次世代ファイアウォールとは|サイバーセキュリティ.com

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次世代ファイアウォール

次世代ファイアウォール(Next-Generation Firewall、NGFW)とは、従来のファイアウォール機能に加えて、アプリケーション制御や脅威の防御、ユーザー認証などの高度な機能を備えたファイアウォールです。従来のファイアウォールは主に「IPアドレス」「ポート番号」に基づいた通信制御を行いますが、次世代ファイアウォールはアプリケーションレベルでの通信内容を監視し、精度の高いセキュリティ対策を可能にします。

次世代ファイアウォールは、標的型攻撃やゼロデイ攻撃など、従来のファイアウォールでは検出が困難だった高度なサイバー攻撃にも対応するため、企業や組織のネットワーク防御において重要な役割を果たします。

次世代ファイアウォールの主な機能

次世代ファイアウォールは、従来のファイアウォールに加えて以下のような高度な機能を備えています。

1. アプリケーション識別と制御

次世代ファイアウォールは、アプリケーションレベルでの識別と制御が可能です。これにより、通信のポートやプロトコルに関係なく、特定のアプリケーションやソフトウェアごとに通信を許可・拒否できるようになります。例えば、SNSやファイル共有アプリ、メッセージングツールなどを個別に制御し、業務に必要なアプリのみを利用可能にすることで、業務効率やセキュリティの向上が図れます。

2. 脅威防御機能(IPS/IDS)

次世代ファイアウォールには、 侵入検知システム(IDS)侵入防止システム(IPS) の機能が組み込まれており、ネットワーク内外からの不正アクセスやマルウェア攻撃、異常なトラフィックを検出・防御します。これにより、既知および未知の脅威をリアルタイムで検出し、セキュリティリスクを低減することができます。

3. ユーザー識別とアクセス制御

次世代ファイアウォールは、ユーザーごとの識別情報に基づいたアクセス制御が可能です。Active Directory(AD)やLDAPなどの認証基盤と連携することで、ユーザーやグループに応じたアクセス制御ポリシーを設定できます。これにより、特定のユーザーにのみ特定アプリケーションへのアクセスを許可するなど、柔軟なセキュリティ設定が実現します。

4. SSL/TLSトラフィックの検査

次世代ファイアウォールは、SSL/TLSで暗号化された通信を復号して検査する機能を持っています。従来のファイアウォールは暗号化通信をスルーしてしまうケースが多く、マルウェアが暗号化されたトラフィック内に潜むリスクがありました。次世代ファイアウォールでは、暗号化通信も検査できるため、より安全なネットワーク保護が可能です。

5. サンドボックス機能

一部の次世代ファイアウォールには、サンドボックス機能が搭載されています。サンドボックスとは、ファイルやプログラムを隔離された仮想環境で実行し、安全性を検証する仕組みです。これにより、未知のファイルや新種のマルウェアが含まれるファイルをテストし、悪意のある挙動が確認されればブロックできます。

次世代ファイアウォールの活用例

1. 業務アプリケーションの使用制限

企業内でのSNSや動画ストリーミング、ファイル共有アプリの利用は、セキュリティ上のリスクや生産性低下につながることがあるため、次世代ファイアウォールで制御できます。業務に不要なアプリの通信を制限し、業務効率を向上させると同時に、セキュリティリスクを低減します。

2. ランサムウェアやマルウェアの防御

次世代ファイアウォールは、侵入検知システムやサンドボックス機能により、ランサムウェアやマルウェアの通信や感染をブロックします。これにより、感染被害の拡大を防ぎ、企業内ネットワークの安全性を保ちます。

3. リモートアクセスの管理

リモートワークの普及により、外部からのネットワークアクセスが増えています。次世代ファイアウォールを使うと、ユーザー認証に基づきアクセス制御が行われ、特定のユーザーに対してのみ社内リソースのアクセスが許可されるため、リモート環境でも安全なアクセスが実現します。

4. SSL/TLSトラフィックの監視

暗号化された通信の中にマルウェアが潜んでいるリスクに対処するため、SSL/TLSトラフィックを検査し、マルウェアや不正な通信の検出を行います。例えば、オンラインバンキングや機密情報の取引において、トラフィックの安全性を確保します。

次世代ファイアウォールの導入によるメリット

1. セキュリティレベルの向上

次世代ファイアウォールにより、アプリケーションやユーザーごとにアクセス制御が可能となり、従来型ファイアウォールよりも精度の高いセキュリティが実現します。脅威防御機能が組み込まれているため、不正アクセスや攻撃の検出率も向上します。

2. 業務効率の改善

特定アプリや通信のみを許可することで、業務に不要な通信が制限され、帯域が効率的に使用できるため、社内ネットワークの通信効率が向上します。また、従業員が業務に専念できる環境が整い、業務効率が上がります。

3. 攻撃からのリアルタイム防御

次世代ファイアウォールは、リアルタイムで脅威を検出・防御するため、ネットワーク内での被害が発生する前に対策が可能です。特に未知の脅威やゼロデイ攻撃に対しても、サンドボックス機能や高度な検査機能により素早く対処できます。

4. 管理の一元化

次世代ファイアウォールには、さまざまなセキュリティ機能が統合されているため、複数のセキュリティ機器を個別に運用する必要がなく、管理作業が効率化されます。これにより、セキュリティ管理のコストと運用負担が軽減されます。

次世代ファイアウォールの課題と注意点

1. 導入コスト

次世代ファイアウォールは従来型ファイアウォールに比べて高機能であるため、導入コストが高い場合があります。また、運用に際して専門知識が必要となるため、技術者の確保やトレーニングも重要です。

2. SSL/TLS検査によるパフォーマンスへの影響

SSL/TLSトラフィックを検査する場合、暗号化通信を一度復号化する処理が発生し、システムパフォーマンスに影響を与える可能性があります。これに対しては、復号化の範囲や対象を限定することで負荷を軽減する対策が求められます。

3. プライバシーへの配慮

SSL/TLS通信の監視において、社員やユーザーのプライバシーに配慮する必要があります。業務に関係のない個人の通信を監視対象としないようにするなど、プライバシーを尊重した設定が重要です。

まとめ

次世代ファイアウォールは、従来のファイアウォールの機能を超えて、アプリケーション制御や高度な脅威防御、ユーザー認証機能を備えた強力なセキュリティ対策ツールです。特に、ゼロデイ攻撃や高度なサイバー攻撃に対して、リアルタイムで検知・防御できるため、企業ネットワークのセキュリティレベルを大幅に向上させます。

ただし、導入にはコストがかかるため、企業のニーズに応じたセキュリティ対策と、ネットワーク負荷やプライバシーにも配慮した適切な運用が求められます。次世代ファイアウォールを導入することで、企業はより安全で信頼性の高いネットワーク環境を構築でき、将来のサイバーリスクに備えることができます。


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