2022-01-01から1年間の記事一覧
『オリエンタリズム』25周年記念版版序文 (2003) エドワード・サイード 山形浩生訳 Orientalism (Penguin Modern Classics)作者:Said, Edward W.Penguin Books Ltd (UK)Amazon 9年前の1994年春、私は『オリエンタリズム』のあとがきを書いた。これは自分で言…
しばらく前に、モンティ・ホール問題がよくわかんねえ、というエントリを書いた。 cruel.hatenablog.com 黒木さんに言わせると、こんな初歩的な代物がそもそもわかんねえこと自体が情けねーよ、ということらしく、すみませんすみません。 #統計 どんなに素晴…
プーチンが、ウクライナ侵略の9ヶ月前に発表した論文、というかアジ文。ウクライナはロシアと一体、という文章のように題名だけ見ると思えるが、実際にはウクライナは常にロシアの庇護下にあったし、ロシアが守ってやらないとやってけないぜ、ついでにドンバ…
10月24日に、Change to Hopeというイベントがあって、スティーブン・ピンカーが来日して基調講演をする……予定だったのがコロナで来れずオンラインになってしまったんだが、ぼくがその司会役、というか質問係をおおせつかったのでした。 www.change-to-hope.c…
やりかけていたこれ、本編は全部終わったー。 cruel.hatenablog.com 本体はこれです。 https://genpaku.org/TimeontheCross/timeonthecross_j.pdf なんだかこないだから、Word--> pdfで目次のリンクが全部ずれる。またしおりもちゃんと作ってくれなくなった…
2022年ノーベル経済学賞は、バーナンキ、ダイアモンド、ダイブヴィグ (ディブヴィグ? 字面でしか見たことないので読みをよく知らない) に決定した。金融・銀行系ね。 そういえば、むかしの自分の予想でもバーナンキは入れていたなあ、と思って昔のエントリ…
ぼくが初めて訳した商業出版は、H・R・ギーガーの画集だったんだけれど、それを出したトレヴィルという西武系の出版社の編集者川合さん (というか彼一人しかいなかった) が「じゃあ是非これもやってください!」と言って翻訳させられたのが、ティモシー・リ…
ポランニーで、ダホメの輸出側の奴隷事情を見ました。 cruel.hatenablog.com それで奴隷に興味が出てフォーゲルの『十字架の時:アメリカ奴隷制の経済学』を読み始め、訳し始めてしまいました。まだ前半だけ。もちろん、フォーゲルはずいぶん長生きしたし、…
Executive Summary 教養というと、実学に関係ないステータス財なのか、それとも実学にも役立つべきベースなのか、みたいな議論が起こる。だがその区別がない場合もあるし、それが理想かもしれないという気もする。大学の上水道学の講義で、屈原の「漁父の辞…
Executive Summary ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』は、ダホメでは経済が社会に埋め込まれており、各種交換は社会関係の一環として行われる儀礼でしかない、権力関係の結果として行われるお歳暮やお中元みたいなもの、という描き方をする。だがその見方…
Executive Summary タイトル通り、ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』の全訳がおわりました。 先日、半分まで終わったポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』 cruel.hatenablog.com 全部終わった。 カール・ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』(全訳、pdf 4.8M…
Executive Summary 木村汎『プーチン』三部作 (藤原書店、2015-2018) は、書きぶりはあまりにひどい無内容な水増しぶり。だがその中身はかなりきちんとしている。プーチンの自伝的エピソードのごまかしも述べ、また変な柔道談義で舞い上がることもなく、北方…
Executive Summary ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』の既存翻訳がダメときいて訳し直しました。 昨日のエントリで、ダホメ経済の話をしたけど、そのときに読んだ『経済と文明』こと『ダホメ王国と奴隷貿易』。 cruel.hatenablog.com 翻訳が半分まで終わっ…
Executive Summary ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』に描かれている17-19世紀ダホメ王国は、市場システムを持たない。国内ではすべての作物を王様が召し上げ、一大宴会でそれを民草に配り、それ以外のわずかな部分を、王が配るタカラガイで、市場で定額で…
