ニューヨーク
旅の醍醐味は、思わぬ出会いにある。今回のマンハッタンへの旅行は、帰りのニューアーク空港へのタクシーであった。ニューヨークのイエローキャブドライバは黒人が多い。マンハッタンの秋は夜が明けるのが遅く、暗いうちにセントラルパーク近くのホテルからニューアーク空港へ飛ばしてもらった。道を訊くドライバの背後から聞こえる発音が実に美しく、運転もうまい。ニューアークのインターナショナルに着く。ドライバが大きなトランクを下ろしてくれる。料金を払おうと、そのドライバと目を合わせた瞬間、とてつもなくスピリチュアルな輝きと謙虚さに満ちた瞳に出会った。これほどの高貴な精神性をたたえた人間の瞳に出会ったのは、はじめてである。旅の最後に最高のプレゼントが待っていた。感動しつつ相場の倍のチップを払うと、そのドライバは「thank you, sir」と美しい発音を恭順に残し、去っていった。