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広島市現代美術館「オノ・ヨーコ展 希望の路 YOKO ONO 2011」でCCライセンスを利用した写真撮影を採用


来場者に写真撮影を許可するにあたってCCライセンスを利用する試みが、森美術館東京都現代美術館に続き、初めて広島市現代美術館でも採用されました。今回は、個展での採用で、しかも世界的に著名な現代美術作家であるオノ・ヨーコさんの展覧会です。オノさんは、1950年代からNY、ロンドン、そして東京を中心に創作活動を展開してきた前衛芸術家であり、その際立った先進性や独自性がジョン・レノンを公私にわたってインスパイアしたことでも有名です。

パフォーマンスやハイ・コンセプチュアルな作品形態が多いことから、著作権の扱いも、絵画や彫刻といった作品以上に複雑なものにならざるを得ないオノさんにCCライセンスを採用していただけたのは、非常に喜ばしいことです。多様な媒体を操り、人々の想像力をかきたて、積極的に観客を自身の作品制作に参加させるオノさんの創作活動と、「シェア」の概念によって人と芸術作品の新しい触れ合い方を提示するクリエイティブ・コモンズのコンセプトが共鳴したと考えれば、ごく自然なことなのかもしれません。

展覧会の写真を撮影してシェアすることで、3.11以降のオノ・ヨーコさんからのメッセージを広島から世界中の人々に伝える、このちょっと素敵な試みに参加してみませんか?

「オノ・ヨーコ展 希望の路 YOKO ONO 2011」
広島市現代美術館
2011年7月30日(土)~10月16日(日)
展覧会URL : http://www.hcmca.cf.city.hiroshima.jp/web/main/onoyoko2011.html
*現在、写真撮影についての大きな掲示はありませんが、受付で申し出れば撮影に関するリーフレットを貰えるそうです。

展覧会で実際に撮られた写真:
http://www.flickr.com/photos/chiaki/sets/72157627261028129/

東京都現代美術館 写真撮影と写真の利用に関するアンケート結果

東京都現代美術館では昨年「こどものにわ」「オランダのアート&デザイン」の両展において、写真撮影と写真の利用を許可するためにCCライセンスが採用されました。

「オランダのアート&デザイン」展会場内での上記試みに関するアンケート集計結果をご報告いたします。

写真撮影の内容 今後の取り組みについて
はい いいえ 知らなかった 続けて欲しい 続けなくて良い どちらでも良い その他
216 121 258 502 15 58 4

取り組みの評価についての円グラフ
写真撮影を行ったかについての円グラフ

コメント欄には、こうしたインタラクティブな展覧会ではぜひ取り入れてほしい、今後も続けてほしいという意見が多数寄せられました。
また、遠方からの来場客からは、地方では都内のように街中や交通機関内で展覧会の情報をポスターやビジュアルで目にする機会が少ないので、写真が撮れると周りの人に口コミしやすくて良いというコメントも。
一方で、残念ながら写真撮影可であることを「知らなかった」という声も多く、いかに展覧会の雰囲気を壊さずに、分かりやすく表示するかが今後の課題と言えるでしょう。

美術館で撮った写真の利用については、回を重ねるごとにブログなどウエブ上への掲載の際のライセンス表記の正確さが向上している印象を受けます。
展覧会で受けた感動を、アーティストの権利を尊重しつつシェアするための試みとしてぜひ続けて行きたいプロジェクトです。

(田中)

東京都現代美術館「こどものにわ」展で写真撮影と写真の利用を許可する試み

7月24日(土)より東京都現代美術館にて開催中の「こどものにわ」展(~10月3日まで)において、写真撮影と写真の利用を許可するにあたりCCライセンスが採用されています。すでに六本木の森美術館では昨年より同様の取り組みが行われていますが、国内の公立美術館では初。

「こどものにわ」は、乳幼児から大人まで楽しめる体感型・参加型の作品がいっぱいの小さなお子さんの美術館デビューにピッタリの展覧会です。小さなこどもの視点や身体感覚、心の動きを通してとらえた美術世界を、周りの大人が共有・あるいは追体験することで、年齢層の異なる他者とのコミュニケーションや、人と美術の関係を再考・再発見するような機会を創出します。
美術館公式サイト「展覧会概要」より抜粋

これまで日本の美術館で行われる展覧会は、子供にとっては静かにしなければならない退屈な場所、また子供を連れた大人たちにとっても気を使うことが多く、なかなか足を運びづらい印象がありました。そこで、ご自身も小学一年生の男の子の母である担当学芸員の難波祐子さんが、子供やその親たちが楽しみながらアートに触れられる展覧会をと、4年がかりの構想を経て実現されたのが今回の「こどものにわ」です。

実際に触って動かすことができる作品も多く、ただ展示された作品を観るだけという一方通行ではなく、主体的に関わっていけるという点が特徴です。さらに写真撮影が可能ということで、親子の記念として残り、子供にとっても印象深い体験となることでしょう。

撮影した写真は「クリエイティブ・コモンズ表示ー非営利ー改変禁止2.1日本」のCCライセンスで自由に利用することができます。くわしくは、同展の写真撮影に関してのご案内を参照ください。

今やブログやツイッターなどウェブ上の口コミの効果はこうした展覧会やアーティストの活動においても例外ではなく、アートの業界における新しい広報の在り方を考える上でも興味深い試みです。

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(作者:大巻伸嗣)

24日に行われたオープニングレセプションの様子で
(作者:出田郷)
24日に行われたオープニングレセプションの様子です。

体験型の作品も多いのが特徴です。
(作者:KOSUGE1-16)
体験型の作品も多いのが特徴です。

アイ・ウェイウェイ展で作品の写真撮影・写真の利用を許可する取り組み

森美術館で開催されている「アイ・ウェイウェイ展」では作品の写真撮影が許可されており、撮影した写真にCCライセンスをつけて自由利用することが可能になるという仕組みを採用しました。

東京・森美術館では、現代中国を代表するクリエイター、アイ・ウェイウェイ[艾未未]さんによる「アイ・ウェイウェイ展—何に因って?」が7月25日より開催されました。
新作6点を含め、1990年代以降の主要作品26点を紹介しており、アイ・ウェイウェイさんの個展としては過去最大級のものだそうです。非常に刺激に満ちた内容となっていました。

そしてこの展覧会では、著作権等の問題で写真撮影が認められない美術館が多い中で、観客が作品を写真に撮ることを許可するという取り組みを試験的に行いました。
撮影した写真は「表示ー非営利ー改変禁止」のCCライセンスで自由に利用することができます。

http://www.mori.art.museum/contents/aiweiwei/related/index.html

森美術館長である南条史生さんは「日本の美術館は少し厳しすぎる。知的財産をもっと創造的に使える条件をつくりたい」と話しているそうで、このような試みが少しずつ広がって行くことをとても期待しています。