Starting Over 【大判】
2018.02.17
昔、いまより遠くまで自転車を走らせていたころ、ときどき永福町のCDショップまで足を延ばした。
ルートとしては、西荻窪駅南口から神明通りを通る。
五日市街道や井ノ頭通りより車が少なく走りやすいから。
神明通りを駅からけっこう離れて商店が途絶えるあたり、いかにもちゃんとしていそうなせんべい屋を見つけたのは10年以上前のこと。
店先にせんべいの生地が天日干ししてある。古い小さなお店のたたきでは、実直そうなおじさんが一枚一枚ていねいに炭火で焼いている。
最初何を買ったか覚えていないが、おまけに個包装してある“壊れ”をもらったのを覚えている。
その後、ごくたまにではあるが、そのせんべい屋「大判」に寄るようになった。買うたびにおまけをくれた。
去年のひなあられ。ただし、化粧袋は毎年たまっていっていて、これは数年前の使い回し
たまたま2月に通りかかったとき、店頭にひなあられが並んでいた。ポン菓子ではなく、おかきタイプ。
それからは大判のひなあられがわが家の定番になった。
そっち方面に行かなくなって久しいが、1年に1回、ひなあられだけは必ず買いに行った。
今日は陽気もいいので、散歩がてら上石神井から歩いてひなあられを買いに行くことにした。
ルートとしては、青梅街道の上井草四丁目交差点からバス通りに入り、井草八幡の西側を南下、善福寺公園の東で善福寺川沿いの遊歩道へ。川が北向きに蛇行するあたりから西荻の街に上る。
途中、昼ごはんのお店をチェックしながら駅南口の雑踏~神明通りと歩く。
大判は駅からけっこう遠い。
自転車では毎回、「こんな遠かったか? 通り過ぎちゃったか?」と思い始めるころに到着する。
不思議なことに、歩きではそれほど苦になる距離には感じられない。
店頭のワゴンが寂しい感じ。2つあるうち1つは空っぽだ。
例年、このワゴンにひなあられが並べてある。
ガラス戸に「お知らせ」の張り紙。
嫌な予感がした。
――今年より、「ひなあられ」は製造終了となりました。
お店のおかあさんが出てきた。
「商品を減らすことにしたんですよ。もう焼くのが大変で」
ひなあられは種類が多いから特に大変だったのだそうだ。
たしか、おかき5~6種類の詰め合わせで、すべて手焼きだったのだから。
「でも、いまも焼き上がるそばから売れていっちゃって…」
その時点で買えるのはワゴンに載っているザラメのおかき1種類だけとのこと。
ザラメを購入
「毎年ひなあられ、楽しみだったんですよ」
と言うと、おかあさんは丁重に
「それはどうもありがとうございました」と。
おとさんは黙々とあられを焼いている。
ていねいに接客してくれる印象だったが、そういう雰囲気ではない。傷つけられたように、ムスッと。無念さがにじんでいるようにも映る。
ひとまず、おつかれさまでした。
これからはもっといっぱい買いに行こう。
[DATA]
大判
東京都杉並区西荻南4-2-3
http://okaki.ooban-koban.com/index.htm
[Today's recommendation]
https://youtu.be/pZCxyOcvp5A
昔、いまより遠くまで自転車を走らせていたころ、ときどき永福町のCDショップまで足を延ばした。
ルートとしては、西荻窪駅南口から神明通りを通る。
五日市街道や井ノ頭通りより車が少なく走りやすいから。
神明通りを駅からけっこう離れて商店が途絶えるあたり、いかにもちゃんとしていそうなせんべい屋を見つけたのは10年以上前のこと。
店先にせんべいの生地が天日干ししてある。古い小さなお店のたたきでは、実直そうなおじさんが一枚一枚ていねいに炭火で焼いている。
最初何を買ったか覚えていないが、おまけに個包装してある“壊れ”をもらったのを覚えている。
その後、ごくたまにではあるが、そのせんべい屋「大判」に寄るようになった。買うたびにおまけをくれた。
去年のひなあられ。ただし、化粧袋は毎年たまっていっていて、これは数年前の使い回し
たまたま2月に通りかかったとき、店頭にひなあられが並んでいた。ポン菓子ではなく、おかきタイプ。
それからは大判のひなあられがわが家の定番になった。
そっち方面に行かなくなって久しいが、1年に1回、ひなあられだけは必ず買いに行った。
今日は陽気もいいので、散歩がてら上石神井から歩いてひなあられを買いに行くことにした。
ルートとしては、青梅街道の上井草四丁目交差点からバス通りに入り、井草八幡の西側を南下、善福寺公園の東で善福寺川沿いの遊歩道へ。川が北向きに蛇行するあたりから西荻の街に上る。
途中、昼ごはんのお店をチェックしながら駅南口の雑踏~神明通りと歩く。
大判は駅からけっこう遠い。
自転車では毎回、「こんな遠かったか? 通り過ぎちゃったか?」と思い始めるころに到着する。
不思議なことに、歩きではそれほど苦になる距離には感じられない。
店頭のワゴンが寂しい感じ。2つあるうち1つは空っぽだ。
例年、このワゴンにひなあられが並べてある。
ガラス戸に「お知らせ」の張り紙。
嫌な予感がした。
――今年より、「ひなあられ」は製造終了となりました。
お店のおかあさんが出てきた。
「商品を減らすことにしたんですよ。もう焼くのが大変で」
ひなあられは種類が多いから特に大変だったのだそうだ。
たしか、おかき5~6種類の詰め合わせで、すべて手焼きだったのだから。
「でも、いまも焼き上がるそばから売れていっちゃって…」
その時点で買えるのはワゴンに載っているザラメのおかき1種類だけとのこと。
「毎年ひなあられ、楽しみだったんですよ」
と言うと、おかあさんは丁重に
「それはどうもありがとうございました」と。
おとさんは黙々とあられを焼いている。
ていねいに接客してくれる印象だったが、そういう雰囲気ではない。傷つけられたように、ムスッと。無念さがにじんでいるようにも映る。
ひとまず、おつかれさまでした。
これからはもっといっぱい買いに行こう。
[DATA]
大判
東京都杉並区西荻南4-2-3
http://okaki.ooban-koban.com/index.htm
[Today's recommendation]
https://youtu.be/pZCxyOcvp5A