どの業界も下請けは苦しいという時代に、どう生きていくか。建築業界のマーケットが弱り続けている中で、林業や製材、そして材木屋や建材屋が、ただ下請けに甘んじているなら、自分たちが潰れてしまうことは目に見えています。ではどうすればいいでしょうか。まず、新規マーケットを新規商品で作るという前にやるべく答えは、大きく分ければ2つです。
(1)「伸びている建築屋(元請)を探し、ついていく」
(2)「自分でユーザー(顧客)をつくっていく」
このどちらかしかありません。背に腹は代えられないのです。だからといって、単に流通を飛び越えるべし、というのは短絡的な考えです。流通業が担っている、在庫調整、仕分、物流、与信管理等の機能は、誰かがどこかでやらねばなりません。声を大にして伝えたいのは、「マーケットに対してサボっている人と付き合わない」ということです。時流に対して変化をしない単なる在庫屋、倉庫屋、配達屋になっている業者であれば、付き合わなければよいでしょう。顧客の新旧は関係ありません。公共事業でしょうが、一般建築でしょうが、価格を下げることでしか仕事を取れない会社の下請けであり続けてはならないのです。そのような取引では、下請け業者にはコスト削減のしわ寄せしかやってこないからです。
元請けとともに成長し、「脱・下請け化」へ
情報商材を持ってくる、マーケットを作るといった取り組みをしているか否かが見極めどころです。エンドユーザーに新たな価値を提供しておらず、提案力がない会社の下請けになり続けている状態は、座して死を待つことと一緒です。そもそもこの業界、仕事が取れなければ、「だったら、いくらならいいですか?」といって価格を下げてやってきただけの世界。価格を下げるだけの営業は、誰でもできるのです。ある製材メーカーでは「使ってください」「買ってください」「安くします」という3つのワードは絶対に言わないと決めています。高い製品力と幅広い提案力をもって、「脱・下請け」を達成しています。すると一般顧客が製材メーカーへ直接「あなたのところの木(商品)を使いたい」と問い合わせてくるのです。元請だって、市場開拓は楽ではないのです。一緒に考えないといけない。だからこそ、下請け業者が自分達の利益を獲得するには、
①このままだと自らが死んでしまうような元請の仕事は、断る勇気を持つこと
②より良い商品・サービスを提案し、元請を喜ばせること
③元請をサポートするよう、共に新たなエンドユーザーを創造すること
④新規の元気な元請を探し続けること
⑤一度は、自ら直接に元請(に近いこと)をやってみること
この5つが、「脱・下請け」のポイントです。
座して死を待つのみですか?
統計を見ると、向こう10年弱の間に製材所はゼロになるくらいのペースで、廃業・倒産の数は推移しています。“負け残り”というポジションもありますが、時流とか制度とか補助事業に乗って業界が商売するのではないのです。価格を下げることでしか商売できない顧客とは付き合わない。「みんなでやろう」「いつかやろう」って牧歌的な民主主義でやっていけるほどマーケットは甘くないのです。まず、自分が動きましょう!
(ちいきのジャーナル 2014年2月号より編集)
代表取締役 | 代表コンサルタント 古川 大輔 Daisuke Furukawa
twitter: @daisukefurukawa
blog: 地域再生・森林再生コンサルタント日記
新潟県生れ、東京都町田市育ち。大学院時代、全国の農山村地域を巡り、研究の道を捨て博士課程中退。㈱船井総合研究所主任、㈱アミタ持続可能経済研究所客員主任研究員、㈱トビムシを経て独立し、㈱古川ちいきの総合研究所を設立。船井総研時代に「地域ブランド創造チーム」設立。以後、地域ブランド創造を切り口に、地域再生、森林再生に携わる。㈱トビムシでは、ニシアワー(森の学校)設立前支援、高野山・高野霊木プロデュース、経営実践研究会の実施等を行い、全国の林業木材業・地域づくりに関わる支援実績、講演多数。奈良県川上村観光PRかみせ大使、高野山金剛峯寺境内案内人。