百貨店ワルツ
マツオヒロミ著
A5判 116ページ
2016年5月20日第十刷発行
価格 1,650円(税込)
実業之日本社
<空想百貨店へようこそ!>
いま最も注目を集める美麗絵師・マツオヒロミの商業初単行本。
オールカラーのコミック&イラスト集!
二十世紀初頭、ある地方都市にある虚構のデパート「三紅百貨店」が舞台。
壮麗な建物の屋上には巨大観覧車。華やかで近代的な店内装飾に囲まれた
各売場にはモダンとロマンチックが散りばめられています。
一階から六階、そして屋上…。各売場の様子、そこにいる人々や
商品を漫画とイラストでご紹介。
ひとつひとつにこだわりをもって描かれたディテールには思わず見とれる美しさ。
鮮やかな色づかいと繊細な筆致で描かれた東洋と西洋が混ざりあう
近代浪漫をお楽しみください。
■一階……服飾品部・雑貨部イラスト、漫画「売場迷宮」
■二階……美粧部・化粧品部イラスト、漫画「遠つ国の花の香は」
■三階……呉服部イラスト、漫画「秋をそぞろ歩けば」
■四階……婦人服部、漫画「初めての洋装」
■五階……紳士服部・文具部・喫茶室
■六階……大食堂、漫画「商いに就いて」
■屋上……屋上庭園
●各階にミニコラム付き
■宣伝部資料室……三紅百貨店のPR誌やポスターを展示
建物から商品のひとつひとつまで、まるで実在したかのように描かれた
「三紅百貨店」。1900年代初頭にタイムスリップしたかのような錯覚に陥りながら、
モダンでロマンチックなお買い物のひと時をお楽しみください!
https://www.j-n.co.jp/books/978-4-408-41433-1/
今から数年前、マツオヒロミの描いた絵を初めて見たとき、
なんて美しく可愛い絵なのだろうと私は驚いた。
それから数年が経ち、マツオヒロミの百貨店ワルツを買い、
実際に手にとって読んでみた。
漫画の体裁をとっているが、彼女は描きたい時代をよく研究し、
時代考証がなされている。
扉、目次、奥付などの細部にも時代色が出ていて、きっちりと丁寧に描いている。
また彼女が描くキャラクターも可愛く魅力的だ。
21世紀の今、彼女が描く戦前の華やかな世界は失われたが、
彼女はその世界を美しく描き出すことに成功している。
初めての洋装に憧れながらも戸惑う女学生の少女、メイクや舶来の香水への憧れ、
日本人が服装やメイクまでも西洋化しつつある頃の乙女の物語。
また彼女が描くモダンな着物の柄も美しい。
男では彼女の漫画に興味があるのは少ないとは思うが、このような世界観は
私はとても好む。
私がこのような(アールデコや1920年代を思わせる)戦前の世界に興味を持ったのは
1980年代初頭のまだ高校生の頃だが、あの頃にこんなイラスト&漫画が
もしあったならまた違った感想が持ったんじゃないかと思う。
あの頃は私の人生の中で少女漫画を読んでいた時期だが、その頃には
このような戦前を舞台にした少女漫画は大和和紀の「はいからさんが通る」くらいしか
なかったように思う。
なお発行元の実業之日本社は社名が古風な事からも判るように
創業が1897(明治30)年でマツオヒロミが描く世界とほぼ同時代である。
https://www.j-n.co.jp/company/
レトロ感溢れる架空のデパート描く、マツオヒロミ初単行本「百貨店ワルツ」
https://natalie.mu/comic/news/173308