「チオビタ・ドリンク」・「ソルマック」などのヘルスケア商品で広く知られているとともに、抗がん剤のリーディングカンパニーでもある大塚ホールディングス傘下の大鵬薬品工業株式会社。急速な社会変化に対応するため、現在、全社をあげてDX推進を行っており、その柱の1つとしてDX人財育成を重要な活動だと位置付けている。「知識をインプットするだけでなく、学びをビジネスとしてのアウトプットにつなげていきたい」という思いから、手を動かしながらの実践的な学習がセットになっているSIGNATE Cloudの導入に至ったそうだ。今回、デジタル・IT統括部(ビジネスデザイン課)の保﨑さん、平出さん、張さんの3名にSIGNATE Cloudをセレクトした理由や活用方法、導入によって実感できた効果などをお聞きした。様々なルーツを持つ、デジタル・IT統括部のメンバー(写真左から、平出さん、保﨑さん、張さん)—— まずは、皆さんのキャリアを教えてください。保﨑:私はデジタル・IT統括部の部長およびビジネスデザイン課の課長を兼任しています。ビジネスデザイン課は全社のDXを推進する役割を担っている部署です。私自身は大鵬薬品に入社して21年目になりますが、一貫してIT分野での業務に携わってきました。途中、大塚ホールディングスへの出向時には、大塚グループ全体のIT企画も経験し、大鵬薬品に戻ってきて、現在部長を務めているという経歴です。弊社のデジタル・IT部門は、私と同様に一貫して弊社のIT関連の業務に携わってきた社員が最も多いですが、キャリア入社や他の業務部門からの異動者でバランス良く構成されています。平出:私は中途で大鵬薬品に入社しました。キャリアのスタートとしては専門商社で営業を経験し、その後、美術の学校でデザインを学びました。次に、食品会社でシステム開発に携わった後、大鵬薬品に入社しGxP関連をはじめとした各種社内システムの導入に携わりました。2023年1月にビジネスデザイン課に異動となり、現在は主に人財育成面から全社的なDX推進を手掛けており、育成すべきDX人財のロール設計や、育成方針の策定、設定したロールを担う人財を育成するための有効なプログラムの企画・検討などに取り組んでいます。張:私も2024年1月よりビジネスデザイン課に異動になり、平出と同じようにDX推進、特に研修や制度設計などを担当しています。デジタル分野に関しては、この部署に異動になってから初めて学んでいるところです。これまでのキャリアとしては、薬学部を卒業して、入社後はしばらく研究の仕事に就いた後、経営企画部において、経営層の判断支援や内部統制、基幹システムの入替など幅広く全社業務に携わりました。その後、新たにサステナビリティの部署の立ち上げからSDGsの全社推進・社内共感を促す施策の実施・対外発信まで携わってきました。SIGNATE Cloudの導入・活用にあたっては、私自身も受講者の方々と同じように0から一緒に学んでいけたらいいなと考えています。—— 皆さん、様々なルーツをお持ちなのですね!全社アセスメントで、デジタル教育を強化する必要性を認識—— SIGNATE Cloud導入前は、どのような課題を抱えていましたか?平出:2023年に社内にはどのような人財がいるかを把握するために、他社のDXスキルアセスメントを全社で実施しました。その上で、希望者にはeラーニングを展開し、1500名以上の社員が受講しました。ただし、アセスメントとセットで展開した講座の内容はあくまでも基礎的な内容でしたので、知識の底上げにはつながったものの、業務内でアウトプットできるほどの実践的なスキル習得には至っていませんでした。保﨑:アセスメントの結果を見て、DX推進にあたって高いレベルで変革の意志を持った社員は一定数いますが、変革を実現するための手段となる「デジタル」に強い社員が比較的少ないという実態が把握できました。アセスメントで判明した課題を解決するために、実用的な「デジタル」に関する知識やスキルのインプットに力を入れていく必要があると考えました。—— 課題解決に向けて、実際にどのような取り組みをされたのでしょうか?平出:DXアセスメントで全社のDXスキルレベルを把握した後に、弊社のDX推進に必要な具体的な役割(=ロール)の設計に着手しました。ロールの設計は、約半年をかけて内製で行いました。その際、完全に1から考えるのではなく、経産省が公開しているデジタルスキル標準に定義されている人財ロールを参考に、弊社用にカスタマイズする形で進めました。例えば、弊社ではDXに必要な人財像の一つとして「データサイエンティストロール」を挙げています。ただし、デジタルスキル標準をそのまま引用するのではなく、弊社の「データサイエンティストロール」として必要なスキルを弊社の観点から再定義しました。各ロールの役割をイメージしやすいように、具体的な事例の提示や定量的な基準を持って定義したのが工夫した点です。関係各所と相談し、意見をもらいながら設計していきました。—— 御社では、データサイエンティストの育成にあたって、新たな部門を作るのか、あるいは既存の部署に配置するのか、どちらの方針で進められているのでしょうか?