『ウルトラマンが泣いている 円谷プロの失敗』
講談社現代新書
2013年6月20日刊
まぁ、CYPRESSはウルトラマン世代で、日本の特撮物は大好きですが、出来の悪い物ばかりで文句ばっかり書いてます。
ミニチュアと特撮の出来の悪さは納得出来るんですが、脚本の悪さで作品の質を著しく落とし、これには我慢出来ません。
『ウルトラQ』のDVDboxは買いましたが、『ウルトラマン』以降のウルトラシリーズは買う気にならないのも脚本がお粗末過ぎるから。
『ウルトラQ』でさえ大した脚本じゃないんですが。
出来の悪さの原因が何か書いてあるんじゃないかと、読んでみると…
1:
私がウルトラシリーズで観ていたのは、
『ウルトラQ』
『ウルトラマン』
(『キャプテンウルトラ』→円谷プロじゃないけど)
『ウルトラセブン』
そして『帰ってきたウルトラマン』は少し。
後は観ていません。
出来の悪さの原因が少々書いてありました。
1-1:
『帰ってきたウルトラマン』の視聴率が振るわず(→それでも最低で14.3%)、次作の『ウルトラマンA』以降はコンセプトや設定がコロコロ変わったとか。
P,115から
>結局、ウルトラシリーズには、その時々で適当に変えてしまうご都合主義=「しょせん子供番組なのだから何をしても許される」という言い訳が、常に付随していました。
さらに著作権、商品化権収入のために、発売されるキャラクター商品に合わせた脚本と作ったとか。
P.136~137から
>スポンサーとテレビ局という両者の圧力にさらされた円谷プロは、どうしたら視聴率を上げられるか、どうしたら今の子供の好みに合わせられるかと右往左往し、
ついには、玩具として発売予定のメカの登場に合わせて、脚本を変えることにまで踏み込んでいました。
中略
>しかし、長年、商品化権ビジネスに頼り続けた円谷プロは、それに依存するあまり、いつしか立場が逆転して頭が上がらなくなっていたのです。
ふ~ん、これは説得力が強い。
私が文句を言っているのは、ゴジラ、ラドン、モスラ、ガメラ、ギャオス、大魔神で、キャラクタービジネス以前の作。
だからそのまま当て嵌められませんが、
>「しょせん子供番組なのだから何をしても許される」という言い訳が、常に付随していました。
これでしょう、これ。
人間は『羅生門』を観て分かる通り自分に都合が悪い事を言わない、書かないものです。
本多猪四郎、田中友幸、永田雅一、湯浅憲明、高橋二三等は特撮怪獣物を子供向けのゲテモノ映画だと小馬鹿にし、真面に作ろうとしなかった、
と思えて仕方ありません。
その一端がこの本から窺えました。
1-2:
こういう自らの失敗を書く英明氏、円谷プロを離れているためもあるでしょうが、偉い人です。
2:
脚本の悪さ以外の事を。
2-1:
円谷プロは不運や失敗が多いですが、
金庫番の優秀な番頭がいなかったのが不運。
まず、ゴジラやモスラの映画二次使用に対し東宝が著作権料を払わなかったのは痛かった。
(→P.26)
ウルトラシリーズは『ウルトラマン』の第一話から赤字(@_@)。
TBSは1本あたり550万を払ったけど、実際には約1,000万掛かった。
(→P.33)
また、東宝の出資を受け功罪色々有りますが、どんぶり勘定でもまがりなりにもやっていけたのは、東宝の援助と経理監査のおかげ。
それを円谷皐が株を買戻し、経理が甘くなったのは大変な痛手。
(→P.91)
おかげで会社を私物化。
(→P.147~152)
2-2:
その他、いい事が書いてありません、この本。
3:
最後に。
>祖父(筆者注→円谷英二)にとっては、映画もテレビ番組も、お金を儲けるためのビジネスではなく、夢を映像化する芸術作品そのものでした。
(→P.23)
遊びや趣味で金を稼ぐ事の難しさ。
作品作りに関しては、予算と時間以外に完璧に出来るでしょう。
しかし、世俗的な金、権利問題等で精力を奪われる芸術家。
さらにウルトラシリーズの様に大金を生む可能性が有る物は、それを奪おうとする手とも戦わねばならぬ芸術家。
満足いく特撮怪獣物が出来なくて当然。
ミニチュア特撮の将来は、無い、でしょう。
タグ 円谷英二 ウルトラマン
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