公開鍵暗号とは|サイバーセキュリティ.com

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公開鍵暗号

公開鍵暗号(Public Key Cryptography)とは、暗号化と復号化に異なる鍵を使用する暗号技術の一種です。公開鍵暗号では、公開鍵秘密鍵の2つの鍵ペアが用意され、公開鍵で暗号化したデータは対応する秘密鍵でのみ復号できる仕組みになっています。公開鍵は誰でも入手可能な情報として公開されますが、秘密鍵は厳重に管理され、所有者だけが保持します。これにより、機密性を確保しながら、安全な通信やデータの認証を実現することができます。

公開鍵暗号は、インターネット上での安全な通信、電子署名、デジタル証明書などで広く使われており、特にRSA暗号楕円曲線暗号(ECC)が代表的なアルゴリズムとして知られています。

公開鍵暗号の仕組み

公開鍵暗号の基本的な流れは以下のようになります。

  1. 公開鍵と秘密鍵の生成
    まず、通信を行う各ユーザーが、公開鍵と秘密鍵のペアを生成します。公開鍵は相手に公開し、秘密鍵は厳重に保管します。
  2. 公開鍵による暗号化
    データを送信する側(送信者)は、受信者の公開鍵を使ってデータを暗号化します。公開鍵で暗号化されたデータは、同じ公開鍵では復号できないため、他人が復号して内容を読み取ることはできません。
  3. 秘密鍵による復号化
    受信者は、対応する秘密鍵を使用して暗号化されたデータを復号します。公開鍵と秘密鍵は対になっており、秘密鍵でしか復号できないため、受信者以外はデータの内容を知ることができません。

このように、公開鍵で暗号化し、秘密鍵で復号化する仕組みがあるため、通信の機密性が保たれ、データの漏洩や改ざんを防ぐことができます。

公開鍵暗号の代表的なアルゴリズム

公開鍵暗号には、いくつかの代表的なアルゴリズムが存在します。以下はその一部です。

1. RSA暗号

RSA暗号は、公開鍵暗号の中で最も有名なアルゴリズムのひとつであり、1977年に発表されました。RSAは大きな素数の積を利用することで、秘密鍵を推測することが非常に困難であるため、高い安全性を確保できます。現在もSSL/TLS、電子メールの暗号化、デジタル署名などで広く使われています。

2. 楕円曲線暗号(ECC)

楕円曲線暗号(ECC)は、楕円曲線と呼ばれる数学的構造を使用した暗号方式で、RSAに比べて短い鍵長で同等の安全性が得られるため、処理効率が高い点が特徴です。そのため、スマートフォンやIoTデバイスなど、計算リソースが限られた環境での使用に適しています。

3. DSA(デジタル署名アルゴリズム)

DSA(Digital Signature Algorithm)は、デジタル署名を生成するための公開鍵暗号方式です。主に電子署名を行うために使用され、送信者が自分の秘密鍵で署名し、受信者は送信者の公開鍵で署名を検証することで、データが改ざんされていないことを確認できます。

公開鍵暗号の用途

公開鍵暗号は、インターネットやセキュリティシステムで幅広く利用されています。代表的な用途は次のとおりです。

1. SSL/TLS通信(Webサイトの暗号化)

SSL/TLSは、Webサイトとユーザーのブラウザ間で安全な通信を確立するプロトコルです。公開鍵暗号を使用して最初のセッション鍵(共通鍵)を共有し、以後の通信は共通鍵暗号で行います。これにより、盗聴や改ざんを防ぎ、安全な通信が可能になります。

2. 電子メールの暗号化と署名

電子メールの暗号化と署名に公開鍵暗号が使用されます。送信者が受信者の公開鍵でメールを暗号化し、受信者が自分の秘密鍵で復号することで、メールの内容を保護できます。また、送信者の秘密鍵で署名を付けることで、送信者が正当であることを証明できます。

3. 電子署名とデジタル証明書

公開鍵暗号は電子署名やデジタル証明書の発行にも使用されます。電子署名を使用することで、データが改ざんされていないことを証明でき、デジタル証明書によってWebサイトやメールの送信元の正当性が確認されます。これにより、信頼性の高い取引や通信が可能です。

4. VPN(仮想プライベートネットワーク)

VPNでは、リモートアクセス時に公開鍵暗号を用いた認証と暗号化が行われます。VPN接続の際、公開鍵暗号で暗号化した鍵を用いることで、通信の安全性が確保されます。

公開鍵暗号のメリット

公開鍵暗号には以下のメリットがあります。

  1. 高い安全性
    秘密鍵は他者に公開されることがないため、暗号化した情報が安全に保護されます。さらに、公開鍵は自由に配布できるため、相手と安全に通信を行うための鍵共有が不要です。
  2. デジタル署名による認証
    公開鍵暗号を利用すると、デジタル署名が可能となり、データが改ざんされていないことや、送信者の身元が確認できます。
  3. インフラの簡素化
    受信者側が秘密鍵のみを管理すればよいため、鍵管理が容易になります。公開鍵はどこにでも自由に配布できるため、鍵交換に伴うセキュリティリスクを最小限に抑えることができます。

公開鍵暗号のデメリットと課題

一方で、公開鍵暗号にはいくつかのデメリットや課題もあります。

  1. 処理速度の問題
    公開鍵暗号は、共通鍵暗号に比べて計算処理が複雑であるため、処理速度が遅くなります。大量のデータ暗号化には向かず、実際の通信では共通鍵暗号と組み合わせて使われることが多いです。
  2. 秘密鍵の管理リスク
    秘密鍵が盗まれた場合、データの機密性が失われるため、秘密鍵の管理は非常に重要です。特に、企業や組織では秘密鍵の厳重な管理が求められます。
  3. 公開鍵の信頼性
    公開鍵は誰でも入手できるため、その公開鍵が正当なものであるかを確認する必要があります。公開鍵基盤(PKI)を用いてデジタル証明書の発行と認証局の信頼によって解決しますが、信頼のチェーンが確立されていない場合は、公開鍵の信頼性が不安定となることがあります。

まとめ

公開鍵暗号は、公開鍵と秘密鍵のペアを用いてデータを安全に暗号化し、通信の機密性やデータの改ざん防止、認証の信頼性を高める重要な暗号技術です。SSL/TLSや電子署名、デジタル証明書、VPNなど、インターネットやセキュリティインフラで広く活用されています。ただし、処理速度や秘密鍵の管理といった課題もあるため、共通鍵暗号と組み合わせるなどの工夫を行い、適切に運用することが求められます。


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