ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』半分まで → 全訳 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』半分まで → 全訳

Executive Summary

 ポランニー『ダホメ王国奴隷貿易』の既存翻訳がダメときいて訳し直しました。


昨日のエントリで、ダホメ経済の話をしたけど、そのときに読んだ『経済と文明』こと『ダホメ王国奴隷貿易』。

cruel.hatenablog.com

翻訳が半分まで終わったので、とりあえず公開。楽しい奴隷取引の部分はこれからだけれど、ここまでの話でも、17−19世紀のダホメ経済のおもしろさはわかる。

カール・ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』(全訳、pdf 4.8MB)

すでに栗本慎一郎他の邦訳があって、あまり評判がよくないことは述べた通り。ただ訳してみると、結構晦渋な英語を使っていて、未完成で終わったこともあり、論理的におかしかったり推敲が足りなかったり凡ミスっぽかったりする部分もあるのは事実なので、少し難しめではある。現代の普通の英語の感覚でやると、ちょっとつらかったかも。

訳しつつ、一切読み直していないけれど、それでも既訳よりはよいはず。残り半分も、近々終わるが、それまで何かまちがいとかご指摘があれば、是非ともご一報いただきたい。特にこの文化人類学系の専門用語とかで、誤解している部分があればご指摘たもれ。それ以外でも、誤変換、文が途中で切れてる、訳語や表記のブレ等いろいろあると思うので、よろしくお願いします!

なお、栗本訳の問題点を指摘したという論文めいたものがネットにあって、致命的な誤訳は指摘されている。pepperをコショウと訳していたとかね。ここではとんがらしのことだ。その一方で、マリノフスキーがトローブリアン諸島の親族互助方式について述べているところで「家族の対称的な部分」と言っているものに説明がない、と論難されていたけれど、もとの文も説明なんかなくて普通の読者にはわかりにくいし、それに説明つけなかったとケチつけられるのは栗本慎一郎がかわいそうだとは思う。