保﨑:まだ検討中ですが、現時点では各バリューチェーンの現場において、データの意味・価値を理解しながら扱う社員が必須と考えているので、各部門と連携し育てることを考えています。現場でビジネスを理解している社員に対して、データの取り扱い知識習得・スキル育成を行うと共に、デジタル・IT統括部ではより専門的な分析手法・サービスの知識を深め、各バリューチェーンを技術面で支援していきたいとの考えです。—— 「ビジネスでの成果」を目指す姿勢が、ここにもしっかり現れていますね。SIGNATE Cloudの魅力は「実践的な学習」—— SIGNATE Cloudを導入するまでの経緯について、詳しく教えていただけますでしょうか?平出:ロールの設計後、次に弊社のデータサイエンティストロールを育てていくためには、どのようなプログラムが必要かというプロセスで検討を進めました。その中で、SIGNATE Cloudの「サービス環境内で手を動かしながら学べる点」に魅力を感じました。クエスト、コンペなど様々なスタイルで実践的な学習ができることも魅力の一つです。もう一点、経産省が主催する「マナビDX Quest」というデジタル推進人財育成プログラムに私自身が参加し、プログラム内で提供されるSIGNATE Cloudを実際に利用させていただいたことで、コンテンツの質の高さを実感していたため、自信を持って社内で展開することが出来ました。私以外にも50名ほどの社員が「マナビDX Quest」に自主的に参加し、そこでの評判も非常に良かったので、導入はスムーズに進みました。中間アンケートでは、利用満足度90%を記録—— 実際にSIGNATE Cloudを導入してみての成果や効果、感想があればお聞かせください。張:この2月から始まり、これまでに受講したのは100名で、今後6ヶ月での入れ替え制で合計200名を予定しています。現時点での中間アンケートでは受講者の利用満足度90%と、非常に高く評価されています。高い満足度の要因としては、「内容がわかりやすい」「様々なレベルの学習に対応している」「答え合わせもできる」などが挙げられると考えられます。一方で、インプットだけでなく、その先の業務での活用も大事だと思いますが、そちらに関しては受講スタートして2ヶ月なので、まだ効果を実感できていない方も半数います。とはいえ、現時点で「役に立っている」と回答している社員が42%いるという確かな結果も集まっています。平出:私としては、コース設計がしやすかった点を強調したいです。Pythonを学べるコースやExcelを学べるコースなどがデフォルトでありますが、それを少しカスタマイズして弊社の定めているDX人財ロールに当てはめて、コース展開をしました。デフォルトのコンテンツがしっかりしていたので、弊社に合わせたカスタマイズも非常にスムーズでした。受講者にとっても自分が学びたい内容とコースがマッチしやすかったと思います。保﨑:今回のアンケート結果は、「社内の中でも意識の高い社員が率先して受講している」というのも大きい要因であると感じていますが、具体的な課題感を持って取り組んでいる受講者が多い印象です。SIGNATE Cloudは、そうした受講者の「課題」と「学び」をしっかり繋いで、知識習得やスキルアップをフォローできる点が大きな魅力だと感じています。勉強会や中継イベントで、受講者のモチベーションアップUP—— 実際にSIGNATE Cloudを運用していく上での工夫があれば教えていただけますか?張:すでにいろいろと施策を打っていまして、例えば、1人で黙々と学習やるのではモチベーションの維持が難しいと考えて、オンライン交流会を設けました。自己紹介に始まり受講の目的や短期長期のビジョン、悩みなどをそれぞれが発表して、お互いがアドバイスしたり情報交換したりしてコミュニケーションを取っています。同じように学びに取り組む仲間の存在が、きっと学習意欲の向上につながっていくものと考えています。あとは、アセスメントの受検はなかなかハードルの高い方も多いので、当課所属の成績優秀な方が問題を実際に解いていく様子を、リアルタイムでオンライン公開する中継イベントも実施しました。自由参加のイベントでしたが、50名もの受講者が視聴してくれました。実際に解答していくプロセスを見ることで、アセスメント受検のモチベーションにつながってくれたのではないかなと思っています。そのほか、受講者のメーリングリストに向けて、現在の受講者全体の進捗や、受講者から問い合わせがあった内容などを定期的に配信しています。例えば、受講者からは「Pythonでコードを入力する際にエラーが出てしまう」「エラーの原因がわからない」などの悩みなどが寄せられた際には、解決策として「ChatGPTを使うと良いよ」といったノウハウを提供します。プログラミングのリテラシーがある人からすれば当たり前の基本的な知識であっても、受講者全員が知っているわけではないので、そうした情報をできるだけ丁寧に情報発信しています。—— 初学者の中には「なかなか自分から質問できない」という悩みを抱えている方もいます。