米国けんきゅうにっき スモークサーモンのパイ

学位取得後、研究者として米国へ。このさきどのようなことが待ち受けているのでしょうか?

スモークサーモンのパイ

 実をいうと今週は間延びした週であった。阻害剤の実験をしようにも装置が半日占拠されていたり、バクテリアの世話をしていたりで一つのコトに打ち込めそうな時間があまりとれなかったのだ。そんなわけで今週はちょっと不完全燃焼気味だ。

 そんな中、一昨日は極低温での電子スピン共鳴(EPR)を行った。温度は12K(ケルビン)だ。よくSFとかで出てくる絶対零度(ワタシはこのコトバを耳にするとしばしば幻魔大戦というちょっと古い映画に出てくる主人公の最後に使った超能力を思い出す......)のとゆーのは0Kのことだが、これは摂氏でいうと約マイナス273度である。コレよりも12度だけ高い温度が今回の測定条件。なんでこんな温度で測定しなければならないのかと言えば、これはちょっとEPRの原理について簡単に説明しなければならないので難しいのだが......EPRは簡単にいえば電子の挙動を測定する方法だ。その方法は電磁波を試料に当ててその差分をみるというものなのだが、EPRの場合は試料に磁場をかけながら測定する。(核磁気共鳴、NMRあるいはMRIを思い浮かべられたかた、そのイメージでいいです。ただし電磁波の周波数領域が異なる。)今回の場合、見たい電子はある2つの原子核間を非常に高速に移動(この表現は厳密には正しくないのであしからず)ので通常の温度(実は77K、液体窒素を用いた温度でも見ることができない)では見ることができないのだ。そういったややこしい理由で今回の極低温となったワケ。結果としてあんまり満足のいく結果を得られなかったので、また近日中に測定しなければならない。

 さて前置きが長くなってしまったが、今週は料理の新領域に挑戦した。スモークサーモンをベースにしたチーズパイだ。なんでこんなことになってしまったのかと言えば、海より深い理由があるのだ。Borders(米国での全国チェーン本屋)で安売りしていた料理の本(本の安売りというのも日本では耳慣れないかもしれないが......)を眺めていた時に、このサーモンパイの見本写真を見て突発的に食べたくなったのだ。そこでこの間の日曜日にグロッサリーストアでレシピとにらめっこしながら、食材を購入した。そのなかで当然、メインのスモークサーモンもあったのだが、いざ店頭で見てみると生のサーモンと較べて意外と高いんだよね。そんなワケで魔が差してしまい、生シャケを購入してしまったのだ!そのときはスモークサーモンなんて簡単だろう~♪と思っていたのだが......(無知とは恐ろしいものだね!)

 かえってからスモークサーモンの作り方をぐぐってみると......えらくメンドクサイじゃない!?でもよ~く考えればスモークなんだから燻煙なんだよね。ホントーにアホだと自己嫌悪に陥りながらも、挑戦することにした。ちなみにスモークサーモンは燻煙のなかでもかなり上級難度に属する冷燻法によるものだとか......

 さまざまなサイトを参考して今回はソミュール法という方法でいくことにする。そのためにはまずはソミュール液というものを用意する必要がある。これは10~30%の塩を含む水なのだが、これに12~24時間浸すことで味の下ごしらえをするのだそーだ。今回は15%の塩(ヨウ素入り、ホントーはなしのほうが良い)、5%の砂糖の入った水を沸騰させコショウを入れて冷却。シャケを浸す直前に赤ワインを少々入れて冷蔵庫で24時間、シャケの切り身を浸して置いた。そのあと流水で1時間ほど洗い、冷蔵庫にまた入れて、12時間ほど乾燥させた。

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塩漬け処理後のシャケ燻煙中燻煙されたシャケの切り身

 当然、室内でやれるものではないので、バルコニーにて燻煙は行う。スモーカーは市販品で$100くらいで購入できるのだが、そんな投資わできないっ!、というわけでWal-martで$10くらいで買ってきたBBQグリルで代用。スモークチップはりんごの木を用いた。本来ならば冷燻を行うべきなのだが、今回のはパイの原料なのでさらに調理されてしまう。そんなわけで、冷燻法の絶対条件である低温維持はあんまり考慮に入れなかったのだが、期せずしてこの日は夜間に4度まで下がった。そのおかげでスモークを維持するための熱源であるプロパンバーナーが消えてしまうというトラブルが続発。終夜での燻煙を諦める。
 ところでスモークチップによってかおりが変わるということなのだが、サイトによってはシャケはヒッコリーの木(クルミ科)が良いとか書かれていた。実はサクラの木も用意したのだが、これは次回に挑戦してみる。
 結果的には温燻状態になってしまった。すなわちスモークサーモンとしては失敗である。まあこれはさらにパイの原料になるのだからいいのだけれど......

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下地のleekとオレンジスモークサーモンのトッピング
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溶き卵とサワークリーム焼き上がり

 キッチンが小汚いのは無視してくれ。まずリーク(大型の長ネギ)とオレンジをヘビーホイップクリーム(生クリームのもと)と一緒に煮立たせる。そのあとすぐにさましてチャイブ(chives、エゾネギとゆー和名だそうだ)を刻んだものを入れる。
 パイ生地は小麦粉と無塩バター、ショートニング、卵、カイエンペッパー(cayenne paper、とうがらし)、塩、マスタード、パルメザンチーズ(本来ならチェダーかアメリカンチーズ)を混ぜてコネコネして型に入れたアト、華氏400度で20分ほど焼いたモノ。これに先ほどの煮立てたクリームを均一にしながら入れる。さらに作ったスモークサーモンを適当な大きさに切ってトッピング。最後に卵とサワークリームをビーターで攪拌して均一にしてからパイに流し込むわけだ。これをオーブンで華氏375度、40分ほど焼いて完成だ!

 今回のパイ、薫りがかなりイイ!たぶんスモークサーモンもさることながら柑橘系のかおりがかなり清涼感を醸し出している。これで今週のこりの夕飯の支度はラクになるかな。
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  • Author:cooyou
  • はじめまして!2001年に日本を飛び出し米国へ。研究分野は化学でしたが、2005年のはじめに職場を東海岸から山の中へ移し、その際に研究分野も大きく変えました。そして2010年に結婚とグリーンカード取得。さらにさらに2011年夏に再び1800マイルを東に向かい、新天地、ミシガンに生活の場を移しました。2016年夏に仕事の都合でテネシーに引っ越しました。クルマ関係の仕事ですが、未だに合間を見ては投稿論文の準備をしています。まあ、せっかくの貴重(?)な人生なので、日々の出来事を残しておくことができれば幸いです。

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