ。
最近、アレルギーの人が増えているのは、居住環境が清潔となり、子どもの間に細菌やウイルスにさらされることが少なくなった結果、2型ヘルパーT細胞が増えてしまうためらしい。実際、清潔な都市部で育った人に比べて、牛や豚が身近にいるような環境下で育った人の方が、アレルギー体質の人は少ないらしい。
より厳密には、ヘルパーT細胞の働きを抑える制御性T細胞ともう一種類なんだったかの4種のバランスが保たれていることが健全らしい。アレルギー体質となることを避けるため、清潔を嫌ってあまりに不潔な環境下で子ども育てることはよくないようだ(制御性T細胞が少なくなり、1型/2型の過剰反応を引き起こす)。ともあれ、細胞同士の「オセロゲーム」という表現がわかりやすく、とてもしっくりきた。