貴社のこれらの取り組みは、そういった方にとっても、非常に頼もしいものだと思います。張:こうした施策の甲斐あって、積極的に取り組んでくれる社員も増えてきています。しかし、当然そうではない社員も一部おりますので、どのように底上げしていくかを考えていく必要があると感じています。—— SIGNATEでは、専門家が疑問やお悩みに回答する『Q&Aサービス』や、特定の講座・スキルを深堀する『補講研修』も提供していますので、お力になれることがあれば、今後もぜひお気軽にご相談ください。張:ありがとうございます。やる気のある社員が増えてきていますので、その人たちが得意なことをさらに伸ばして、周りを巻き込んでさらに盛り上がっていくよう検討してみます。学習内容を実務に繋げ、会社に還元される流れを作りたい—— 今後、SIGNATE Cloudを通じた人財育成で、どのようなことに取り組んでいきたいですか?張:受講者の方々を見ていると、みなさんモチベーションを高めたいと考えている印象を受けます。なので、学んだ内容をしっかりアプトプットでき、それが業務だけでなく、職場や会社にも還元されていくという流れを作ることで、みなさんのモチベーションを最大限に高めていきたいですね。1人が変わることで周囲も変わっていくと思いますので、この取り組みを通じて人財育成の効果を全社に波及させていきたいと考えています。それが、新たなことにチャレンジしていく会社の組織風土づくりに繋がるはずですし、最終的には業務の効率化や、抗がん剤の研究開発や製造といった基幹事業における新たな価値創出、その結果として患者さんの幸せによりいっそう貢献するという好循環が生み出せたらいいなと思います。保﨑:現時点の課題として、「ビジネス面での成果」というアウトプットを行う必要性を痛感しています。単にトレーニング・研修などの場でのインプット・アウトプットという意味ではなく、手を動かし、日々の業務で活用する機会を無理矢理にでも作らないといけないですね。一人一人の学習を「ビジネス面での成果」に繋げるために—— 学習成果を日々の業務で活用するために、どのような機会を作られていますか?平出:施策の一つとして、データの扱いに関して、関係部署と調整しながら利用範囲の拡大に取り組んでいます。例えば、生成AIで生成する画像についても、著作権等の問題を踏まえて線引きする基準を知財・法務などの部署とも相談し、適切な活用方法等についての検討も進めています。保﨑:平行して、データ格納・分析基盤の構築も行っています。各本部・部門から全社的に使えるデータを提供してもらい、それを1カ所に集約し社員が分析に活用できる基盤を作っている最中です。SIGNATE Cloudを受講して、一定のレベルに達し、自身でデータを活用できる様になった社員にアクセス権を与え、実務で活用していただこうと考えています。社内に存在する、自部署以外のデータを見たときに、面白い組み合わせや新しい観点などが思いつく社員が1人でも多く出てくれば素晴らしいなと思っています。平出:学んだことを実務に活かしていくことはなかなか難しいと感じています。学ぶことに特化したサービスは多くありますが、ただ知識を得るだけだと実際のデータを前にしても、データと知識を結びつけることが出来ず、活用までには至りません。その意味で、SIGNATE Cloudは視聴するだけの学習ではなく、手を動かしながらの実践的な学習もセットになっているので、知識の習得と、実務での活用のブリッジとなるような学習ができるのではないかと考えています。その点を特に高く評価していますし、効果に期待しています。受講者が学びやすい環境と、さらなる高度な学習機会をつくる—— SIGNATE Cloudを使うのは業務時間内でやっていますか?保﨑:基本的には一定の基準を定め、業務時間内の活用を推奨しています。受講者によっては更なる研鑽のため、土日や通勤時間中などを活用して、自主的に学習を進めている方もいます。みなさん上手く時間をやりくりしていて、上手くやりくりしている社員ほどしっかり結果が出ている印象です。張:受講者の所属する部署の理解・共感も、配慮しなければならない点だと感じています。所属部署からも理解や協力が得られるように、私たちからも積極的に情報を発信していき、受講者が学びやすい環境を作っていきたいですね。平出:ほかには、まさに現在検討を進めている部分ですが、さらに高度なスキルを身につけるための学習機会の提供についてもこれから実現していきたいと考えています。—— SIGNATEでは、eラーニングの受講後に業務への応用を体験する集合研修の開催や、PoCの作成や実際のプロジェクト進行までサポートするサービスも手掛けており、近年、ご相談件数も増えてきています。様々なアドバイスやソリューション提案もできますので、ぜひ営業担当までご相談ください。保﨑さん、平出さん、張さん、本日は貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました!※掲載内容は取材当時のものです。