安藤健二著
2006年3月21日初版発行
太田出版
1:
面白い。
よくあるドラマとは違い、謎が解明されていません。
それでも、警察系のドラマでもお馴染みの調査なんですが、
丹念に、真面目に調査しているのが大変よく分かり、この点が非常に好ましい。
最後には事件や問題が解決される警察系ドラマと違い解決されませんが、
事件解決の爽快感が無い代わりに、大変面白い。
改めて
『事実は小説より奇なり』
を実感しました。
世の中に出来事は人間の、特に脚本家の貧相な想像力が到底敵わぬ興奮と刺激と面白さに満ちているのです。
2:
今回のお題は以下の通りで、封印された理由か原因が解明されたのは第1章の『キャンディ キャンディ』のみ。
第1章 引き裂かれたリボン(『キャンディ キャンディ』)
第2章 悲しい熱帯(『ジャングル黒べえ』)
第3章 怨霊となったオバケ(『オバケのQ太郎』)
第4章 ウルトラマンとガンダムの間に(『サンダーマスク』)
3:
第1章 『キャンディ キャンディ』
この件の粗筋は、
原因はまず、原作者と作画者(→こんな日本語有る?マンガを描く人のこと)の確執。
もう一つは、日本のマンガに多い、原作者と作画者を使って週刊誌様に量産せざるを得ない現状が持つ問題が原因の一つ。
原作:いがらしゆみこ
作画:水木杏子
一言で言うと絵を描いていた水木が売れなくなり、いがらしに無断で『キャンディ キャンディ』の著作権ビジネスを始めたから。
いがらしの方はマンガ原作をやめ、児童文学の作家となり大金は稼がないものの地道に活動し、手堅く稼いでいた。
いがらしが「契約違反」で水木を提訴。
今度は水木はいがらしを「水木には著作権が無い」と反訴。
水木は、東京地裁、最高裁で棄却、敗訴が確定。
3-1:
マンガとかアニメに興味が無いんで、「ふ~ん、そうなんだ」位しか書けませんが…
水木は
安藤健二からのインタビューの依頼を断ったので、実際の所、やはり詳細は不明。
3-2:
現在も状況は変わっていません。
参考Wiki→
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A34:
第2章 悲しい熱帯(『ジャングル黒べえ』)
藤子・F・不二雄作
「黒人差別をなくす会」の抗議を受けて回収、絶版になった様だが、
抗議した側、
安藤健二の取材を受けず、不明。
された側、過去の事で不明。
4-1:
藤子不二雄の『オバケのQ太郎』の一編『国際オバケ連合』は実際に1989年7月に抗議を受けたのですが、
藤子・F・不二雄作『ジャングル黒べぇ』は不明。
筆者
安藤健二が取材し辿り着いた意見は
p.114から
>出版界は70年代から続いた部落解放同盟の激しい糾弾運動におびえていた。
部落解放運動の影響を受けて出来た「なくす会」に、そのときの幻影を見てしまったのも無理も無いことだろう。
p.142から
>逆を言えば、どんな表現だって感じる人によっては差別になりうる。
絶対的な基準など、どこにもないのだ。
少なくとも出崎(ブログ主注:アニメ版『ジャングル黒べぇ』の監督出崎統の事)をはじめとした制作者サイドは「差別の意図はなかった」と証言している。
であれば、出版社サイドも「差別表現だ」と言う抗議を受けたなら、きちんと反論するなり、作品を封印するにしても読者に「こういう理由で差別にあたると判断した」を釈明すべきだったのではないか。
p.143から
>『ジャングル黒べぇ』は、80年代末の黒人表現自粛の波の哀れな犠牲者だったように思えてならない。
いくら部落解放同盟などの反差別表現の運動が盛んだった時期とはいえ、どこが差別なのかの議論すらされずに、製作元が作品を抹殺してしまった。
あまりにも悲しい結末だ。
問題があったのは作品ではなく、“糾弾を受けることへの恐怖”という、出版界に芽生えた心の闇ではないだろうか。
70年代の文明批判を熱帯のジャングルへの憧れは、「黒人差別」のレッテルを貼られて封印された。
4-2:
ふ~ん、なるほどね。
ハッキリとした事は不明ですが、この意見は説得力が強い。
4-3:
「なくす会」は手塚治虫にも抗議(p.105)。
