★簡単な紹介
前期:2015年3月28日(土)~4月19日(日)
後期:4月21日(火)~5月10日(日)
東京都江戸東京博物館
HP→
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/s-exhibition/project/3811/%e7%89%b9%e5%88%a5%e5%85%ac%e9%96%8b%e3%80%80%e5%ba%83%e9%87%8d%e3%80%8c%e5%90%8d%e6%89%80%e6%b1%9f%e6%88%b8%e7%99%be%e6%99%af%e3%80%8d%e5%b1%95/1:
行ってきました、後期展も。
今回は祝日。
だもんで、午前10:45頃到着。
今回も3回吹き曝し入場券売り場を目指す。
あの広い階段に人影無し。
「らっき~」と喜んだのも束の間。
何と、前回土曜日正午前より全然多い人間が並んでいる(@_@)。
その数、ざっと見、300人(@_@)。
ウォークマンでビートルズを聞きながら岩波文庫版『孟子』上巻を読みながら、
大人しく並び、待ちました。
ありがたい事に、吹き抜ける風が初夏一歩手前で非常に心地良かった(^.^)。
これが8月とかだったらエライ事ですよ。
20分位並んで買えました。
休日なんで働いてる時と違い時間を気にせず。
30分くらいだったかもしれません。
この入場券購入行列、帰り午後1:00頃は、何と、来た時より少なく、ざっと見、100人程。
何だ、こんなんだったらもっとゆっくり来ればよかった、
と思うのもちゃんと早く来たから(笑)。
2:
作品
2-1:
近像型
さて、今回は何点あるか、絵を見ながら、また「近像型」と呼ぶにはびみょーな物もあるので考えながら、数えてみました。
個人的な判断なのでアダチ版画だとか、渡邊美術木版画舗とかの専門家の皆様方とは違うかもしれません。
悪しからず。
次の19点。
展示番号21:芝愛宕山
展示番号35:隅田川水神の森真崎
展示番号37:墨田川橋場の渡かわら竈(=かま)
展示番号39:吾妻橋金龍山遠望
展示番号43:日本橋江戸ばし
展示番号45:八つ見の橋
展示番号51:糀町一丁目山王まつりねり込
展示番号55:佃しま住吉の祭り
展示番号61:浅草川首尾の松御厩河岸(=まつのおんまやがし)
展示番号62:綾瀬川鐘か淵
展示番号65:亀戸天神境内
展示番号73:市中繁栄七夕祭
展示番号75:
神田紺屋町展示番号77:鉄砲洲稲荷橋湊神社
展示番号81:高輪うしまち
展示番号89:上野山内月のまつ
展示番号99:浅草金龍山
展示番号101:浅草田甫酉の町詣
展示番号115:高田の馬場
2-1-1:
近像型と言っても、ぶっ飛んだ「
広重型」と言う物ばかりでなく、大人しい(笑)、真面な(笑)作品も在ります。
展示番号35:隅田川水神の森真崎
(参考→
http://www.ndl.go.jp/landmarks/details/detail323.html)
展示番号99:浅草金龍山
(参考→
http://www.ndl.go.jp/landmarks/details/detail279.html?sights=sensoji)
遠近法に挑戦する様なマネばかりしている訳ではないのです。
「隅田川水神の森真崎」は桜の花の美しさ、視線の邪魔をする物が無く広がる風景の気持ち良さを表し、
「浅草金龍山」は雪景色の美しさ、雪の静謐さ、そして鳥居自体ではなく、鳥居に掛かる大提灯で神域を表し同時に神聖さも表しています。
厳かな雰囲気、人々の金龍山(=浅草寺)に対する思いが大変よく伝わってきます。
2-1-2:
驚天動地の才能躍如
私の様に絵画の「いろは」を知ってるとその驚き倍増、倍増、倍増、倍増、倍増(笑)。
虚を突かれ、心が一瞬消し飛ぶのであります。
プロの絵描きでなくて良かったと安堵のため息が何回も出ます(笑)。
こんな絵見せられちゃ、描き続けられんゼ。
19世紀末から20世紀初頭のパリのサロンの重鎮達は
広重や北斎の傑作を見てどうしたんでしょう?
2-1-2-1:
展示番号21:芝愛宕山
(参考→
http://www.ndl.go.jp/landmarks/details/detail143.html)
これ、絵の主題は神事を行う神職が持ってる杓文字か(笑)?
厳島神社のつもり(笑)?
オマケにこの杓文字で絵を縦に二分、どっか~ん(笑)。
2-1-2-2:
展示番号37:墨田川橋場の渡かわら竈(=かま)
(参考→
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1312273)
だいたい立ち上る煙を主題にしようとした絵なんて、他にある(笑)?
