かつおの追憶 ――発酵で旅する東京の森
2022.11.23
この季節には珍しく一日中本降りの雨予報で、お出掛けするにしても屋内施設かな… ということで、立川の「GREEN SPRINGS」へ。
在日米軍立川基地跡地の昭和記念公園東側エリア最後の巨大再開発といわれた施設で、2020年4月開業。
自転車でよく目の前を通っていながら、そんなものができていたことをまったく知らなかったという。

で、行ってみれば思っていたようなショッピングモールではなく、店舗外の共用スペースは屋外で、雨には無力なのだった ( ̄- ̄;)ンー

まあ天気のことはおいといて、「GREEN SPRINGS」では「Fermentation Tourism Tokyo 発酵で旅する東京の森」というイベントが行われており、目的はそれ。

青梅線沿線の5市(立川、昭島、福生、羽村、青梅)を中心とした魅力を発酵食品を通して掘り起こすというイベントということで、小澤酒造(青梅市)はずいぶん前からなじみがあるし、石川酒造や田村酒造場(どちらも福生市)も行ってみて驚かされ、酒まんじゅうと聞けばうずうずし、チョコレートはビーントゥバーのあそこかな… などと思いをめぐらせながら、GREEN SPRINGS内のポップアップスペース「TAKEOFF-SITE」を訪れた。

世の中、発酵ブームである。もう10年以上続いているらしい。
美容・健康によく、免疫機能を高め、長寿の秘訣だったりするらしい。
雑誌やテレビで特集されることもしばしばあり、みそやぬか漬け、ヨーグルトまで自作する人が出てきたりする。

実はわが家のみそ造りも30年近く続いている。
長続きの秘訣は、単純においしいから。
微生物の力は人知の及ばないところにあることを身をもって経験している。

17世紀以前よりあきる野市で醸造を行っていた記録のある酒蔵の銘柄を石川酒造が復刻させたという「八重菊」を買う
――発酵食を巡る旅をテーマに日本酒、酒まんじゅう、郷土食「打ちいれ」など、日本古来の発酵食品はもちろん、ビール、チョコレート、パンなど近年多摩エリアで作られ、食されている発酵食も紹介!(発酵で旅する東京の森HP)
という多摩の出展内容も見応えあるが、圧巻は同時開催の47都道府県の発酵食を集めた企画展。
物販も連動して取りそろえられており、テンション上がってあれこれ買い込んでしまった。



金沢こんかこんか、潮かつお、松浦漬け、刻み生しば漬、碁石茶、しょうゆキャラメル
特に潮かつおには感慨深いものがある――

伯父(母の兄)の経営する海運会社で働いていた父は漁船をやるのが悲願で、伯父にかけあってカツオ船の子会社を立ち上げ、2度失敗したが3度目の正直で船員に恵まれ、水揚げ日本一を7年連続で達成している。
遠洋カツオ船は塩を積んで出漁する。獲れすぎて冷凍船倉がいっぱいになったときに塩漬けにするためだ。“だぶ漬け”と呼ばれるそれは売り物ではなく、船員で配分したり船主が引き取ったりする。
10年ほど前、伯父にそういう話を聞かされ、「それはうまそう」と言うと、「ん、今度送っておく」と。口先とは思いつつ、実は少し期待していた。
伯父は一昨年亡くなり、父も今年亡くなり、とうとうだぶ漬けが送られてくることはなかった。

最近テレビで、伊豆の松崎に塩蔵カツオの文化が残されていることを知った。
それが潮かつおで、だぶ漬けと同様の伝統的かつお保存食である。
遣り損なっていた大切なことを補えた気がしたのだった。

“金沢こんかこんか”(さばのぬか漬け)(左)と、軽くあぶった“潮かつお”(右)
「発酵で旅する東京の森 Fermentation Tourism Tokyo」は12月4日(日)まで。