>中でもターゲットにされた作品の数は、『手塚治虫漫画全集』を出している講談社が飛び抜けており、名作と名高い『ジャングル大帝』、『紙の砦』、『やけっぱちのマリア』など21点にも及んだ。
手塚プロは8社から出されている作品のうち、1コマでも黒人が描かれている百数十冊の出荷を一時停止した。
『漫画全集』は既刊300巻すべてが対象となった。
この時、講談社の役員は回収するしかないだろうと言いましたが、当時の講談社法務部長だった西尾秀和氏が反対し注釈を付け再出荷するようにしたとのこと。
西尾氏の一言が無ければ手塚治虫の漫画が地上から消えていたかもしれません。
4-4:
2013年12月27日(金)現在、
『ジャングル黒べえ』は発行されています。
Amazonでも売ってます。
参考Wiki→
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%E9%BB%92%E3%81%B9%E3%81%885:
第3章 怨霊となったオバケ(『オバケのQ太郎』)
藤子不二雄作
p.174から
>実は藤子作品で封印されているのは『オバQ』だけではない。
藤子Fと藤子Aによる合作とされた作品は、現在、ほとんど全てが絶版状態なのだ。
p.191から
>コンビ解消前に、漫画家本人たち以外の人間に生まれた感情的な問題が、現在まで合作が出ない理由だというのだ。
5-1:
へぇ~、そうなんだ、
としか書けません。
やれやれ。
5-2:
これも2013年12月27日(金)現在、復刊されています。
参考Wiki→
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%90%E3%82%B1%E3%81%AEQ%E5%A4%AA%E9%83%8E6:
第4章 ウルトラマンとガンダムの間に(『サンダーマスク』)
参考Wiki→
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%AF6-1:
製作費を出したのが、東洋エージェンシー、実際に作ったのはひろみプロ。
当時の社長だった斉藤ひろみの話。
p.232から
>「これは大変おかしなことがありましてね。
結局、企画制作という形では、ひろみプロがやったんですよ。
でも、日本テレビで放送が終わった後、代理店の東洋エージェンシーが『すべての権利は自分たちのところにある』と言ってきて、否も応もなくフィルムを持っていってしまったんです。
(ため息をつくような声で)力関係ですね…。
私どもは本当に小さな会社でしたから…。
東洋エージェンシーの言い分は『制作費を払ったのだから、海外売りを含めた全権利がある』ということでした。
こちらにはそういう契約をした覚えはなかったんですけどね」
1972年の作品で、フィルムと放映権を盗まれたも同然。
当時無かった、ヴィデオ、衛星放送、DVD、BD、ケーブルTV、地デジ、等々が現在存在し、
たとえ当時正式に契約し権利を譲渡していても、
これら新たな放送媒体や視聴媒体に関する権利を東洋エージェンシーが持ってるとは、まず、言えそうもないとのこと。
…なるほど、これでは放送出来ないし、DVDも出せんね。
6-2:
東洋エージェンシーは1977年に創通エージェンシーと改名し、1979年に『機動戦士ガンダム』を製作。
現在シリーズ関連商品の年間市場は1,000億円を越してるとか。
『ガンダム』の放送には、創通、サンライズ、名古屋テレビの間でロイヤリティーに関する契約が有るが、
サンライズは今も名古屋テレビに払っているが、創通は払ってないらしい。
齋藤ひとみは「もう幻でいい」と言い、名古屋テレビの方は「少年たちがガンダムに対して夢を抱いているのに、
こういう裏側のドロドロが表に出てくるのはよくないと思い、今も話し合いを続けている」そうだ。
7:
感想
戦う事を好まない日本人の性格が大変よく表れています。
打たれ弱い。
間違った事をしてないのに、反論しません。
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