パスワードスプレー攻撃とは|サイバーセキュリティ.com

パスワードスプレー攻撃|サイバーセキュリティ.com

パスワードスプレー攻撃

パスワードスプレー攻撃は、少数の一般的なパスワードを複数のユーザーアカウントに対して広範囲に試すことによって、不正ログインを試みる攻撃手法です。この手法は「ブルートフォース攻撃」の一種で、アカウントロック機能や検知システムに引っかかりにくくするために、少数のパスワードを長時間かけて広範囲にわたって試す特徴があります。

パスワードスプレー攻撃は、多くのユーザーが設定しがちな「123456」「password」「qwerty」といった単純で一般的なパスワードを対象とし、少ない試行でアカウントロックなどのセキュリティ対策を回避します。特に、企業や組織が提供するオンラインサービスやクラウドアプリケーションのアカウントが狙われることが多く、サイバー攻撃者が組織内のアカウントに不正アクセスし、情報を窃取することを目的としています。

パスワードスプレー攻撃の手法と流れ

パスワードスプレー攻撃の一般的な手法と流れは以下の通りです。

  1. ターゲットの選定 攻撃者は、対象とする企業やサービスのオンラインアカウントのリストやユーザー名を収集します。この情報は、ソーシャルメディアや公開されている情報などからも入手可能で、ダークウェブやサイバー犯罪マーケットでも取引されることがあります。
  2. よく使われるパスワードをリスト化 攻撃者は、ユーザーがよく設定する一般的なパスワードをリスト化します。多くの場合、簡単で短いパスワードが使われます。こうしたパスワードリストは、「123456」「password」「welcome」など一般的で簡単に予測されるものです。
  3. ゆっくりとしたログイン試行 攻撃者は、収集したパスワードを使って、時間をかけて広範囲にアカウントへのログインを試みます。一度に大量の試行を行わず、時間を置いて少数のパスワードを試すため、アカウントロックやセキュリティアラートに引っかかりにくくなります。
  4. 成功したアカウントへのアクセス 攻撃者は、一致するパスワードが見つかったアカウントにアクセスし、情報の窃取やスパムの送信、他のシステムへのアクセス権取得を行います。また、侵入したアカウント情報をもとに、さらに深い不正アクセスやサイバー攻撃が実施されることがあります。

パスワードスプレー攻撃の特徴とリスク

パスワードスプレー攻撃には、以下のような特徴とリスクがあります。

  1. アカウントロックを回避する手法 攻撃者は一度に多くのアカウントにアクセスする代わりに、少ない回数の試行を多数のアカウントに分散して行うことで、アカウントロック機能に引っかかりにくくしています。そのため、ログイン失敗によるアラートを回避しやすくなります。
  2. 多くのユーザーに影響するリスク 一般的なパスワードが使用されている場合、多くのユーザーが一度に影響を受ける可能性があります。組織内の従業員が使うアカウントや、Webサービスのユーザーアカウントが狙われやすく、企業全体で広範な被害が生じることもあります。
  3. 低コストで高効率な攻撃 パスワードスプレー攻撃は、少数の一般的なパスワードで大規模なアカウントに不正アクセスを試みるため、ブルートフォース攻撃に比べてコストが低く、効率的です。特に企業のメールやクラウドサービスを標的にすると、企業内の情報を容易に収集できるため、攻撃者にとって効果的です。
  4. 多要素認証(MFA)を回避できる場合がある 一部のシステムやサービスでは、多要素認証(MFA)が導入されていないアカウントがあるため、パスワードスプレー攻撃が成功しやすくなります。また、MFAが設定されていても、特定の場面ではMFAが適用されないケースが存在し、攻撃に利用されることがあります。

パスワードスプレー攻撃への対策

パスワードスプレー攻撃に対抗するためには、以下のような対策が有効です。

1. 多要素認証(MFA)の導入

多要素認証(MFA)を利用することで、パスワードのみでログインすることを防ぎます。MFAによって追加の認証要素が必要になるため、パスワードが漏洩しても攻撃者はアクセスできなくなります。特にメールやクラウドアカウントにはMFAの導入が推奨されます。

2. 強力なパスワードポリシーの採用

組織全体で強力なパスワードポリシーを設定し、簡単に推測できるパスワードの使用を禁止することが重要です。パスワードの長さや複雑さの要件を定め、リストに含まれるような単純なパスワードの使用を制限します。

3. アカウントロックと通知機能の設定

一定回数のログイン失敗でアカウントをロックする機能を設定し、不正ログイン試行の検知やアラート機能を導入することで、異常なアクセスを素早く察知し対応できます。また、異常なログイン試行があれば、本人確認を通じてアカウントを保護します。

4. 定期的なログ監視とアラート

ログイン試行の失敗や異常なIPアドレスからのアクセスがあった場合の監視や、アラートの設定を行います。定期的なログの監査により、攻撃の兆候や異常な活動が発見され次第、迅速に対応することが可能です。

5. シングルサインオン(SSO)の活用

SSO(シングルサインオン)を導入することで、各アプリケーションでの認証情報を一元管理し、セキュリティポリシーの一貫性を保つことができます。また、SSOとMFAを組み合わせることで、全体的なセキュリティが強化されます。

6. ユーザー教育の実施

パスワードの使い回しのリスクや、簡単なパスワードの使用を避けることの重要性について、ユーザー教育を行います。社員やユーザーが日常的に適切なパスワードを設定するよう意識を高めることが、攻撃の防止に繋がります。

まとめ

パスワードスプレー攻撃は、少数の一般的なパスワードを多くのユーザーに対して広範囲に試す攻撃手法で、従来のブルートフォース攻撃とは異なり、時間をかけてじわじわと侵入を試みるのが特徴です。多くのユーザーが設定しがちな単純なパスワードを悪用するため、企業のシステムやオンラインサービスのアカウントが狙われやすく、広範な被害をもたらす恐れがあります。

対策としては、多要素認証の導入や強力なパスワードポリシーの策定、異常なアクセスの監視が有効です。また、ユーザー教育を通じて、強固で推測されにくいパスワードを使用するよう意識付けを行うことも重要です。パスワードスプレー攻撃への理解と予防策を講じることで、組織や個人のアカウントを不正アクセスから保護することができます。


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