『IT時代の震災と核被害』:前半部分はとてもよい、後半のくだらない対談集で台無し。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

『IT時代の震災と核被害』:前半部分はとてもよい、後半のくだらない対談集で台無し。

IT時代の震災と核被害 (インプレス選書)

IT時代の震災と核被害 (インプレス選書)

コンピュータテクノロジー編集部のまとめた、震災とITに関わる各種の取材とりまとめに、「知識人」たちの対談をくっつけたもの。震災時に、グーグル、ヤフー、アマゾンなどがどんな要望を受けてどんな取り組みをしたか、ツイッターやウェブコミュニティはどう動いたかという検証部分は非常によい。SPEEDIが一向に公開されなかった話とか、情けない事情もきちんと出ているし、また海外報道の状況などもよくまとまっている。

それだけに、最後についた各種の対談やら座談会は残念。まず西ヒロキ&萱野稔人の対談は、外交だの中国バブルだのとまったく関係ない話を気取って知ったかしてみせる無意味な談話。宮台真司は、えらそうなこと言ってテメーが震災時にデマをふりまいていたことにはほっかむり。市民としてのナントカを語ってみせるが、かれは市民ではなく大衆・愚衆の一員でしかなかった。武田徹神保哲生は、震災時のメディアやジャーナリズムについて語れるほどの活動をしていないのに、これまたご高説。そして池田清彦加藤典洋??!! なんでこんなのが入ってるんだか。津田大介ソーシャルメディア論はまだ読める。他は全然だめ。

前半だけなら書評で扱うことも充分考えられるけれど、これでは使えない。240ページまで(それに津田の論説)だけで出し直してくれれば……



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