ブランディングとは、「ブランド」の理念や価値を伝え、好感を持ってもらう一連の活動のこと。多くの人々と「ブランド」がより深いつながりを作る方法として注目されているのが「ストーリーブランディング」です。
この記事では、今なぜストーリーブランディングが必要とされているのかを掘り下げ、ブランディングの4つの価値を紹介。ストーリーブランディングのメリット、具体的な方法について解説します。
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ストーリーブランディングとは
ストーリーブランディングとは、人々に企業の理念や商品開発の背景などを「ストーリー=物語」として伝えることで、商品そのものの価値やブランドをより深く理解してもらうための手法です。
マイナビ学生の窓口でのストーリーブランディング事例
「マイナビ学生の窓口」では、貝印と「紙カミソリ」をみんなに広めよう!プロジェクトを実施し、世界初の「紙カミソリ」の商品開発の裏側から同プロジェクトの進行の様子をマンガのストーリー形式で紹介しました!
開発者の思いなどを物語にして発信することで、若年層へ波及していった事例となります。
なぜ今ストーリーブランディングが注目されているのか
ここでは、現代の消費者行動や市場の動向をふまえて、ストーリーブランディングが注目される理由を詳しく探っていきます。
消費者の価値観の変化
情報化社会の進行とSNSの普及によって、消費者が多くの情報を簡単に得ることが可能に。商品情報を得た上で、“どんな企業が、どういう想いで商品を作っているのか”、企業に対しても高い関心を持つようになりました。
これまでは物を購入する際、価格や機能などが大きな決定要因でしたが、現在ではその商品を作るブランドや企業を選ぶ理由まで考えるようになっています。したがって企業は消費者に対して、商品づくりへのこだわりや想いを伝えて「共感」を得ることが大切です。
例えば、環境問題に配慮した商品は、消費者からの支持や共感も集まりやすい傾向。“社会にとって良い影響を与えるもの”を考えて選ぶ消費者が増えています。
マイナビ マーケティング・広報ラボ「消費行動についてのアンケート」より:18-22歳の学生/n=230件/2023年12月8日~2023年12月31日
市場の競争激化
年々市場競争が激しくなっており、多くの企業から商品が生み出され、ものがあふれる時代に。消費者が選ぶ選択肢も拡大しています。
また技術の進化も目覚ましく、人気の商品はすぐに他社にも模倣され、新たな商品が生まれるスピードも速くなっています。このような環境下では、商品そのものの差別化が難しくなっており、機能性や利便性とは別の要素で選ばれる傾向が顕著です。
企業と消費者の関係性の変化
これまで企業と消費者は、「売買」だけのつながりによる関係性を築いていましたが、現代では「関係の構築」が重要視されています。
SNSの普及により、消費者側からも商品やブランドに対して「率直な意見」が発信できる環境に。商品に興味・好意を持つ人々が集まり、ファン化・コミュニティ化しやすい状況になっています。そのため、消費者からも発信したくなるようなブランドの魅力が求められています。
ブランドの長期的価値の向上
ストーリーブランディングは、ブランドの根本的な価値を高めるための長期的なアプローチ方法の一つです。
一貫したメッセージを発信し続けることで、ブランドへの信頼性や価値を長期的に向上させることが可能に。これにより、ブランドは消費者の心に深く根付くことができ、長期間にわたって支持される存在となるのです。
情報化時代の戦略の1つ
インターネットの普及により、消費者は日々膨大な情報や広告を目にするようになりました。従来の広告手法では消費者の興味や関心は惹けず、商品の認知度を上げるには、常に新しいプロモーション手法が求められるようになっています。
このような背景から企業側から発信するコンテンツの重要性が高まり、消費者にとって共感を生みやすいストーリーブランディングが重要視されています。
ブランディングにおける4つの価値
ブランディングは、消費者にブランドへの興味や好意をもってもらうための基本的なアプローチです。まずは、おさえておきたいブランディングの4つの価値について詳しく見ていきましょう。
1. 機能的価値
機能的価値は、商品の機能や品質のこと。例えばパソコンの場合は「薄くて軽量で持ち運びしやすい」、「充電が長持ちする」、「大型ディスプレイで見やすい」などのスペックが、機能的価値になります。
人気商品は機能的価値を高めていることが多く、ブランディングにおいて機能的価値を高めることが重要です。
2. 情緒的価値
情緒的価値は、消費者がそのブランドに対して抱く感情、その商品を使ったときに感じる精神的な付加価値のことです。
例えばiPhoneは「オシャレでかっこいいイメージ」、「Apple創業者スティーブ・ジョブズのカリスマ性」などに情緒的価値を感じている人々が大勢います。そのため、iPhoneに限らず他のApple製品も好んで使用することが多く、ブランド自体のファンとして商品を長期的に使ったり、新たに商品を購入する際にも同社を選ぶ傾向です。
3. 自己表現的価値
自己表現的価値は、消費者が商品やサービスを通じて自分自身のアイデンティティや価値観を表現できることです。
例えばハイブランドを身につけることによって、自分に自信を持つことができたり、相手にクリエイティブな印象を与えたりと、自分のアイデンティティを表現するために商品を使っています。
4. 社会的価値
社会的価値は、企業が社会に対してどのような貢献をしているのかを示すものであり、今後さらに重要になってくる要素でしょう。
近年ではSDGsへの取り組みを積極的に発信したり、日本だけにとどまらず世界の環境問題や経済格差に向き合い活動をしている企業も増えています。
ストーリーブランディングのメリット