大気汚染反対、脱硫装置促進のポスターなんじゃないの、これ(笑)?
広重は当時のロンドンの石炭の排煙の被害を知っていたのか(笑)?
2-1-2-3:
展示番号43:日本橋江戸ばし
(参考→
http://www.ndl.go.jp/landmarks/details/detail084.html)
これはちょっと面倒臭いので正確な割合を計ってませんが、橋の欄干で画面の三分の一を隠すとは何なんだ(笑)?
2-1-2-4:
展示番号55:佃しま住吉の祭り
(参考→
http://www.ndl.go.jp/landmarks/details/detail060.html?sights=tsukudajima)
この絵は題名から分かる通り祭を主題にした絵で、どう考えても中央の神輿と担ぐ人々が主題のはずなんですが、
なんでその神輿と人々を幟でぶった切り隠すんでしょう(笑)?
オマケにこの絵でも幟で絵を縦に二分、どっか~ん(笑)。
2-1-2-5:
展示番号77:鉄砲洲稲荷橋湊神社
(参考→
http://www.ndl.go.jp/landmarks/details/detail065.html)
竹竿を二本も立てて何をしたいんだ(笑)?
絵の中ではこういう物は強力で、画面左の竹竿は富士山の稜線をぶった切っています。
そこで富士山の存在感をかなり弱め、竹竿と竿を支える二本の綱で富士山の代わりの「富士山」型を作ってます。
その「富士山型」竹竿の根本は隅田川、そこに浮かぶは米俵を満載した船、船。
そして河岸には蔵、蔵、蔵。
ほ~、ここまで見ると分かってきました。
この絵、富士山を眺め広大な江戸の町並みを楽しむ絵ではありません。
設定された季節は秋ですから、五穀豊穣、人々繁栄を願った絵なんです。
2-1-2-6:
展示番号81:高輪うしまち
(参考→
http://www.ndl.go.jp/landmarks/details/detail179.html)
「どひゃぁ~」な絵(笑)。
こんな単純な風景画の中に大八車を入れ見る人々の意表を突く絵。
大八車の車輪は絵の中で強力この上なく、二匹の子豚の如き子犬の存在感を見事に半減(笑)、
普通の子犬にしている、つもりか(笑)?
いや、どう見ても子豚、ミニ豚じゃないか(笑)。
まぁ、そんな戯言を考えさせる程この大八車は強力なんです。
画面左手の虹はこの大八車を画面上でバランスを取るための脇役にすぎません。
2-1-2-7:
展示番号89:上野山内月のまつ
(参考→
http://www.bestweb-link.net/PD-Museum-of-Art/ukiyoe/ukiyoe/edo100/No.089.jpg)
こんな松、あるはずねーだろー、
と思ったのは19世紀末の白人も現代の私CYPRESSも同じ。
し、か、し、だ皆の衆。
あるんだ(@_@)。
上野経済新聞の記事↓
http://ueno.keizai.biz/headline/1241/何もゆー事はありません(笑)。
2-2:
天才の凄味。
天才の恐ろしい程の能力。
近像型で数々のぶっ飛んだ才能を見せた歌川
広重。
そのもう一つの才能の面を示した一枚が在りました。
それもぶっ飛んだ絵を何枚も示した連作の中に入れました。
広重の伝記や研究書を読んでないので確かなことは分かりませんが、
広重自身は間違い無く近像型の画面構成、構図は絵を壊す事を知っていたに違いありません。
そして自身には絵を壊さずに近像型の作品を作れる才能がある事も知っていたに違いありません。
それを示した、実証した作品が、
展示番号75:
神田紺屋町(参考→
http://www.ndl.go.jp/landmarks/details/detail023.html?artists=utagawa-hiroshige-1)
近景の藍染した浴衣生地を何枚も描き、他の近像型に見られる中景と遠景の殆どを見せず殺しています。
特に画面右半分は完全に消し、近景の浴衣生地を強調し、
左半分は小さく描き無理なく遠近感を出しています。
左半分から進む視線の流れは右半分の浴衣生地のおかげで遮られ画面の外へ流れず、「ん?何だ」と画面内に留まり、
浴衣生地の垂直線に沿って動くとそこには版元魚栄(=ととえい)の一文字「魚」。
「魚」の行列。
版元の宣伝を無意識に読まされているのです(笑)。
近像型で絵を壊さない秘訣は、強調した近景の背後に中景と遠景を描かない。
ここまででも脱帽ですが、オマケにその近景に版元の宣伝までする頭の働き具合。
圧倒的な実力、
天才とはこういう能力を言うのです(溜息)。
2-3:
気になる作品。
2-3-1:
展示番号33:四つ木通用水引き船
(参考→
http://www.bestweb-link.net/PD-Museum-of-Art/ukiyoe/ukiyoe/edo100/No.033.jpg)
この用水、解説のよると絵と違い真っ直ぐだったとか。
どこが気になるかと言うと、画面左側ほぼ中央、右に向かって三角形の濃い墨の部分。
かなりおかしい。
この濃い墨の三角形が用水の曲がり具合と一致してます。
はは~ん、分かりましたゾ。
画面の中の垂直線や水平線は動きが無いんです。
単なる直線でも斜めにすると動きが生まれるように人間の目には見え、関心を捉えるものなのです。
だから写真で「物撮り」をする時、物を斜めに置いて撮ります。
特に広告では、まず人に見てもらわなければ何事も始まらないので絶対動きを感じさせる構図や構成にします。
この「四つ木通用水引き船」では、用水を蛇行させ絵に動きを与えました。
更に絵に「関心獲得力」を加えるために、今度は明度に強弱を加えました。
それが用水右岸の薄い黄色の道と画面左側の濃い墨の「三角形」です。
「三角形」から違和感、わざとらしさを減らすために形を用水に合わせ三角形にしたんです。
ん~、だからと言って巧いとは言えん。
かなり強引。
広重でも苦し紛れでこういう事をするんだ(笑)。
2-3-2:
展示番号59:両国橋大川ばた
(参考→
http://www.ndl.go.jp/landmarks/details/detail117.html)
これ、広重とは思えない色使いをしています。
それは、お馴染み、べろ藍。
重たく強い色なので大変注意深く広重は使っています。
例えば、川を描く場合、
絵の一番下に入れるか、一番下にならなくても河原等を描き重さを分散させ感じさせないようにする、
などしています。
ところがこの絵では大川の川岸沿いに入れているのですが、
画面上、その下に両国の露店とそこの集まる人々があり、完全に押し潰しています。
これはおかしい。
実に変です。
色のバランス、特に明度のバランスが悪く、絵を壊しています。
広重は何も考えずこんな色使いをするはずありません。
では、広重の意図を考えましょう。
大川に負けぬ両国の露店と江戸の人々でしょうね。
現代の隅田川と当時の大川の恐ろしさは違うのです。
気象衛星と天気予報の無かった時代ですから、川を初め自然は遥かに恐ろしかった。
こう考えると広重の意図も納得。
2-3-3:
展示番号58:
大はしあたけの夕立(参考→
http://www.bestweb-link.net/PD-Museum-of-Art/ukiyoe/ukiyoe/edo100/No.052.jpg)
前期後期共に展示されたのは、他に「亀戸梅屋鋪」、「亀戸天神境内」位。
改めて、と言うかもう一度見ると、やはり、墨線の細さと鋭さは、「
名所江戸百景」の中でも随一。
木版ではなく、一枚一枚ペンで描いたかの様であります。
彫師と摺師の腕前に感嘆。
やはり傑作です。
3:
まとめ
やはり素晴らしい(笑)。
まぁ、当然か(笑)。
それでも大したことない絵も少なくはありません。
広重の絵心を刺激しない風景と題材だったのでしょう。
おそらく、人の「匂い」や「存在感」を感じない風景だったのではないでしょうか?
単なる田園風景、そんなもんに関心が無かったのかもしれません。
それはそういう風景を見慣れた当時の人だったからで、逆に現代の我々が退屈な田園風景を見るといかに心休まるか、
視線を遮る悪く目立つ人工物ない風景がいかに目に心地良いか、感動しきりだったかもしれません。
この点のことは、
石川英輔が書いた『
大江戸神仙伝』初め『大江戸シリーズ』で主人公速水洋介が何度も経験しています。
また、花見を初め物見遊山を題材にしても、どうも行楽や娯楽とは見えません。
それぞれの行楽の名所でも人出の少なさが我々現代人には、残念ながら不自然に写ってしまします。
まぁ、幕末の江戸市中の人口は100万人程度だったらしく、現在の東京都だけでも1,300万人もいるんで当然と言えば当然。
逆に、速水洋介が体験する様に行楽地でもない極普通の市街地、田園でも美しかったのでしょう。
4:
オマケ
常設展E3-1
ここに広重の「亀戸梅屋鋪」の版木と摺の見本があります。
この絵は15回摺ったそうな。
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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術