経済 カテゴリーの記事一覧 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

経済

余談:モーレツ営業係長としてのチェ・ゲバラ、および商品としての革命

Executive Summary チェ・ゲバラのキューバ革命とそれ以降の成功と挫折は、上(カストロ) がお膳立てしたうえでのモーレツ営業係長的な成功と、そしてそれが勘違いしたまま部長になってしまい、お膳立てがなくなって思うように事態が進まなくなったときの困惑…

内藤『チェ・ゲバラとキューバ革命』:単なる公式プロパガンダに基づく切手コレクション紹介

Executive Summary 内藤『チェ・ゲバラとキューバ革命』は、ゲバラの伝記的な話をすべて、公式プロパガンダでしかないと批判されているタイボIIによる伝記に頼っており、都合の悪いことが書かれていなかったり美化されたりしている。また、ゲバラが会う様々…

ピケティ『資本とイデオロギー』読書ガイド

目次: 目次: はじめに 1. 『資本とイデオロギー』の概略 1.1 .『21世紀の資本』のあらすじ: 1.2. 『資本とイデオロギー』の全体的な話 1.3. 『資本とイデオロギー』のあらすじ 第I~II部:歴史上の格差レジーム/奴隷社会&植民地 第III部:20世紀の大転換 …

チェ・ゲバラ広島行きの謎、および三好徹『ゲバラ伝』

いま訳しているゲバラ本、詳細なだけあって、とにかくおもしろいエピソード満載ではある。その一つが、1959年ゲバラの来日および広島訪問のエピソードだ。 簡単に背景を。1959年1月、世界の驚きをよそにキューバ革命が成功してハバナは制圧されてしまい、新…

「社会に埋め込まれた経済」で格差を克服?

ポラニー『ダホメ王国と奴隷貿易』、Kindle版にして少しお金稼ごうぜと思って、ちょっと見直しておりました。 cruel.hatenablog.com ポラニーがこの本で言っている「社会に埋め込まれた経済」というのは、ピケティが『資本とイデオロギー』(もうすぐ出ます!…

ケインズ『繁栄の手段』(1933) やっちゃった。

ケインズ『戦費調達の方法』(1940) をやったついでに、全集でセット販売されてる『繁栄の手段』(1933) もやってしまったけど、全部書いてあるじゃん。これだけ読んで理解すればもう十分でしょう。「金融緩和だけで云々」「波及経路が」とか聞いた風な口きく…

ケインズ『戦費調達の方法』(1940) に取りかかった→終わった

表題の通り、ケインズ『戦費調達の方法』(これまでの訳題は「戦費調達論」だが、だれがお金くれるわけでもなし、趣味でやってるんだから題名も趣味で決める) の翻訳。 以前、ケインズの『説得論集』をやった。 cruel.hatenablog.com ケインズ全集では、この…

フォーゲル他『十字架の時:アメリカ奴隷制の経済学』:おもろいでー。

ポランニーで、ダホメの輸出側の奴隷事情を見ました。 cruel.hatenablog.com それで奴隷に興味が出てフォーゲルの『十字架の時:アメリカ奴隷制の経済学』を読み始め、訳し始めてしまいました。まだ前半だけ。もちろん、フォーゲルはずいぶん長生きしたし、…

ポランニー/イモータン・ジョー/コルナイ:不足の経済と社会権力

Executive Summary ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』は、ダホメでは経済が社会に埋め込まれており、各種交換は社会関係の一環として行われる儀礼でしかない、権力関係の結果として行われるお歳暮やお中元みたいなもの、という描き方をする。だがその見方…

ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』全訳終わった

Executive Summary タイトル通り、ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』の全訳がおわりました。 先日、半分まで終わったポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』 cruel.hatenablog.com 全部終わった。 カール・ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』(全訳、pdf 4.8M…

ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』半分まで → 全訳

Executive Summary ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』の既存翻訳がダメときいて訳し直しました。 昨日のエントリで、ダホメ経済の話をしたけど、そのときに読んだ『経済と文明』こと『ダホメ王国と奴隷貿易』。 cruel.hatenablog.com 翻訳が半分まで終わっ…

ポランニー『ダホメと奴隷取引』:18世紀ダホメ経済と社会主義はまったく同じ!

Executive Summary ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』に描かれている17-19世紀ダホメ王国は、市場システムを持たない。国内ではすべての作物を王様が召し上げ、一大宴会でそれを民草に配り、それ以外のわずかな部分を、王が配るタカラガイで、市場で定額で…

日清戦争と日露戦争の事業収支報告書

断捨離の途中で、いまやウクライナ侵攻の話題で大活躍しているポール・ポースト『戦争の経済学』の解説で使った、日清戦争と日露戦争の収支報告書が出てきました。 戦争の経済学作者:ポール・ポーストバジリコAmazon パブリックドメインだし、ぼく一人が持っ…

ホール『都市と文明』 III: 創造性完全無視、ITはWIREDコピペ、結論ぐだぐだ。

Executive Summary ピーター・ホール『都市と文明 III』は、突然イノベーションの話をはずれて、インフラの話をはじめる。だがそのインフラがこれまで重視してきた創造性とどう関わるかはまったく触れない。それぞれのインフラの事例として挙がる都市の記述…

ホール『都市と文明』I:文化芸術の創造理論なんだが、出た瞬間に古びたのはかわいそうながら、それ以前に認識があまりに変では?

