貯まっていた Science をいっしょうけんめい消化しているんだけれど、そこで見たおもしろい記事。老化特集なんだけれど、そこで子供時代のIQと高齢になってからのIQを調べた研究についての話が出ている。
Emily Underwoood, "Starting Young" (Science 31, 2014/10)
スコットランドで、11歳のときのIQとその50年後のIQを追跡調査で千数百人について追跡したんだって。そしてそれで得られた知見は……だいたい見当つくでしょ。11歳のときに高IQだと、高齢になってからも高IQだということ。50%くらいの説明力があるそうな。だいたい子供の頃にかなり決まっちゃうんだねー。幼児教育や児童教育はケチらずがんばろうぜー。それは高齢化対策にもなるんだから。
この研究で他におもしろかったこと。
- ワイン飲んでも知能改善になるかどうかわからんらしい。
一日にワイン一杯くらい飲むとかえって寿命ものびるし知能も改善する、というのはよく言われることだし、一応定説になっているようだけれど、この研究で子供時代の知能で補正してやると、この改善分がまったく消えた、とのこと。酒飲むと頭がよくなるわけではなくて、頭のいい人が少し酒を飲みたがるということなんじゃないかというんだけど……ホントかよ。
- ダイエットとか運動も同じ。
食生活の差とか、これまで高齢時の知能に影響すると思われていたものも、子供の頃のIQで補正するとぜんぜん影響しなくなるんだって。これも上と同じだなあ。
似たような話は、『意志力の科学』にも出てたっけ。子供の頃に我慢強さを仕込んで意志力をつけた子は、大人になってもそれが効いて衝動的でないよい判断や行動ができるようになる、というわけ。
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ここから判断すると、要するに子供の頃に勉強し、しつけをして我慢強さを身につけ、頭がよくなると、食生活も運動も改善されるし、あれやこれやで高齢化してもいろいろよい結果となるというわけですか。もちろん細かい影響の経路とかは議論の余地はあるけど。そしてもちろん、説明力は50% くらいということは、それ以外の要因が無駄というわけではない。いまからでも各種改善努力をすればそれなりに効くかも、ということですな。あたりまえといえばあたりまえだけれど、しっかり裏付けられると説得力が増す。
すると、もっと教育とか子育てにどんどん政策的にお金を割けというのが正しい方向性みたいねー。
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