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データセンターの進化と課題、その対応策をキンドリルが解説
2024年10月21日 06:15
キンドリルジャパン株式会社は18日、データセンターファシリティに関する勉強会を開催し、同社 ストラテジックデリバリー本部 データセンター/サイト&ファシリティ サイト&ファシリティサービス#2 部長の岡田佑介氏が、これまでのデータセンターの進化や今後の課題と対応策について語った。
まず岡田氏は、1990年代から現在に至るまでのデータセンターファシリティの変遷について解説した。1990年代の自社コンピューターセンターから始まり、2000年までにはインターネット専用データセンターが誕生、その後データセンター設備の信頼性が高いことからハウジングサービスの利用者が増加し、2010年に至るまでにはアウトソーシング向けデータセンターが普及した。2010年以降はクラウド向けのハイパースケールデータセンターへと進化し、2020年以降は生成AI向けメガスケールデータセンターが登場している。
「データセンターファシリティのライフサイクルは50~70年と非常に長く、1990年代にできたデータセンターが今も現役で稼働しているケースも多いため、変化するITシステムに追従できる柔軟さと長期間の利用に対応できる堅牢さが求められる。一方、システムの更新サイクルは5~7年、設備のライフサイクルは15~25年だ。30年前に今のITトレンドを意識した設備を構築することは不可能なため、変化するシステムの中長期構想と連動してデータセンター戦略とその構成を見直し、コストや信頼性の観点から適切な環境を維持する必要がある」と岡田氏は述べている。
長期間運用するデータセンターには、時代を経てさまざまな課題を抱えることになる。その課題について岡田氏は、「1点目は冷却方式だ。2010年以降のハイパースケールデータセンターやメガスケールデータセンターは、増加する発熱量に対し水冷回帰への対応が求められている。2点目はカーボンニュートラルへの対応で、多くのデータセンターにてカーボンニュートラル化に向けた取り組みが進んでいる。3点目は老朽化だ。1990~2000年代に建てられた自社データセンターやハウジングデータセンターは、設備の老朽化も進んでおり、変化するITインフラに合わせた再構築が求められるケースが増えている」と説明する。
こうした課題に対し、岡田氏はそれぞれの対応策を紹介した。まず、高発熱機器に対する冷却方式については、「生成AI関連のITインフラは、増加し続ける処理能力に対して適切な冷却能力を維持するため、これまでの空冷方式ではなく水冷サーバーが採用される傾向がある」と岡田氏。その上で、水冷システムに対応するため新しく必要となる設備として、チラーからの冷水とサーバー冷却水の熱交換を行う設備や、直接冷水を取り込んで冷却する機器、空冷機器に対してラック扉に冷水を流し、冷却効率を上げるための装置などを挙げた。
カーボンニュートラルへの対応については、データセンターの消費電力内訳のうち空調が40~50%を占めていることから、「空調コスト削減のためにも、システムが安定稼働できる信頼性を維持しつつ、最小限の空調を稼働させるよう効率化を図ることが重要だ」と岡田氏。それを実現するために考慮すべきポイントとして岡田氏は、「適切なアイルを形成することや、ラックデザイン、冷風供給ルート、排熱回り込みを考慮することだ」とした。
老朽化については、単なる施設の古さだけでなく、ハイブリッド化などインフラの変化に合わせた設備の見直しも必要となる。そのためにも、「まずはデータセンターファシリティ環境の把握が重要だ」と岡田氏。具体的には、データセンターの稼働率や床面積、電力量などのほか、設備の劣化や老朽化状況を把握して整理し、どのようなライフサイクルで更新が必要かを明確にする必要があるという。また、運用コストも10年などの長期で必要なコストを把握するべきだとしている。
「データセンターを適正に維持するには、システム中長期計画と密に連携し、変化する要求事項をできる限り前もって把握し反映することが求められる。そのためには、現状のファシリティ稼働率や設備のライフサイクルを把握し、反映のタイミングを逃さず対応することが重要だ」と岡田氏は述べた。