Executive Summary ピーター・ホール『都市と文明 I』は、都市がイノベーションの場だからえらいのだ、という結論ありきの本。第一巻では、高踏文化に見られる創造性がテーマとなっている。しかし冒頭にある創造性の理論のレビューがあまりにショボく、その…

Polèse "The Wealth and Poverty of Cities: Why Nations Matter": Duh.

Executive Summary Polèse The Wealth and Poverty of Cities: Why Nations Matter (Oxford, 2021) は、経済発展の原動力として都市のイノベーションを重視する近年の流行に対し、いや都市発展の基盤となる制度をつくるのは国だから都市より国が重要なんだと…

diffとしての表現、あるいはほぼあらゆる (人間的な) 価値は、逸脱である

Executive Summary 多くのものはいまや、価値が本来の機能ではなく、それ以外の本来の機能との差分/diffに宿るようになっている。酒はもともとアルコールの酩酊感のためのものだが、いまやアルコール以外の不純物がお酒の味の主役になっている。食事は栄養摂…

キューバの経済 part 4: 社会主義/共産主義経済の全体像

1. キューバ再び:経済危機のさなか さて久々にキューバにきているのだけれど、キューバはいますごいことになっている。まず、アメリカの制裁がどんどん厳しくなり、各種の船はキューバに寄っただけで嫌がらせされ、キューバへのフライトもどんどん潰された…

Wear "Solved!” 査読

Solved!: How other countries have cracked the world's biggest problems and we can too作者:Wear, AndrewBlack Inc.Amazon Andrew Wear Solved! How other countries have cracked the world’s biggest problems and we can too (2020, Black) 査読 2020…

M. Mazzucato, Mission Economy: A Moonshot Guide to Changing Capitalism 査読

2020年10月に依頼された、マリアナ・マッツカートの新著の査読。冒頭のコロナでの話とかでもわかるとおり、いまにして思えば (半年しかたっていないのに!) ずいぶん拙速で妥当性のない話になっているように思う。ベトナムなどは社会封鎖は成功したけれど、…

ハーマン・カーン『紀元2000年』の技術予想はそんなに悪いか?

Executive Summary ハーマン・カーン『紀元2000年』(1967) は、クルーグマンのエッセイでは全然予測が当たっていないボケ役に使われていたが、その文の中ですらかなりいい予想をしていると指摘されていて、予測が全然あたらないという文章の主題と全然マッチ…

フィッシャー・ブラック『ノイズ』とファイナンスの教え

いま訳している分厚い本がもう、話があっちとびコッチ飛びして、結局どこに行こうとしているのか、そもそも何の本なのかもときどきわからなくなっきて、いまは一生懸命『マヌ法典』なんか読んでおりますが、うーん。 分厚いから本当なら集中して片づけたいん…

クルーグマンのはずれた「未来予測」

ちょうどリドレー『人妻とイノベーション』を読んでいるところで、なかなかおもしろい。 人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する作者:マット・リドレー発売日: 2021/03/05メディア: 単行本 これについては、またきちんと書く機会もあるだ…

クルーグマン「ミレニアムを解き放つ」:この道はいつか来た道

先日、「資本主義の行き詰まりがあちこちで見られる中で新たな経済思想は〜」みたいな話をきかれて、ぼくはちょっと言葉に詰まった。というのも、資本主義がそんなに行き詰まっているとはぼくは思っていないから、なのだ。 それで、ちょっと以前読んで気にな…

ケインズ『説得論集』全訳終わった。(そういえば昨日はバレンタインデー)

いろいろ忙しくなってきたので、例によってケインズ『説得論集』の全訳をあげてしまいました。1931年の原著すべてプラスアルファになっております。 J.M.ケインズ『説得論集』pdf 1.3MB https://genpaku.org/keynes/essaysinpersuasion/JMKessaysinPersuasio…

再びピケティ奴隷募集!

Exectuive Summary ピケティ新著のサポートサイト用に、図表の加工を外注したい。報酬は出たときに訳書をあげるだけ。以下の仕様を見てわかるヤツだけ応募しなさい。 はじめに 高齢な方々の中には、はるか昔にトマ・ピケティ『21世紀の資本』とかいう本がな…

ケインズ『人物評伝』全訳おわった。

epub版ケインズ『人物評伝』表紙。 年明けてからケインズ『人物評伝』を訳し始めて、月の内になんとか終わりました。 ジョン・メイナード・ケインズ『人物評伝』pdf 2.7MB ジョン・メイナード・ケインズ『人物評伝』epub 1.4MB epubは、pandocで機械的に変換…

やさぐれるスタンリー・ジェヴォンズ

ケインズの人物評伝の訳は続いていて、マルサスが終わってスタンリー・ジェヴォンズになっている。 マルサスはかなり温厚でまともな人だったらしいけれど(まあ牧師さんだから)、それでも結構面倒な人ではあったみたい。同時代の人の証言によると、 「だが…

ケインズ『人物評伝』の政治家パート/科学者パート

1933年のケインズ。 急に忙しくなったので、余計なことに手を出し始めて、ケインズ『人物評伝』の訳をこの連休に始めた。政治家、経済学者、科学者のパートがある中で、政治家の部分が終わったので、まあご覧あれ。 ジョン・メイナード・ケインズ『人物評伝…

ebook版もっと追加。ソローとサイモン & 富岡日記

ロバート・ソローの「内生的成長理論死ね」本と、サイモンの合理性本、epub化した。 ロバート・ソロー『アロー『やってみて学習』から学習:経済成長に とっての教訓』epub版 (右クリックでダウンロード) ハーバート・サイモン『人間活動における理性』epub版…