羊雲 : 胡桃の椅子             
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羊雲
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夕方買い物に行く途中に
空を見上げたら
西の空一面に羊雲が出ていました。
あ・・・羊雲・・・。秋ねぇ・・・・・。

毎回、羊雲を見るたび 条件反射的に思い出すのは 高校2年の夏休みのある出来事
その当時も 毎度のことながら ギリギリになってやり残した宿題に負われる日々でした。
一番やっかいなのが読書感想文で その年の課題図書というのが
遠藤周作の「海と毒薬」。
ズシーン・・・と重苦しいテーマの小説をやっとの想いで読み上げ  勢いで書き上げた感想文。
夏の終を告げるツクツクボウシの声と西日の当たる原稿用紙のワンシーン
今でも深く私の心に残っていて それはきまって羊雲を見た瞬間によみがえってくる。
なぜ羊雲なのか・・・・・
この小説の主人公がつぶやく詩の一節にそれは出てきます。
その使い方が実に効果的で 私は文の書き出しにこの詩を引用したのでした。


羊の雲の過ぎるとき
蒸気の雲が飛ぶ毎に
空よ おまへの散らすのは
白いしイろい絮(わた)の列


どこをどう間違ったのでしょう・・・
この後、このやる気のない高校生の感想文は 意外にも全国読書感想文コンクールに出品されることになるのです。
別に狙ったわけでもなく 苦し紛れにかいた文章が賞をいただく・・なんてちょっと自分でも困ってしまったのだけど、なにかの賞なんて 小学校の校内写生大会以来のこと・・・・。
ちょっとくすぐったいような、鼻が高いような・・・それでいて後ろめたいような複雑な心境だったのを何となく憶えています。

大分後になって知ったことですが この羊雲の詩は 立原道造の「雲の祭日」といものだったとのこと
雲の表情が一つ一つ情景豊かに表現されていて 素敵な詩だなぁ・・・
と改めて感心してしまったのでした。

雲の祭日(立原道造)


羊の雲の過ぎるとき
蒸気の雲が飛ぶ毎に羊雲_e0041500_23223446.gif
空よ おまへの散らすのは
白いしイろい絮(わた)の列

帆の雲とオルガンの雲 椅子(いす)の雲
きえぎえに浮いてゐるのは刷毛(はけ)の雲
空の雲……雲の空よ 青空よ
ひねもすしイろい波の群

ささへもなしに 薔薇(ばら)紅色に
ふと蒼ざめて死ぬ雲よ 黄昏(たそがれ)よ
空の向うの国ばかり・・・・・

また或るときは蒸気の虹にてらされて
真白の鳩は暈(かさ)となる
雲ははるばる 日もすがら
by 4seasons-kurumi | 2005-08-12 23:20 | 子供の頃
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