赤いオーバーが良い。またはケープ。冬はそうでなくては。 『アンナの赤いオーバー』という絵本があって、むかし私は赤いコートを着ていた。叔母が着ていたものだ。物持ちの良過ぎる祖母に困惑したこともあるが、赤いコートは気に入っていた。アンナの赤いオーバーだから。あの絵本は、衣服を持つことの或る尊さを物語っている。 大好きな男の子がいた。けれど私は彼の部屋へ行ってはいけない身だった。彼の部屋に入った日、彼の接吻を受けた翌日、ピンク色と灰色のチェックの、十四のときに買ったケープを失くした。いっとうお気に入りのケープを失くしたことを、私は罰だと受け止めている。あのケープは何処に置いてきてしまったのだろう。(…