Executive Summary 情報寄せ集めで、文章もまったく構築性がなくて構文レベルでむちゃくちゃで意味不明。そして中身は基本的にロシア擁護であり、ロシアが侵略を繰り返すのも、他国がプーチンに配慮しないからいけない、ウクライナがプーチンの言うことを聞…
断捨離の途中で、いまやウクライナ侵攻の話題で大活躍しているポール・ポースト『戦争の経済学』の解説で使った、日清戦争と日露戦争の収支報告書が出てきました。 戦争の経済学作者:ポール・ポーストバジリコAmazon パブリックドメインだし、ぼく一人が持っ…
Executive Summary 2002年あたりに、3日にわたってオリバー・ストーンがフィデル・カストロに密着したインタビュー映画。 だがストーンは脈絡なく抽象的な質問をするだけ。相手が怒ったり口ごもったりするような質問は一切ない。また質問の答を受けてさらに…
Executive Summary 『オリバー・ストーン オン プーチン』(文藝春秋、2018) は、同名のプーチン連続インタビューシリーズの文字版。2015-2017という、プーチンやロシアをめぐる各種の大きな事件が次々に起きた時代で、本当であればまたとない情報源となれた…
Executive Summary カブレラ=インファンテ『煙に巻かれて』(青土社、2006) は、葉巻をめぐる歴史、文学、映画、政治、その他ありとあらゆるエピソードを集め、さらにダジャレにまぶしてもう一度昇華させた楽しい読み物。著者が逃げ出したキューバへの郷愁も…
Executive Summary ゴルバチョフ『ペレストロイカ』(講談社、1987) は、ソ連の体制の刷新と解体から、やがてはソ連そのものの消滅をもたらしたという、当時の世界構造の一大変革につながった図書として、いつか読もうと思いつつ果たせずにいた。いま、35年た…
Executive Summary ピーター・ホール『都市と文明 III』は、突然イノベーションの話をはずれて、インフラの話をはじめる。だがそのインフラがこれまで重視してきた創造性とどう関わるかはまったく触れない。それぞれのインフラの事例として挙がる都市の記述…
Executive Summary プーチン他『プーチン、自らを語る』(扶桑社、2000) は、突然ロシア大統領になってどこの馬の骨ともわからなかったプーチンが、生い立ちから大統領としての問題意識までを率直に語ったインタビュー集。幼少期の記述などはこれがほとんど唯…
Executive Summary 朝日新聞『プーチンの実像』(朝日新聞社、2015/2019) は、日本のぶら下がり取材的にプーチンが日本や自分たちと行った会見やその周辺人物のインタビューをあれこれ行っているが、明確な視点がないために、それが単なるゴシップのパパラッ…
我らが偉大なhicksian 様のこのツイートで紹介されていたブログ記事、とてもおもしろい。 broadstreet.blog この著者はMITのソ連ロシア史教授、エリザベス・ウッズ。プーチンは、ヒル&ガディの現時点ではベストなプーチン伝「プーチンの世界」で紹介されて…
訳者まえがき まちがって公開されたとおぼしき、ロシアがウクライナ征服に成功していた場合のロシア国営通信 RIA予定稿の全訳。すぐに引っ込められたが、Wayback Machineにしっかり捕捉されていた。すごい代物。いくらでも言いたいことはあるが、読めば多く…
昨日、『史記』の記述をもとに「知識人、昔から変わんねーなウププ」という小文を書いた。 cruel.hatenablog.com するとこれを見てツイッターで「昔の中国の儒学者は、いまの知識人とは役割ちがうんだよ、そんなことも知らないのかバーカ、いまの知識人は何…
Executive Summary 司馬遷『史記』に登場する焚書坑儒は、儒者どもが体制批判したせいだとされるが、実は穴に埋められた儒者たちにもそうされる十分な原因があったのかもしれない。かつて儒者を厚遇していた始皇帝だが、封禅の儀式のやりかたに結論を出せず…
Executive Summary 落合淳思『殷』は、落合の甲骨文研究に基づく、殷の社会についての分析で、非常にしっかりしていておもしろい。同時にその殷の研究自体が、直接資料である甲骨文を中心に研究しようとする立場と、後代の創作があまりに多い文献を重視する…
Executive Summary ピーター・ホール『都市と文明 II』は、産業イノベーション都市の理論のはずだが、まず冒頭にある産業イノベーションや都市立地の理論のまとめがあまりに雑でいい加減であり、したがってその後の各種都市の記述にとってのフレームワークを…
Executive Summary ピーター・ホール『都市と文明 I』は、都市がイノベーションの場だからえらいのだ、という結論ありきの本。第一巻では、高踏文化に見られる創造性がテーマとなっている。しかし冒頭にある創造性の理論のレビューがあまりにショボく、その…