[DATA]
〈発酵で旅する東京の森 Fermentation Tourism Tokyo〉
https://fermentation-touris.tokyo/
〈TAKEOFF-SITE〉
東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS内
https://greensprings.jp/shop/takeoff_site/
[Today's recommendation]

https://youtu.be/48RCGKdoiZg




次号予告
この季節には珍しく一日中本降りの雨予報で、お出掛けするにしても屋内施設かな… ということで、立川の「GREEN SPRINGS」へ。
在日米軍立川基地跡地の昭和記念公園東側エリア最後の巨大再開発といわれた施設で、2020年4月開業。
自転車でよく目の前を通っていながら、そんなものができていたことをまったく知らなかったという。

で、行ってみれば思っていたようなショッピングモールではなく、店舗外の共用スペースは屋外で、雨には無力なのだった ( ̄- ̄;)ンー

まあ天気のことはおいといて、「GREEN SPRINGS」では「Fermentation Tourism Tokyo 発酵で旅する東京の森」というイベントが行われており、目的はそれ。

青梅線沿線の5市(立川、昭島、福生、羽村、青梅)を中心とした魅力を発酵食品を通して掘り起こすというイベントということで、小澤酒造(青梅市)はずいぶん前からなじみがあるし、石川酒造や田村酒造場(どちらも福生市)も行ってみて驚かされ、酒まんじゅうと聞けばうずうずし、チョコレートはビーントゥバーのあそこかな… などと思いをめぐらせながら、GREEN SPRINGS内のポップアップスペース「TAKEOFF-SITE」を訪れた。

世の中、発酵ブームである。もう10年以上続いているらしい。
美容・健康によく、免疫機能を高め、長寿の秘訣だったりするらしい。
雑誌やテレビで特集されることもしばしばあり、みそやぬか漬け、ヨーグルトまで自作する人が出てきたりする。

実はわが家のみそ造りも30年近く続いている。
長続きの秘訣は、単純においしいから。
微生物の力は人知の及ばないところにあることを身をもって経験している。

17世紀以前よりあきる野市で醸造を行っていた記録のある酒蔵の銘柄を石川酒造が復刻させたという「八重菊」を買う
――発酵食を巡る旅をテーマに日本酒、酒まんじゅう、郷土食「打ちいれ」など、日本古来の発酵食品はもちろん、ビール、チョコレート、パンなど近年多摩エリアで作られ、食されている発酵食も紹介!(発酵で旅する東京の森HP)
という多摩の出展内容も見応えあるが、圧巻は同時開催の47都道府県の発酵食を集めた企画展。
物販も連動して取りそろえられており、テンション上がってあれこれ買い込んでしまった。


![]() | ![]() | ![]() |

金沢こんかこんか、潮かつお、松浦漬け、刻み生しば漬、碁石茶、しょうゆキャラメル
特に潮かつおには感慨深いものがある――

伯父(母の兄)の経営する海運会社で働いていた父は漁船をやるのが悲願で、伯父にかけあってカツオ船の子会社を立ち上げ、2度失敗したが3度目の正直で船員に恵まれ、水揚げ日本一を7年連続で達成している。
遠洋カツオ船は塩を積んで出漁する。獲れすぎて冷凍船倉がいっぱいになったときに塩漬けにするためだ。“だぶ漬け”と呼ばれるそれは売り物ではなく、船員で配分したり船主が引き取ったりする。
10年ほど前、伯父にそういう話を聞かされ、「それはうまそう」と言うと、「ん、今度送っておく」と。口先とは思いつつ、実は少し期待していた。
伯父は一昨年亡くなり、父も今年亡くなり、とうとうだぶ漬けが送られてくることはなかった。

最近テレビで、伊豆の松崎に塩蔵カツオの文化が残されていることを知った。
それが潮かつおで、だぶ漬けと同様の伝統的かつお保存食である。
遣り損なっていた大切なことを補えた気がしたのだった。

“金沢こんかこんか”(さばのぬか漬け)(左)と、軽くあぶった“潮かつお”(右)
「発酵で旅する東京の森 Fermentation Tourism Tokyo」は12月4日(日)まで。

[DATA]
〈発酵で旅する東京の森 Fermentation Tourism Tokyo〉

〈TAKEOFF-SITE〉
東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS内

[Today's recommendation]

https://youtu.be/48RCGKdoiZg




次号予告