その2
1:
青=liberte
自由、解放の象徴
この映画、全編に亘り光の基調色が青。
最初にカットから青。
車の下回りのカット。
車が自由へと運ぶと暗示してます。
と言う訳で、映画の進行と共に「青」と色を見て行きましょう。
1-1:
オリヴィエ(ブノワ・レジャン)が持っている楽譜を入れるポートフォリオの色が青。
オリヴィエが持っている楽譜がジュリーを解放すると暗示。
1-2:
ジュリーが夫パトリス(ユーグ・ケステル)の楽譜を捨てた後、自宅で食べるキャンディーの色を青にしています。
は~ん、夫の物を捨て夫の事を忘れようとしてますな。
そういう演出だね。
1-3:
ジュリーがオリヴィエを呼び、まずはキスしようとするカット。
外は雨で青。
ジュリー:青の光
オリヴィエ:赤の光
ん?
赤はfraterniteの象徴。
博愛ですから、オリヴィエはジュリーを愛してるというより夫を失った心の傷を癒そうとしてますな、この光の使い具合から解釈すると。
1-4:
その翌朝、やっちゃった後、ジュリーの着る物が変わります。
それまでは当然ながら裳を表す黒尽くめ。
から
黒のショートコートとセーター、
そして、
ブルージーンズ。
黒尽くしが終わったと言う事は、夫と娘を失った最初のショックから立ち直りました。
でも、何か自由を、何かからの解放を求めているのを表すブルージーンズ。
1-5:
ジュリーがアパートを探しに行った不動産屋。
そこの係員の後に並んだファイルが青。
何かから自由になるために住む所を変えようとしているジュリー。
1-6:
新たに引っ越しした部屋はベージュ基調。
つまり、「白」系の色。
白=egalite
平等
誰にでも等しく機会が与えられる新しい門出、って事だね。
そこでジュリーが最初にした事は今迄住んでいた家に飾ってあった青と白の吊り下げ型飾り物を吊るす事。
ここで私も等しく自由になりたい、解放されたいとの願いでしょう。
1-7:
4回有るプールのシークウェンス。
ここは全体に青。
自由になりたいけど、行ったり来たりするだけの場所ですな、プールは。
ジュリーの迷い、悩みの象徴。
文字通りの堂々巡りの象徴。
1回目、ムフタール通りに引っ越し後、カフェで大道のリコーダ演奏を聞いた後
2回目、アントワーヌが会いに来て、事故現場で拾った十字架のネックレスを返す。でもそれをアントワーヌにあげた後
3回目、ネズミ退治に猫を借りた後、リュシール(シャルロット・ヴェリ)がやって来る。ジュリーの話を聞いたリュシールはネズミ退治に行く。
4回目、夫パトリスの元恋人サンドリーヌ(フロランス・ペルネル)と会った次。
悩みは夫が残した協奏曲?。
この件について心を決めかねているんですな。
水は旅立ち、出帆ではなく、このシークウェンスでは羊水の方と捉えると巧く当てはまります。
新たな旅立ち。
誕生、制作。
水からも夫が残した協奏曲を完成させる事を悩んでる捉えられます。
特に2回目、ジュリーが胎児の様に浮かびます。
1-7-1:
3回目、ネズミ退治にリュシールが行くと白い水着を着た少女達がプールへ次々と飛び込みます。
少女達の両腕には橙色(?赤かも)の浮き。
仔ネズミと対になってますな。
しかも、白=egalite=平等。
自分がおそらく悩んでいる所に次々と飛び込んでくる…
この前のカットはリュシールがジュリーの涙を言い当てます。
また、このシークウェンスの前はオリヴィエの元に楽譜が届きます。
子供達→夫パトリスが残した未完成の協奏曲
白い水着→その協奏曲を完成させる決心をさせる機会の到来
迷った時に誰にでも訪れる機会がジュリーの元にもやって来たのです。
こう捉えると巧く繋がって行きます。
1―7―2:
4回目、夫パトリスの元恋人サンドリーヌと会った後。
泳ぐカットは無く、飛び込み、潜り、突如として浮き上がります。
熟慮し(→潜水)、決心した(→急浮上)、と捉えていいでしょう。
1-8:
階下の女(実は娼婦)リュシール(シャルロット・ヴェリ)の着ている物が青。
最初に画面に現れた時、青のコートを着て「自由」な女であると知らせてます。
それに玄関の扉の色も濃紺。
1-9:
その後リュシールがお礼に持って来た花が白いデイジー。
平等、2人は対等の関係になった、つまり友達になったと伝える演出。
そして、リュシールが「捨てられるタイプじゃないわ」と言った後、
カットが変わり「しゃべりすぎね」
照明が赤系に変わります。
赤はfraternite=博愛の象徴ですから、リュシールが思い遣りを表してます。
照明でも友達になった事を表してます。
1-10:
リュシールが仕事場に父親が来たので、ジュリーに相談する時、
リュシールに赤い照明。
レイジと同じく愛の大安売りをしているリュシールか(笑)。
こういう博愛も有るって事ね。
そしてリュシールの仕事場に溢れる色が青赤白。
自由平等博愛
まぁフランスらしい仕事ですこと(笑)。
1-10-1:
ここで映るTV映像が青。
報道の自由。
だから女性ジャーナリストは、ジュリーに出演依頼したとか自由な(笑)事を言ってます。
また、ここで初めて夫の浮気相手をTV放送で観ます。
この時、ジュリーの顔の半分に赤い光。
赤い=fraternite=博愛ですから、広く愛する、大衆も愛する、でしょう。
、と言う事は、夫パトリスの残した未完の協奏曲を完成させ発表するか決めかねていますが、
そこへズケズケと入って来た浮気相手。
この女性が決心の決めてになりそうです。
観客は最初から観ててオリヴィエが浮気相手の写真を持ってるのを知ってますが、
ジュリーはまだ知らんのです。
だからまだ決心がつきません。
1-11:
ジュリーが夫の元恋人で弁護士見習いのサンドリーヌ(フロランス・ペルネル)と会う場面。
二人共顔半分が影の中。
へぇ~、二人共大人じゃん。
気持ちを抑え感情的にならない。
台詞以外に言いたい事は山ほど有るのを示す顔の影。
1-12:
オリヴィエとジュリーがパトリスの協奏曲を仕上げてる時、楽譜を指で辿ります。
この楽譜を青くしています。
解放への願いですね。
そして映像はピントが外れます。
そう、地上を離れる天上的音楽と言う事。
地上のあらゆるものから解放される音楽、って言う演出。
(次のシークウェンスへ行くと夫の恋人だったサンドリーヌの子供に家を譲ります(@_@)
オマケにここではサンドリーヌは黒を着ていません。
もう気持ちの整理がついているって事。
リュシールの仕事場でのシークウェンスが有るから、当然。
「自分には夫が残した協奏曲が有るからそれで十分」。)
1-13:
ジュリーが楽譜を書き完成する時のペンのインクの色が青。
ペン自体も青。
音符一つ一つの解放してくれと祈りを込めて。
また、ここで大きな色の変化が有ります。
ジュリーの着る物が変わります。
黒のセーター系ばかりでしたが、青系のチェックのシャツになります。
第二段階です。
夫の死を乗り越える第一歩を踏み出しました。
でも上に着てるニットジャケはまだ黒だけどね。
1-14:
そして、新約聖書コリント前書第13章のシークウェンスへと続きます。
最初は例の吊り下げる飾りを使い青を強調。
愛は寛容、耐え忍び、すべてを信じる。
最後に残るのは信仰、希望、愛。
この三つの中で最も尊いものは“愛”。
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