単なるノスタルジアにあらず 【河内屋】
2022.07.31
前々記事、前記事に続き相模湖編第3弾。
かき氷屋さん「迷夢」でひと休みして、時刻はもうすぐ11時。おなかもすいてきた。
前記事冒頭に書いた“いかにも昭和という趣ある店構えの食堂”「河内屋」は、迷夢の4~5軒先にある。
そのわずか30~40mの距離が、時間にして果てしなく遠いものとなるのだった。

…って、店がなかなか開かなかっただけなんだが、最初に店主さんと立ち話をした10時の時点で開いているように見え、その思い込みにとらわれたのがいけなかった。

10時半、11時とキリのいい時刻を回っても“準備中”の札は下がったままで、もうそろそろ開く! と、11時半まで粘ってしまったと。

しかし一期一会と思えば待つしかない状況なわけで、実際、相方が向かいのスワン丸の呼び込みのおっちゃんに聞いてきた情報によれば「河内屋」の開店時間は「いつもは12時ごろ」らしいので、11時半に開いたのはご縁により特別だったのかも。
外観から思い描いていた印象とはだいぶ異なる店内の雰囲気に戸惑う。
思ったより広く、明るく、きれい。

特にイメージと違うのが床で、思っていたコンクリート打ちっ放しではなく板張りである。あとBGMが微妙に古い洋楽。
どちらかというと、昭和の定食屋というより昭和の喫茶店かなぁ…。
注文は、ラーメンは決まりとしてもう1品、カレーと焼きそばで大いに悩む。
店のありようが“街の食堂”と“海の家”の性質を併せ持つだけに、懐古的にはどれも捨てがたい。
結局、焼きそば好きの相方の意向により焼きそばに。

店内のイメージはいわゆるレトロとはちょっと違ったけれども、ラーメンは思ったとおりの見た目と味。
チャーシュー、メンマ、ノリ、ナルト、ネギ…。
オーソドックスな鶏ガラスープはすっきりしていて、風味が意外に上品でもある。

高校のころ駅前の食堂で食べたような、伊豆の堂ヶ島の海の家で食べたような… いろんな光景がよみがえる。

焼きそばも駅前もしくは縁日の屋台かなぁ…。

と思えば、いやいやニンジン、タマネギ、ピーマン、キャベツ、モヤシと野菜たっぷりで、女性らしい気配り。
麺の細さも案外珍しく、見た目より完成度が高いのであった。

「どれくらいやられてるんです?」と聞いてみた。
「この店の創業は昭和24年なんです」と返ってきた。
「えーと、ダムができたのって…?」
「戦後すぐですね」
つまり相模湖ができた直後からこの地で営業している。

「昔はにぎわいました。遊覧船の乗り場に行列ができてましたから。(先の)東京オリンピックをきっかけに盛り上がっていったんです」
知らなかったが、相模湖は1964年東京オリンピックでカヌー競技の会場だったらしい。
そんな過日の繁栄と現下の斜陽を語るのに恨み節にならないのは、お店を愛し、ともにいまを生きているからだと思った。
レトロ要素の“さびれ感”など入り込む余地がないほど、日々手が入れられているのだなぁ… と、そういうものを期待したであろう自分を恥じるのだった。

[DATA]
河内屋
神奈川県相模原市緑区与瀬385
[Today's recommendation]



https://youtu.be/POWsFzSFLCE
前々記事、前記事に続き相模湖編第3弾。
かき氷屋さん「迷夢」でひと休みして、時刻はもうすぐ11時。おなかもすいてきた。
前記事冒頭に書いた“いかにも昭和という趣ある店構えの食堂”「河内屋」は、迷夢の4~5軒先にある。
そのわずか30~40mの距離が、時間にして果てしなく遠いものとなるのだった。

…って、店がなかなか開かなかっただけなんだが、最初に店主さんと立ち話をした10時の時点で開いているように見え、その思い込みにとらわれたのがいけなかった。

10時半、11時とキリのいい時刻を回っても“準備中”の札は下がったままで、もうそろそろ開く! と、11時半まで粘ってしまったと。

しかし一期一会と思えば待つしかない状況なわけで、実際、相方が向かいのスワン丸の呼び込みのおっちゃんに聞いてきた情報によれば「河内屋」の開店時間は「いつもは12時ごろ」らしいので、11時半に開いたのはご縁により特別だったのかも。
![]() | ![]() | ![]() |
外観から思い描いていた印象とはだいぶ異なる店内の雰囲気に戸惑う。
思ったより広く、明るく、きれい。

特にイメージと違うのが床で、思っていたコンクリート打ちっ放しではなく板張りである。あとBGMが微妙に古い洋楽。
どちらかというと、昭和の定食屋というより昭和の喫茶店かなぁ…。
![]() | ![]() |
注文は、ラーメンは決まりとしてもう1品、カレーと焼きそばで大いに悩む。
店のありようが“街の食堂”と“海の家”の性質を併せ持つだけに、懐古的にはどれも捨てがたい。
結局、焼きそば好きの相方の意向により焼きそばに。

店内のイメージはいわゆるレトロとはちょっと違ったけれども、ラーメンは思ったとおりの見た目と味。
チャーシュー、メンマ、ノリ、ナルト、ネギ…。
オーソドックスな鶏ガラスープはすっきりしていて、風味が意外に上品でもある。

高校のころ駅前の食堂で食べたような、伊豆の堂ヶ島の海の家で食べたような… いろんな光景がよみがえる。

焼きそばも駅前もしくは縁日の屋台かなぁ…。

と思えば、いやいやニンジン、タマネギ、ピーマン、キャベツ、モヤシと野菜たっぷりで、女性らしい気配り。
麺の細さも案外珍しく、見た目より完成度が高いのであった。

「どれくらいやられてるんです?」と聞いてみた。
「この店の創業は昭和24年なんです」と返ってきた。
「えーと、ダムができたのって…?」
「戦後すぐですね」
つまり相模湖ができた直後からこの地で営業している。

「昔はにぎわいました。遊覧船の乗り場に行列ができてましたから。(先の)東京オリンピックをきっかけに盛り上がっていったんです」
知らなかったが、相模湖は1964年東京オリンピックでカヌー競技の会場だったらしい。
そんな過日の繁栄と現下の斜陽を語るのに恨み節にならないのは、お店を愛し、ともにいまを生きているからだと思った。
レトロ要素の“さびれ感”など入り込む余地がないほど、日々手が入れられているのだなぁ… と、そういうものを期待したであろう自分を恥じるのだった。

[DATA]
河内屋
神奈川県相模原市緑区与瀬385
[Today's recommendation]



https://youtu.be/POWsFzSFLCE