ここではストーリーブランディングがもたらすメリットについて、より詳細に解説していきます。
・共感性
・信頼性
認知度の向上
ストーリーブランディングのメリットの一つは、ブランドの認知度を高め、顧客の記憶に残ることです。
独自のブランドストーリーは、消費者の感情や心にストレートに響き、印象に残りやすい傾向。他のブランドと差別化を図るための重要な手段となります。
共感性
消費者と感情的なつながりを持つことで、ブランドへの共感性を高める効果があります。
例えばイベントやキャンペーンなど別の方法でも、ブランドへの好感や共感を得ることはできますが、一時的な効果になりがちで、共感性を持続することは難しいでしょう。ストーリーブランディングは共感性を高め、長期的に継続することが可能で、“ファン”として関係性を築くことができます。
信頼性
ブランドの信頼性向上のための手段としても活用できます。
ブランドが一貫した価値観や目標を持ち、理想を実現しようとする姿勢を見せることで、ブランドに対して信頼性を生むことができます。ブランドだけでなく、商品の品質への信頼や安心感にもつながる重要な要素です。
ストーリーブランディングの主要な3パターン
ストーリーブランディングには、主に以下の3つのパターンがあります。それぞれのパターンには独自の効果があり、ブランドの特徴や目指す方向性に合わせて適切に選択することが重要です。それぞれのパターンを詳しく見ていきましょう。
エピソードストーリー
エピソードストーリーは、ブランドの誕生秘話や創業者の苦労、成長の過程、転機となった出来事など、具体的なエピソードを中心に展開します。
これらは、ブランドに対する親しみや信頼感を生み出す効果があります。例えば、創業者がどのような志を持ってこのブランドを立ち上げたのか、どのような悩みを解決しようと思って商品を作り始めたのかなどと、具体的なドラマを描くことで、消費者の共感を引き出します。
ブランド化ストーリー
ブランド化ストーリーは、ブランドのアイデンティティや理念を中心に、ブランドがどのようにして誕生したかを描いたストーリーのことです。
このストーリーでは、ブランドの存在意義や使命、価値観について語ります。ブランドの核心にある理念やビジョンを明確に伝えることで、消費者に対して強いメッセージを発信し、ブランドのファンを増やしていきます。例えば、品質に対するこだわりなどブランドの本質的な部分を強調することで、消費者との深い信頼関係を築きます。
ビジョンストーリー
ビジョンストーリーは、ブランドの未来のビジョンや社会的な使命を中心に展開するストーリーです。
このストーリーでは、ブランドがどのような未来を目指しているのか、社会にどのような良い影響を与たいと考えているのかを語ります。
未来志向のメッセージを発信することで、消費者に対してブランドの長期的な方向性や目標を示し、共感と期待感を生み出します。例えば、持続可能な社会の実現に向けた取り組みや、革新的な技術を通じて未来を切り開くビジョンなどを伝えることで、消費者のブランドへの関心と支持を高めることができます。
ストーリーブランディングの戦略
ストーリーブランディングを成功させるための戦略には、以下のようなポイントがあります。これらの戦略を実践することで、効果的なストーリーブランディングが可能になります。
1. 明確なブランドメッセージを作る
まずはブランドのメッセージを明確に定義し、それを基にストーリーを構築します。
ブランドメッセージは、ブランドの理念や価値観を一言で表現するもので、ストーリーブランディングの基盤です。ブランドが何を目指しているのか明確にすることで、共感しやすくします。シンプルで覚えやすいメッセージだと印象に残り、SNS上でも拡散されやすいでしょう。
2. 伝えたい相手を明確にする
次に伝えたい相手を明確にし、そのターゲットに響くようなストーリーを展開します。
同じ商品であっても、性別や年齢層によってそれぞれのニーズは異なります。性別や年齢、住んでいる地域など、どこまで細かく設定するのか、具体的に1つ1つ決めましょう。ターゲットのニーズや興味などを分析した上で、インサイトに沿ったストーリーを展開することで、より効果を発揮できるでしょう。
3. 一貫性のあるストーリーを維持する
一貫したストーリーは、ブランドの信頼性を高めるために重要です。
例えば「この製品を使えばこんな悩みが解決できる」、「その製品やサービスがあることによって、こんな生活が実現できる」などと、ターゲットに合わせたシチュエーションを具体的に示すことで、潜在ニーズにも気づくことができるでしょう。テーマが一貫していれば印象にも残りやすく、信頼へとつながっていくでしょう。
4. 効果測定
ストーリーブランディングを使った各コンテンツの効果を測定し、フィードバックをもとに改善を行います。
ブランドの認知度やエンゲージメント率など、それぞれ目標設定した各指標を定期的にチェックしましょう。データだけでなく、SNS上の反響やコメントも見ながら、消費者のアイディアや意見を取り入れてみるのも大切です。消費者の声を反映させることで、親近感も増し共感へとつながりやすいでしょう。
まとめ
今後も、市場競争の激化や情報化社会による影響はさらに大きくなり、ストーリーブランディングの重要性は増していくでしょう。これまで以上に消費者のインサイトをとらえ、企業と消費者がともに商品やブランドを作り上げていくことが重要だと考えられています。
「キョーソウ PROJECT」とは
「マイナビのキョーソウ PROJECT」では、企業とZ世代が一緒に商品企画やプロモーションを考え、Z世代の視点からアイディアを形にしていく新しい取り組みです。
実際にZ世代のメンバーと一緒にプロジェクトを進めていくことで、ブランディングから最新のマーケティングデータの取得、新規のファン作りまで一貫してサポートしています。